第165回 資本主義経済と国際経済

  今回から経済全般について勉強します。行政書士試験での頻出は金融・財政ですが、資本主義経済の全体像が、経済分野では基本となるので、まず、そこから勉強しましょう。

  今回のメニューは、①資本主義経済の成立、②現代の市場、③国際経済――です。

行政書士講座

Ⅰ.資本主義経済の成立

  18世紀後半から19世紀中ごろにかけての自由主義(産業資本主義)の時代は、国家による保護・干渉を排除して、経済活動の自由をもっとも重視した時代です。

イギリスのアダム・スミスは、著書『富国論(諸国民の富)』を著し、自由放任主義(レッセ・フェール)を採用すれば、個人の利益追求は神の見えざる手に導かれて予定調和状態が実現するという市場機構の働きを述べました。

  しかし、産業革命後の自由放任主義政策により、企業間競争において生産過剰による不況が起こり、弱小企業が淘汰される一方、大企業は市場を支配して自由競争を制限し、資本の集積と集中によって独占・寡占状態となり、独占資本が形成されるようになります。市場の独占・寡占化は、労働者と資本家との間の貧富の差を拡大させ、19世紀後半から20世紀初頭には階級対立が激化しました。

また、国内市場を支配した独占資本と銀行資本が結合した金融資本を持つ欧米諸国は、海外に新たな市場を求めて植民地再分割に乗り出し、膨張主義的な帝国主義政策を進めていくことになります。

そんな中、1929年秋に起こった世界恐慌とそれに続く1930年代前半の不況によって、世界中の失業者は約4000万人を超えたと言われています。

  以上のような資本主義の矛盾を克服すべく政府が積極的に経済に介入を行い始めたのが、修正資本主義です。この代表的な政策が、アメリカ合衆国のフランクリン・ルーズベルトによるニューディール政策です。また、植民地を抱えるイギリス・フランスは、ブロック経済政策を採用する一方、植民地を持たないドイツ・イタリア・日本は、ファシズムへと傾斜していきました。ブロック経済政策とは、閉鎖的・地域的な経済圏を形成する経済政策のことです。

  介入政策の共通した方法は、政府が財政政策によって、購買力の裏付けのある有効需要を管理し、経済の安定と成長を導こうとするもので、この政策を理論化したのがイギリスのケインズです。

  第二次世界大戦後は、混合経済のもとでの景気調整政策、社会保障政策、労働政策、独占禁止政策、弱小産業保護政策――などが行われ、政府は小さな政府から、多様な行政サービスを提供する大きな政府へと変貌していきます。

  しかし、第一次石油ショックが起こり、1973年、先進資本主義諸国の経済を活性化し、各国間の経済摩擦を抑えるために、アメリカ、イギリス等を中心として新自由主義(新保守主義)の経済路線が推進されることとなり、国際的な市場の開放と拡大が図られました。新自由主義を進めた代表的な政治家は、イギリスのサッチャー、アメリカのレーガン、日本の中曽根康弘――などです。具体的には、公営企業の民営化や経済規制の緩和などの政策がとられました。

 

Ⅱ.現代の市場

1.価格の自動調整機能

  物の価格には、需要と供給を一致させる働きがあり、これを価格の自動調整機能と言います。市場で競争が行われていると需用と供給のバランスが崩れても、価格が変化して市場内で自動的に、需要・供給の法則に従って需要と供給は一致する方向へ働きます。

  この需要・供給の原則とは、商品の需要量・供給量とその価格との関係の法則のことで、市場で自由に競争が行われている場合、供給量が一定のときに需要量が増加(現象)すると価格は上昇(下落)し、需要量が一定のときに供給量が増加(減少)すると価格が下落(上昇)します。

  

2.不完全競争市場

  生産活動で獲得した利潤を蓄積し、生産設備の拡大に振り向け、企業規模を拡大していった資本の集積と、他の企業を吸収合併して企業規模を拡大した資本の集中などで巨大な企業が出現し、市場の自由競争が排除され、独占市場や寡占市場などの不完全競争市場が形成されることがあります。

  不完全競争市場の影響は、①管理価格の形成、②価格の下方硬直性、③非価格競争――の3点です。

  ①の管理価格の形成とは、寡占市場で最も有力な大企業がプライス・リーダー(価格先導者)となって有利な価格を設定し、他の企業がこれに追随して管理価格が形成されることです。

  ②の価格の下方硬直性とは、管理価格が設定されると、価格が需要と供給の関係によって決まらなくなり、その結果、コストダウンが生じても価格が下がりにくくなることです。

  ③の非価格競争とは、寡占市場のもとで行われる商品の品質やブランド、アフターサービスなど、価格以外による競争のことです。

3.インフレとデフレ

  次に、インフレーション(インフレ)とは、物価が相当期間にわたって継続して上昇し、通貨の価値が低下する現象のことです。インフレは原因により、①ディマンド・プル・インフレ(需要インフレ)、②コスト・プッシュ・インフレ(費用インフレ)、③マネー・サプライ・インフレ――に分類することができます。

  一方、デフレーション(デフレ)とは、物価が持続的に下落する現象のことで、デフレの状況下では、供給過剰から物やサービスが売れず、商品の価格を下げざるを得なくなり、企業の売上げや利益が減少し景気は低迷します。その結果、所得の減少や失業などで、消費マインドが減退するため、ますます景気が落ち込むというデフレ・スパイラルという悪循環が起こります。

 

Ⅲ.国際経済

  国際経済については、①外国為替相場、②IMF=GATT体制、③WTOとFTA、④EU(欧州連合)――の順に解説します。

1.外国為替相場

  外国為替相場(為替レート)とは、自国通貨と他国通貨との交換比率のことで、a為替相場を一定の値に固定する固定相場制と、b外国為替手形や外国通貨に対する需要と供給によって決定する変動相場制があります。主要先進国は、1973年以降、変動相場制が採用されています。変動相場のもとでは、通常の財市場の需要関係によって日々刻々とレートが変動します。

  変動相場制では、例えば1ドル=120円から、1ドル=100円に変動することを円高・ドル安と呼び、その逆に1ドル=120円から、1ドル=150円に変動することを円安・ドル高と呼びます。

2.IMF=GATT体制

  第二次世界大戦後の資本主義世界の経済再建を図るために、アメリカ合衆国が主導で成立した国際経済体制をIMF=GATT体制と言います。

  その経緯をお話ししますと、1944年、ブレトン・ウッズ協定により、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)の設立の合意がなされました。IMF設立の目的は、為替レートの安定、為替取引の自由化、国際収支赤字国への短期的な融資を通じた、自由な貿易や資本移動の促進です。ブレトン・ウッズ体制のもとでは、ドルは常に金と交換可能とされ、各国通貨はドルとの交換比率を定めた固定為替相場制が採られました。ちなみに1ドルは360円でした。

  その後1971年、ニクソンショックと呼ばれるアメリカ経済の破たんから金とドルの交換が停止され、スミソニアン協定によりドルが切り下げられました。1ドルが308円となったのです。

  続いて1973年から、各国が変動相場制へと移行していき、1976年のキングストン合意により、完全に変動相場制となります。

  一方、第二次世界大戦の原因の一つに1929年の世界恐慌以後のブロック経済があります。その反省から貿易に対する制限の撤廃と貿易促進を目的として、1947年に関税および貿易に関する一般協定(GATT)が締結され、翌年に発行しました。GATTは、発足以来多国間の貿易交渉を主導し、a加盟国が相互に同等条件で貿易取引を行うという無差別原則の確保、b輸入制限の撤廃、c関税の引き下げ――などの貿易自由化を目指し、自由・無差別・互恵・多角――を原則とし、貿易に関するルールの形成、貿易紛争処理、貿易自由化の促進――の機能を有しています。

3.WTOとFTA

  WTO(世界貿易機関)は、ウルグアイ・ラウンドにおける合意に基づいてGATTを発展的に解消して、1995年に発足した世界貿易に関する国際機関で、本部はスイスのジュネーブにあります。WTOの役割は、①貿易協定の運用、②貿易交渉の場の提供、③貿易紛争の処理、④各国の貿易政策の監視――などです。

このWTOの設立により、モノ、サービス、知的所有権などを巡る紛争はすべて統一的な処理手続きによって行われることになりました。なお、WTO協定の対象となる分野の紛争は、WTOの解決手続きに従わなくてはならないとする決まりがあります。

  WTOの紛争処理は、二国間協議とパネル提訴の2段階に分けられ、二国間で協議して解決が得られない場合にはパネル提訴となります。ここでいうパネルとは紛争処理の際に設置される小委員会のことで、パネルに提訴した国は相手国の協定違反などを法的に証明して、中立的なパネリストである法律家の判断を求め、この判断に相手国が従わない場合、提訴した国は対抗措置を発動することができます。

  一方、FTA(自由貿易協定)とは、締結国同士が相互に関税を撤廃したり、通関手続きを簡略化したりして、貿易や投資の拡大を図る貿易協定のことです。日本は、FTAには消極的でしたが、WTOの協議には時間がかかったり、世界的にもFTAが急増しつつあるという流れに従う形で、2002年1月に初めてシンガポールとの間でFTA の締結しました。

  なお、近年では、FTAに代わり、経済全般の連携強化を目指すEPA(経済連携協定)が主流になっています。

4.TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)

  TPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国により締結され2006年発効した協定で、参加国は増えてきています。TPPは、加盟国間で、サービス、人の移動、基準認証などの経済制度の整合性を図り、全品目の関税を撤廃することを目的としています。

5.EU(欧州連合)

  1967年にEEC(欧州経済共同体)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EURATOM(欧州共同体)――の3つの組織を統合して、EC(欧州共同体)ができました。

 1992年には、マーストリヒト条約が調印され、1993年にEUへと発展しました。1197年に締結されたアムステルダム条約に基づき、共通の外交・安全保障政策に取り組む道筋を定めるとともに、1998年、欧州中央銀行が設立されました。

  その後1999年から欧州共通通貨・ユーロが決済用通貨として導入され、2009年12月に、欧州理事会常任議長(大統領職)や欧州連合・外務安全保障上級代表(外相職)の設置などEUの機構改革をするためのリスボン条約が発効しました。

  2011年にクロアチアのEUへの加盟が承認され、2013年に28番目の加盟国となる予定です。また、2014年にはルーマニアがユーロを導入する予定です。

  EUの歩みを一覧にしますので、確認してください。

一般知識165-1

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