人権(表現の自由)1

写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ、これに収録された作品のいくつかが刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するとして、検察官によって起訴された。裁判の場でAは、憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない――と主張した。(平成23年出題)

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【解答】NO

 

 

設問でAは、「検閲の禁止」つまり、事前抑制として本件を争おうとしています。しかし、実際は、すでに発売されたものに対し、刑法第175条の「わいせつ」な図画に該当するとして罰するとして起訴されたわけですから、事後制裁に該当します。

そこで、「検閲の禁止」として、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない――と主張するのは、何ら関係ないことを主張していることになるので、自分が無罪であることを確信するAの主張に適さない――と言えます。
したがって、解答はNOとなります。

 

ここで、憲法21条を確認しておきましょう。

憲法21条

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

なお、設問の場合に、憲法21条2項に関連づけて、「事後制裁の場合であっても、それが行き過ぎている等の場合には、検閲の禁止の問題が生じうる」とする余地がないとはいえません。

 

次に、事前抑制に関する判例を紹介します。
最高裁昭和61年6月11日の大法廷判決「北方ジャーナル事件」で、判旨の概要は次の通りです。

表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。

つまり、表現の自由における事前抑制は、事後制裁をするよりも厳しい制限が課される――とされています。

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第18回「表現の自由に対する制限」を参照してください。

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