第166回 国内経済

  今回は、1900年代後半から現在までの①日本経済の動向について、時系列でまとめた後、②金融、③日本銀行の役割――と勉強しましょう。

行政書士講座

Ⅰ.日本経済の動向

★1985年~1986年【プラザ合意と円高不況】

  1985年、日本の欧米に対する貿易黒字を要因とする貿易摩擦を解決するために、先進5カ国(アメリカ・日本・イギリス・フランス・ドイツ)の蔵相・中央銀行総裁会議(G5)が開催され、ドル安・円高に誘導することが決定されました。これを プラザ合意 と言います。

  これにより、日本の輸出は打撃を受け、円高不況と呼ばれる一時的な不況に陥りました。

★1986年12月~1991年2月【平成景気】

  上記の円高不況の対策として内需転換を図るため、超低金利政策が採られる一方、円高の進行で輸入関連企業には金余り現象が生じたことにより、資産インフレが発生し、利益(キャピタルゲイン)を得た人々は、消費を拡大させました。

また、日本企業は強い円を背景に海外直接投資を増加させ、外国企業のM&A(買収・合併)を行った結果、国内産業の空洞化という新たな問題も発生しました。

 

★1990年代【バブルの後遺症】

  1989年から金融引き締めが行われ、過剰投資の反動として株価・地価が暴落し、バブル経済が崩壊しました。これにより消費経済は低迷、不良債権を抱えた金融機関の貸し渋りが、いっそう消費・投資を減退させるという悪循環が生じました。さらに、1ドル=100円台~90円台という円高も加わり、長期の不況に陥りました。

  第一次平成不況の後、一度は景気回復の兆しが見えたものの、円高の進行(1995年には1ドル=79円75銭)により輸出は減退しました。さらに、住宅金融専門会社は、バブル期に貸し付けた資金の回収が困難となり破たん、1996年に、公的資金が投入されるに至りました。その後も銀行や証券会社の破たんが相次ぎました。

  また、巨額の不良債権を抱えた銀行による貸し渋りや貸し剥がしのため、企業は資金繰りに苦しみ、倒産や失業が増加しました。1997年の橋本内閣は、消費税率の引き上げ、健康保険の自己負担率の引き上げなどを行った結果、消費者の消費の減退を加速させることになりました。

★2000年代【現在の経済情勢】

  2002年以降、景気回復局面に入り、景気の回復は戦後最長を記録しました。しかし、原油価格の高騰などの交易条件の悪化、2007年夏以降のアメリカのサブプライム住宅ローン問題をきっかけに、我が国でも金融市場の混乱、翌年秋のリーマンショックに端を発する金融危機――などによる世界経済減退などのため、再び景気後退局面に入っています。

 

Ⅱ.金融

  金融とは、多数の経済主体からなる経済社会においてお金が滞ることなく流通している現象と定義されますが、その方法には、①直接金融と②間接金融――があります。

  ①の直接金融とは、資金需要者(借り手)が資金供給者(貸し手)から直接に資金の供給を受ける方法のことで、②の間接金融とは、資金供給者と資金需要者の間に金融機関が入り資金の流れを媒介する方法のことです。具体的には、直 接金融は、企業が株式や社債などの有価証券を発行して必要な資金を他の企業や家計から調達するような場合です。一方、間接金融の例は、企業が必要な資金を金融機関からの借入れで調達するような場合です。

一般知識166-1

  金融が分かったところで、ぜひ覚えてほしい金融用語に、①短期金融市場、②バーゼル合意(BIS規制)、③ペイオフ解禁――の3つがあります。

  ①の短期金融市場とは、1年以内の短期間、資金を調達・運用する取引が行われる市場の総称で、aインターバンク市場、bオープンバンク市場――に分けることができます。

aのインターバンク市場とは、取引に参加することができるものは金融機関に限られ、金融機関が相互に日々の短期的な資金の過不足を調整するために取引しています。

一方、bのオープン市場とは、金融機関以外にも広く一般の企業などが取引に参加できる市場です。

  ②のバーゼル合意(BIS規制)とは、1988年にバーゼル銀行監督委員会が発表した銀行の自己資本比率の測定方法や達成すべき最低水準(8%)に関する国際統一基準です。バーゼル銀行監督委員会とは、G10(ベルギー、カナダ、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、スウェーデン、イギリス、アメリカ、フランス)の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会のことです。通常、常設の事務局が設けられるスイスのバーゼルにあるBIS(国際決済銀行)で開催されます。

この基準は、1988年に発表され、随時、見直しが行われ、2006年度決算からはバーゼルⅡの適用が開始されています。

  ③のペイオフとは、金融機関が破たんし、預金などの払戻しを停止するなどの保険事故が生じたとき、預金保険機構が預金者に対して行う保険金の支払いのことです。ペイオフが実施されると、原則として、預金者一人当たり預金元本1000万円とその利息の上限が保険金の支払額となります。我が国で初めてペイオフが行われたのは、2010年9月、日本振興銀行の経営破たんの際でした。

 

Ⅲ.日本銀行の役割

  日本銀行の目的は、我が国の中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨および金融の調節を行うことのほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑化の確保を図って、信用秩序の維持に資することです。日本銀行が通貨・金融の調整を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念とし、政府の経済政策の基本指針と整合するために政府と連絡を密にして、十分な意思疎通を図っています。

  また、日本銀行は、透明性を確保するために、日本銀行政策委員会が議決した事項の内容と、それに基づいて行った業務の状況を記載した報告書を作成し、財務大臣を経由して国会に提出しています。さらに、日本銀行総裁・政策委員会議長は、日本銀行の業務と財産の状況を各議院またはその委員会から説明のための出席を求められたときは、出席しなければなりません。

  日本銀行政策委員会とは、日本銀行に設置され、総裁、副総裁2人、審議委員6人の9人で構成される最高意思決定機関です。原則として月2回の決まって開かれる金融政策決定会合で、金融市場調節方針や預金準備率の決定等を行います。政府代表委員は出席できますが、権限は、政策委員会の議決の延期を請求することにとどまります。つまり、日本銀行と政府の意見が対立しても、最終的には日本銀行政策委員会が決定するということです。

  続いて、①日本銀行の採る金融政策と②日本銀行の業務――をまとめます。

1.日本銀行の採る金融政策

  まず、金融政策とは、一般に各国の中央銀行が行う経済安定化のための政策のことで、主な手段は、①金利政策、②預金準備金操作、③公開市場操作――です。

  ①の金利政策とは、日本銀行が金融機関に対して直接資金を貸し出す時の金利である基準割引率および基準貸付利率を調整し、市中銀行の貸出金利などに影響を与えて経済を調整する政策のことです。基準割引率および基準貸付利率は、かつての公定歩合に代えて使う用語です。

  ②について説明します。金融機関に対し、その受入れている預金等の一定比率(準備率)以上の金額を日本銀行に預けることを準備預金制度と言います。日本銀行がこの準備率を上下することで金融機関の貸出資金量を調節するのが預金準備率操作(支払準備率操作)です。ただし、近年、ほとんどの国で行われなくなってきています。

  ③の公開市場操作(オープンマーケットオペレーション)とは、民間金融機関を相手に市場で債券や手形の売買を行い、資金量を調節することです。日本銀行の金融政策決定会合で決定された方針を実現するために、短期金融市場での資金の総量を調節することを金融市場調節と言いますが、公開市場操作は、この金融市場調節の手段です。

  このほか、日本銀行が行う政策に④ロンバート型貸出制度(補完貸付制度)、⑤量的緩和政策――があります。

  ④のロンバート型貸出制度とは、日本銀行があらかじめ定めた条件に基づいて、貸付先からの借入申込を受けて受動的に実行する貸付制度のことです。あらかじめ明確に定められた条件を満たす限り、金融機関が希望するときに担保の範囲内で希望する金額を日本銀行から借入れることができます。

  ⑤の日本銀行は、従来、「無担保コールレート(オーバーナイト物)が●%で推移するよう促す」というような具体的な金融誘導水準を示す金利ターゲット方式を採っていましたが、2001年3月、金融市場調節の主たる目標を「資金量(日本銀行当座預金残高)」に変更しました。これを量的緩和政策と呼び、「日本銀行当座預金残高が▲兆円となるよう金融市場調節を行う」という形で方針を示すことになります。

しかし、2006年3月、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が4カ月連続で0%以上となっていることなどから、量的緩和政策は解除され、金融市場調節の操作目標は、日本銀行当座預金残高から無担保コールレートに戻されています。

2.日本銀行の業務

  日本銀行の役割を表す言葉として、①発券銀行、②政府の銀行、③銀行の銀行――があります。①の発券銀行とは、日本銀行が銀行券を発行する唯一の銀行ということです。②の政府の銀行とは、日本銀行は、a日本政府に対する無担保貸付け、b政府が徴収する租税等の国庫金の出納・管理・国債償還事務の代行――を行うということです。③の銀行の銀行とは、市中銀行などの金融機関とだけ、信金の貸出しや支払い準備金等の預金の受入れ、手形割引、手形貸付――などの取引を行うということです。

  日本銀行の通常業務は、主として①商業手形その他の手形の割引、②手形、国債その他の有価証券を担保とする貸付け、③商業手形その他の手形または国債その他の債権の売買等――です。このほか、④国に対する貸付け、⑤国庫金の取扱い、⑥国の事務の取扱い、⑦金融機関等に対する一時貸付け、⑧信用秩序の維持に資するための業務、⑨資金決済の円滑化に資するための業務、⑩外国為替の売買、⑪国際金融業務――などがあります。

  また、取引の相手方である金融機関等の経営実態を把握するために行う活動の一つに考査があり、取引先金融機関等に実際に立ち入って資産内容等を調査し、これをもとに業務改善等の経営上の要請を行います。考査と類似した活動にオフサイト・モニタリングがありますが、立入調査を行わない点で考査と区別します。

  一方、日本銀行またはその役員などの行為が日本銀行法に違反するか違反するおそれがある場合には、財務大臣または内閣総理大臣は、日本銀行に対して是正のために必要な措置を講ずることを求めることができます。また、日本銀行の監事に対して、必要な事項を監査し、その結果を報告することを求めることもできます。それに対して監事は、速やかに監査をし、結果を財務大臣または内閣総理大臣に報告するとともに、日本銀行政策委員会にも報告しなければなりません。

  また、通貨当局が外国為替市場において、外国為替相場に影響を与えることを目的として外国為替の売買を行うことを為替介入と言いますが、日本では、円相場の安定のために、外国為替及び外国貿易法と根拠に、財務大臣の権限において実施されます。日本銀行は、財務大臣の代理として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を行います。

  このほか、国内景気の実態を把握するために、日本銀行が行う調査に、短観(全国企業短期経済観測調査)があります。3カ月に一度、企業がその時々の自社の業況の良しあしのほか、売上高や収益といった事業計画の実績・予測について日本銀行が調査するもので、企業経営者の心意気や方針、景気の動向が分かるものとして高い信頼性があります。

 

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