第167回 財政とは

  今回は、経済分野の最重要テーマである財政について勉強しましょう。財政とは、国や地方自治体が行う経済活動のことです。まず、①財政の基本を学んだあと、②国家財政、③地方財政と続けます。

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Ⅰ.財政の基本

  国や地方自治体が行う経済活動である財政について、①財政の機能、②財政政策、③財政投融資――と見ていきます。

1.財政の機能 

  財政の主な機能は、①資源配分の調整、②所得再分配、③経済安定化機能――です。

  ①の資源配分の調整機能とは、道路、橋梁などや警察や消防のように、利潤を追求する民間の経済活動では提供することの難しい公共的な施設・サービス(社会資本)を、民間に代わって提供することです。

  ②の所得再分配機能とは、歳入面での累進課税や歳出面での社会保障給付によって、国民相互間の所得差によるひずみを是正し、所得分配の公正を図り、個人間の所得格差を調整することです。

  ③の経済安定化機能とは、経済安定のため、増減税を通じて財政規模を増減し、公共事業の追加や繰り延べによって有効需要を調節し、物価の安定、完全雇用の維持、国際収支の均衡――を図ることです。

  政府が行う財政上の関与の方法は、①補助金などの予算措置や税の優遇措置などによる方法と、②返済を前提とする有償資金の貸付けなど金融的手段を用いる方法があります。①の具体例は国費による道路建設、②の具体例は低金利融資による中小零細企業の創業支援――などです。

  財政収入は、主に2つ、①租税の徴収と②国債の発行――です。

  ①の租税は、a所得税や法人税などの直接税とb消費税や酒税などの間接税―――に分けられます。a直接税は実際の税負担者と納税者が同じ租税であり、b間接税は税負担者と納税者が異なる租税です。

  直接税のうち所得税は累進課税であるのが一般的で、所得の再分配機能があります。一方、間接税は生活必需品に課税されると、低所得者などの負担率の高くなる逆進性を有しています。現在、消費税の税率5%のうち国税分が4%ですが、このうち29.5%が地方交付税交付金として、地方へ配分されています。

  なお、戦後の日本の税制は、シャウプ税制勧告による所得税中心主義を採っていましたが、1989年に新たに課税対象を消費全体に広げる消費税が導入されました。もっとも、現在でも直接税が税収の7割程度を占めているので、直接税中心の構成であることには違いありません。

  ②の国債は、政府が租税等の収入以上の財政支出をする必要がある場合に、国民から借金をするために政府によって発行される債権です。

  国債は、償還期限により、a短期(1年以内)、b中期(2~5年程度)、c長期(10年程度)、d超長期(10年超)――の4種類に分けることができます。また、発行目的により、a建設国債、b特例国債、c借換債(かりかえさい)、d政府短期証券――に分けることもできます。c借換債とは、既存の国債を新条件の債務編成替えするために発行される国債です。また、d政府短期証券とは、国庫金の資金繰りのために発行される短期の公債のことです。

  また、個人投資家の国債保有を増やす目的で、2003年から募集が始まった個人のみ購入可能な個人向け国債も販売されています。

  aの建設国債は、公共事業費、出資金、貸付金に充てるためにのみ発行される国債です。実は、国債の発行は財政法で原則的に禁止されていますが、例外として一定の国債の発行が認められています。この一定の国債が建設国債です。また、日本銀行の引受けによる公債の発行も禁止されています。これを市中消化の原則と言います。ただし、特別の事由があって国会の議決を経た金額の範囲は例外です。なお、いったん市中で消化された国債を日本銀行が買入れることは禁止されていません。

  bの特例国債(赤字国債)とは、「財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律(財政特例法)」に基づき発行される国債です。公共事業費などに充てる目的以外で国債を発行することは禁止されているため、その年度限り通用する特例国債を発行して歳入を補います。特例国債は、1975年度以降、バブル期を除いてほぼ継続的に発行されています。ちなみに2011年の当初予算では、公債依存度47.9%、公債残高(年度末見込み)668兆円に及んでいます。

  しかし、財政赤字が続くと、財政破たん(借金が累積して返せなくなること)、クラウディング・アウト(市場金利が高くなり、民間の資金需要が押しのけられること)、将来世代への負担の転化――などの問題を背負うことになります。

  一方、国民所得に対する租税負担と社会保障負担の割合の合計を国民負担率と言いますが、現在、日本の国民負担率は先進諸国と比較して低水準(2011年度見込み38.8%)です。ただし、今後高齢化社会が進展するに従い、国民負担率は上昇すると考えられます。また、日本の国民負担率が低水準である理由は、財政赤字という形で負担を将来世代に先送りしているためと考えられます。なお、国民負担率に財政赤字の対国民所得比率を加えた潜在国民負担率は、2011年49.8%の見込みです。

  もう一つのキーワードにプライマリーバランス(基礎的財政収支)がありますが、プライマリーバランスとは、公債費を除く歳出と公債発行収入を除く歳入との財政収支の差のことです。プライマリーバランスが均衡している場合、公債費を除く経費を借入れに依存せずに調達していることになります。赤字の場合、将来の国民が負担を負うことになります。

したがってプライマリーバランスは、中長期的な財政赤字の累積を問題とする際に使われる概念です。

2.財政政策

  財政の役割のうちの一つ、経済の安定・成長の実現のための政策が財政政策です。ここでは、聞きなれない用語を覚えてください。

★ポリシーミックス:財政政策と金融政策を組み合わせ、経済の安定と成長など複数の目標を同時に実現しようとする政策(ポリシーミックスの中でも特に、ニューディール政策のように、不況時に景気の刺激策としてとられる政策をスペンディングポリシーという)

★フィスカルポリシー:財政支出と財政収入の量を調節することによって景気を調整する政策で、具体的には租税政策と公共投資があり、不況時には、減税をし公共投資を拡大します。好況時には増税し公共投資を縮小します。

★ビルトインスタビライザー:積極的に財政政策を採らなくても、財政制度はそれ自体が景気の変動を調整する機能を有していますが、この機能をビルトインスタビライザー(自動安定化機能)と言います。例えば、累進課税や社会保障給付がその代表例です。好況時には家計の賃金収入や企業の利潤が増え、所得税などの累進課税率により税収が増加、不況時には社会保障支出が増加し税収は減少されます。ただし、不況が長引くことによって本来の機能を果たさなくなることがあるとされます。

3.財政投融資

  財政投融資とは、一般に国の制度や信用に基づいて集められた有償資金を用いて、民間では困難な大規模で長期的な事業の実施や長期の資金提供を行う投融資活動のことです。日本では、2001年以前は、郵便貯金や年金などの資金を大蔵省(現・財務省)資金運用部が預かり、これを特殊法人に融資するシステムを採用し、融資を受けた特殊法人はこの資金で大型公共事業を行っていましたが、2001年の財政投融資制度改革で、預託制度が廃止されたことで、財政投融資機関(財投機関)は、原則、財投機関債を発行して金融市場から直接資金を調達することとなりました。

  しかし、財投機関は財投機関債で資金を調達できなかった場合は、政府(財政投融資特別会計)が財投債を発行して、金融市場から調達した資金の融資を受けることができます。

一般知識167-1

 

Ⅱ.国家財政

  国の予算その他財政の基本は財政法の定める規定に基づき運用されます。財政法に出てくる用語でまず覚えなければならない4つは、歳入、歳出、収入、支出――です。   歳入   とは一会計年度における一切の収入、歳出とは一会計年度における一切の支出、収入とは国の各般の需要を充たすための支払いの財源となるべき現金の収納、支出とは国の各般の需要を充たすための現金の支払い――と定義できます。

  予算とは、国の歳入と歳出の見積もりを一定の期間について明らかにする財政行為の準則のことです。予算は金額という数字で表現された、国等の政治ないし行政のプログラムと言えます。

この予算を国民の代表である国会等が審議・承認することで国の行政をコントロールすることが、民主政治の意義といえ、予算に対する国会の議決は会計年度ごとに行われています。ちなみに、2011年度国の一般会計当初予算の規模は、92兆4116億円で、前年度比+0.1%で、5年連続の増加です。

  また、我が国は、歳入歳出はすべて予算に編入しなければならない総計予算主義、予算は会計年度ごとに作成しなければならない単年度主義――を採用しています。ただし、単年度主義の例外として、①継続費、②国庫債務負担行為――があります。

①の継続費とは、工事・製造などの事業を数年度(原則5年以内)にわたって実行する場合に、その総額と年度ごとの額を一括して予算とするもので、近年では、防衛省の大型警備艦・潜水艦の建造のみに用いられました。

②の国庫債務負担行為とは、その年度に契約の締結だけを行い、翌年度以降原則5年以内に代金の支払いを行う場合に、その債務負担を予算とするものです。

  また、各会計年度における経費は、その年度の歳入をもって支弁しなければならないという会計年度独立の原則があり、例外は繰越明許費です。繰越明許費とは、継続費や国庫債務負担行為のように最初から複数年度にまたがると分かっているものではなく、その性質上や予算の成立後の事由によりその年度内に支出を終わらない見込みがあると予想されるものについて、翌年度に繰越して使用するために予算とするもののことです。

  次に、会計の区分をお話しします。本来、財政操作を排除する理由から、歳出と歳入はすべて単一の予算の統一して計上するという予算統一性の原則がありますが、財政の範囲が拡大し、複雑化すると会計を分ける必要が出てきます。そこで、我が国では、①一般会計予算、②特別会計予算、③政府関係機関予算――の3つに分けています。

  ①一般会計予算とは、税を財源とする国の一般歳入歳出を経理する会計です。

  ②の特別会計予算とは、一般会計と区別して別個に経理する会計で、a特定の事業を実施する場合、b特定の資金を余裕して運用する場合、c一般の歳入歳出と区別して処理する必要のある場合――に限り、法律をもって設置することが認められています。

  ③の政府関係機関予算とは、特別の法律によって設立され、資本金が全額政府出資の機関である政府関係機関の予算のことで、やはり国会の議決が必要です。

  以上のような予算の内訳は、①予算総則、②歳入歳出予算、③継続費、④繰越明許費、⑤国庫債務負担行為――で、会計年度ごとに作成されます。

  本予算では、一般会計、特別会計、政府関係機関予算が一括して国会による審議・議決を受けますが、例外的な場合は本予算とは別に、①暫定予算、②補正予算――が作成されます。①の暫定予算とは、予算が会計年度開始前に成立しなかった場合に、必要な経費の支出のために作成される予算のことです。暫定予算は、本予算成立までの必要最小限に経費に限定され、本予算の成立で失効し、本予算に吸収されます。

  ②の補正予算とは、予算作成後に生じた自然災害、経済情勢の変化などにより、想定外の事態に対応するために作成される予算のことです。予算以上の支出は許されないのが原則なので、本予算を超える支出が必要となった場合、補正予算を組まなければなりません。もっとも、想定外の事態への対応のため、本予算には予備費の計上が認められています。それでも対応できない場合に補正予算が組まれます。

  予算を作成して国会に提出する権限は内閣に属し、予算編成は財務省が行います。予算の作成は、各省庁が来年度予算において必要とする歳出額を見積もる概算要求から始まります。例年8月末までに各省庁の次年度の概算要求が財務省に提出されます。なお、各省庁による安易な予算要求を避けるため、事前に概算要求基準が設けられ、上限にシーリング(天井)が設定されます。

これをもとに財務省が各省庁に予算財務原案を内示しますが、財務省が各省庁の要求で削減した部分について、各省庁は財務省に対して予算の復活折衝を行います。

  予算編成の手法には、①事業別予算制度、②計画事業予算制度(PRBS)、③ゼロベース予算方式(ZBB)、④シーリング(概算要求基準)方式、⑤サンセット(時限)方式――などがあります。

  ①の事業別予算制度とは、行政目的を効果的に達成するために、行政の事業目的体系に従い予算編成を管理する方法です。

  ②の計画事業予算制度とは、省庁ごとに政策目標を明確に把握し、長期計画を作成し限られた資源をもっとも効果的に配分するために、複数の代替案に対して費用・使益分析を行い、計画されている政策成果の能率性を測定して比較したうえで、単年度の予算を編成する方法です。

  ③のゼロベース予算方式とは、一施策もしくは一行政機関に対するすべての支出を、前年度の予算を前提とせず、毎年その正当性を承認されなければならないとする予算編成方法です。

  ④のシーリング方式とは、前出しましたが、各省庁に概算要求段階において、前年度に認められた概算要求額を基準として、そこから一定率増やした額の上限を設けて歳出の伸びを抑制する方法です。

  ⑤のサンセット方式とは、適用事業に対しては定められた期日以降の年度は予算措置が停止される手法です。

  次に、特別予算について少しお話しします。我が国の厳しい財政状況を背景に、特別会計の廃止・統合、一般会計と異なる扱いの整理、特別会計の財務情報の開示などを実現する目的で、特別会計改革が行われ、2007年、特別会計に関する法律(特別会計法)が制定されました。特別会計は、2011年までには従来の31会計から17会計に減っています。

 

Ⅲ.地方財政

  地方財政について規定している法律は、①地方自治法と②地方財政法――です。①地方自治法は財務関係規定が地方財政制度の基本であることを定め、②地方財政法はa地方債の制限を含む財務処理上の基本準則、b国と地方公共団体との経費負担の関係、③都道府県と市町村との財政関係――などについて規定しています。我が国の租税は、総額の6割が国税として4割が地方税として徴収されています。逆に使用率は国が4割、地方公共団体が6割です。その差はどうしているのかというと、国が地方公共団体に対して、国税収入の一部を、地方交付税、地方譲与税、国庫支出金――などの調整制度を通じて配分しています。

  地方財政の財源の分類の一つに、使途目的で分ける①一般財源と②特定財源――があります。①の一般財源とは、いかなる経費にも使用できる地方公共団体の収入であり、地方税、地方特例交付金、地方交付税――などが該当します。一方、②の特定財源とは、一定の使途のみに使用できる地方公共団体の収入で、国庫支出金や地方債――などが該当します。

  もう一つの分類に、調達方法による③自主財源と④依存財源――があります。③の自主財源とは、自治体がみずから調達する収入のことで、地方税などが該当します。また、④の依存財源とは、国(または都道府県)の意思に依存する財源で、国庫支出金、地方譲与税、地方交付税、地方債――などが該当します。

  政府が、地方交付税により自治体財源を保障しようという場合に、その程度の総額を確保すべきかの最終的な意思決定を地方財源計画といいます。この計画は、毎年度、内閣が地方交付税法に基づき、翌年度に地方公共団体の歳入と歳出の総額の見積額を記載した書類を作成し、国会に提出するとともに一般にも公表することが義務付けられています。ちなみに、2011年の地方財政の規模は、82兆5054億円で、歳入において最も多くの割合を占めるのは地方税でした。

  地方財政計画には、①地方交付税制度との関係で地方財源の保障を行う、②地方財政と国家財政・国民経済などを調整する、③個々の地方公共団体の行政運営の指針となる――という3つの役割があります。

  では、いったい地方交付税とはどのようなものなのでしょうか? 地方交付税は、国が行う地方財政調整制度であり、地方税収入の不均衡による地方公共団体間の財政力格差を調整するものです。普通交付税と特別交付税があり、普通交付税は、必要な需要額が収入額を超過した場合に、その差額に応じて交付され、特別交付税は、災害や予測できない事件に対応して交付されるものです。東京都のように財政が豊かな都道府県は地方交付税の交付を受けていません。

  また、地方交付税の使途は、地方公共団体の自主的な判断に委ねられていて、国がその使途を制限したり、条件を付けることは禁じられています。憲法で保障された地方自治の理念を実現していくために、地方税と並んで重要な財源です。

  地方交付税の機能は2つ、①財政調整機能、②財源保障機能――です。①の地方交付税の持つ財政調整機能により、普通交付税は基準財政需要額が基準財政収入額を超える自治体に対して、財源不足分が交付されます。

  ②の財源保障機能とは、財源に、5つの国税の一定額(法人税34%、所得税・酒税32%、消費税29.5%、たばこ税25%)が与えられるということです。

  次に地方譲与税と国庫支出金とはどういう財源でしょう? 地方譲与税は、国が徴収し、客観的基準により地方公共団体に対して譲渡する税です。これには地方道路譲与税や自動車重量税――などがあります。地方譲与税は、2011年度の地方財政計画では2兆1749億円で、歳入の約2.6%程度です。

  一方、国庫支出金とは、国が特定の使途のために地方公共団体に交付する支出金の総称で、①国庫負担金、②国庫委託金、③国庫補助金――があります。①の国庫負担金とは、地方公共団体が行う事務のうち国が共同責任を持つ事務に対して経費の一定割合を負担するものです。②の国庫委託金とは、本来国が行うべき事務を地方公共団体に処理させる際の経費として給付するものです。また、③の国庫補助金とは、特定の施策の奨励または財政援助のために給付するものです。国庫支出金は、2011年度の地方財政計画では、12兆1745億円で、歳入の14.8%となっています。

  国家財政に国債があったように、地方財政にも地方債があります。地方債は、一般に地方公共団体が資金調達のために負担する債務のことです。2006年より原則として総務大臣あるいは都道府県知事の許可を必要とする起債許可制度が廃止され、総務大臣あるいは都道府県知事の同意を要する事前協議制となり、発行条件の緩和が図られました。ただし、実質公債費発行比率が18%を超える地方公共団体については、地方債協議制度移行後も起債に当たっては総務大臣または都道府県知事の許可が必要です。

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