第163回 日本の政治制度

  今回は、日本の中央政治と地方政治――について勉強しましょう。今まで憲法や行政法で触れた内容と重なる点もありますが、復習にもなりますし、全体像をつかむ上では大切な内容です。

  本日のメニューは、①選挙制度と政党関連法、②行政国家化現象と行政改革、③地方分権――です。

行政書士講座

Ⅰ.選挙制度と政党関連法

  選挙制度を学ぶに当たって、まず、①大選挙区制、②小選挙区制――についてお話しします。①の大選挙区制とは、大きく分けた1つの選挙区から2人以上の代表者を選出する制度、②の小選挙区制とは、小さく分けた一つの選挙区から1人の代表者を選出する制度と覚えましょう。

そして、それぞれの制度には下表のようなメリット・デメリットがあります。

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※ゲリマンダー:特定の政党や候補者に有利になるように、恣意的に選挙区を設定すること

  大選挙区制や小選挙区制という選挙制度は、選挙人が立候補した人物に対して投票したのに対し、政党に投票する③比例代表制という選挙制度もあります。

  ③の比例代表制とは、各政党の得票数に応じて議席を配分する選挙方法です。死票が少なくなり、少数意見が尊重されて有権者の意思が忠実に反映されるというメリットがある一方、小党分立を招き政局が不安定になりやすいというデメリットがあります。

  ここからは、日本の選挙制度の勉強です。日本の選挙制度は1950年制定の公職選挙法を核に運営されています。公職選挙法には、選挙が公正に適正に行われることを目的として、選挙制度、定数配分、選挙運営、選挙運動の規制――などが規定されています。幾たびもの改正が重ねられて今日に至っていますが、下表に改正の主な点をまとめました。

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  以上のような選挙制度の改正が行われた結果、我が国の現在の選挙制度はどうなっているのかというと、

まず、衆議院議員総選挙は、小選挙区比例代表並立制が採用されています。定数480のうち300議席は小選挙区制、残り180議席は全国11のブロックに分けて政党の得票率に応じて議席配分を行う比例代表制で決定されます。衆議院議員選挙の比例代表制は、政党名でしか投票できない拘束名簿式によります。

  なお、戦後の日本の衆議院の選挙制度は、1994年の改正まで、一度の例外を除いて、中選挙区制と呼ばれる正式名称は大選挙区単記投票制度が採用されていました。

  次に参議院議員通常選挙では、選挙区と比例区が併存します。定数242の内訳は、選挙区選出議員が146議席、比例代表選出議員が96議席です。選挙区は1名の議員が選出される場合と、2名以上の議員が選出される場合があることから、単に選挙区と名付けられています。また、比例区は全国を一区とする形式で、非拘束名簿式で実施されます。

  衆議院議員選挙で作用されている拘束名簿式とは、選挙人が政党名を書いて投票し、各政党から得票数に応じて議席が各政党に配分され、各政党の候補者名簿の上位から当選者が決定される方式です。

一方、参議院議員選挙で採用されている非拘束名簿式とは、各政党の候補者名簿に順位を付けず、個人名でも政党名でも投票できる方式です。政党名の得票とその政党の候補者の個人名の得票の合計が政党の総得票数となり、個人名による得票数の多い順に当選者が決定されます。

  次に政党等を規制する政党関連法についてお話しします。

まず、政治資金規正法です。政治資金規正法は、政治団体の届出、政治資金の収支の公開、政治資金の授受の規正などの措置により、政治活動の公明と公正を確保し民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする法律です。

1948年制定されてからの改正点は下表にまとめますが、2007年の一部改正で、①政治資金収支報告書を提出する際に登録政治資金監査人による監査が義務付けられたこと、②国会議員関係政治団体に、2009年1月1日から1円以上のすべての支出について領収書の保存が義務付けられたこと――の2点がここでのポイントです。

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   ※1資金管理団体:候補者自らが代表者を務める政治団体の内から、1つの政治団体をその者のために政治資金の拠出を受けるべき政治団体として指定したものを言います。

   ※2政治資金団体:政党のために資金を援助することを目的とし、政党が指定したものを言います。

  これに関連して政党助成法についてお話しすると、政党助成法は、国が政党に対し活動費用の一部を政党交付金として交付するための法律です。政党交付金は、所属議員数、得票数に応じて各政党へ分配されます。

政党交付金を受けるための要件は、①所属の国会議員を5人以上有すること、②直近の国政選挙で2%以上の得票率を獲得したこと――のいずれかをクリアすることです。

  ところで、19世紀末以降の自由主義経済の発達に伴って、恐慌や失業問題が表面化し、社会内の不平等が進んできました。そこで国家は、不平等を是正するために国民生活に積極的に介入することになりました。その結果が、行政活動の量的増大や質的変化をもたらし、行政機能の役割が増大し、行政機関が実質的に意思決定を行うという、議会による政治のコントロールが低下する行政国家現象が生じました。

  行政国家現象の特徴は3つです。

①政府提案立法の増大

②委任立法の増大

③政治の官僚政治化

  ①の政府提案立法とは、政府が法律案を作成して国会で制定させることで、官僚は法案の技術的な作成者として国会に対して強い影響力を持ち、事実上は、法案作成の推進力となっています。

  ②の委任立法とは、法律の委任に基づいて行政府等が法規を定めることで、行政機関が増大し、国会の制定する法律は行政の大綱を定めるだけで具体的な事柄は委任立法として行政府に任せる傾向が強まっています。

  ③の官僚政治化は、行政権の拡大により行政官僚の地位を高め、官僚が政治の実権を事実上握る官僚政治を生み、政治腐敗・天下り等の弊害をもたらす原因ともなっています。

  そんな中、1980年代以降、世界の主要国に行政改革の流れが訪れました。行政改革の背景には、国家の財政難による行政サービスの低下を打開するために、新自由主義(新保守主義)の立場から、政府の経済活動の効率化と民間の経済活動の発展を中心とした改革が求められるようになったことがあります。

新自由主義とは、市場メカニズムを重視し、行政サービスの供給にも、市場メカニズムをできる限り導入すべきで、小さな政府が望ましいという考えです。また、経済活動に対する規制はできるだけ緩和・撤廃し、国営事業などの民営化や、さらに行政活動における企業経営手法の採用を採りいれています。

  我が国における行政改革の例には、①内閣機能や行政組織等の再編・合理化、②公務員制度の改革、③行政の情報化、④行政手続の改善、⑤中央地方関係の見直し――などが挙げられます。

ここでの重要ポイントは、橋本内閣における中央省庁改革です。行政改革会議を設置して公務員制度改革の必要性を打ち出し、その後、中央省庁の統廃合を進める中央省庁改革基本法などが制定されました。

  次に、具体的な行政改革の手法を8つ紹介します。

①新公共管理論(NPM)

②政策評価

③PFI(Private Finance Initiative)

④構造改革特別区域(特区)

⑤市場化テスト(官民競争入札制度)

⑥指定管理者

⑦モデル事業

⑧オンブズマン制度

  ①の新公共管理論(NPM)とは、行政活動に民間企業の管理手法を導入することによって効率化を図る新たな管理手法のことです。特徴は、徹底した市場競争原理の導入が挙げられ、3E(経済性=economy、効率性=efficiency、有効性=effectiveness)は重視され、我が国の行政改革に影響を与えた手法です。例えば、a行政活動に民間企業の管理手法を導入→民間化、外部委託化、b市場競争原理の導入、c政策立案と政策の実施の分離、d成果の事後評価――などが挙げられます。

  ②の政策評価とは、国の行政機関が政策の効果を測定・分析し、客観的判断を行い、政策の的確な企画立案を行ったり、実施に役立てる情報を提供することです。我が国では2001年から全政府的に導入され、製作評価法を制定、国民に説明する義務が明示されています。具体的には、総務省行政評価局は、評価専担組織の立場から、各府省の政策についての統一性や総合性を確保するための評価を行うとともに、各府省の政策評価の客観的で厳格な実施を担保するための評価を行っています。

  ③のPFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を生かして行う新しい方法で、事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指すものです。イギリスなどでは、公共施設等の整備、再開発等の分野で成果を収めています。

日本でも1999年からPFI推進法(民間資金などの活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行され、2007年5月、日本初のPFI事業手法を活用して、山口県美弥市に刑務所が開設されています。これは、欧米の民営刑務所のように民間が全面的に施設を運営するのではなく、官と民が公権力の行使とサポート業務を分担する混合運営施設です。

  ④の構造改革特別区域とは、地方公共団体が地域の活性化を図るために自発的に設定する地域で、地域の特性に応じた特定事業を実施したり実施を促進するものです。規制緩和の一つとして、構造改善特別区域法に基づき実施されています。

対象となる分野は、地方公共団体の特定事業である研究開発、教育、農業――など多岐にわたります。特区を全国に拡大、存続、廃止等の判断は、構造改革特別区域推進本部(本部長は首相)が行います。日本初の特区は、2002年4月、沖縄の金融特区、情報特区です。

  ⑤の市場化テストとは、公共サービスについて官と民が対等な立場で競争入札に参加する制度のことで、2006年に競争の導入による公共サービスの改革に関する法律が成立し、この制度が導入されました。目的は公共サービスの質の維持向上と経費削減の推進です。官と民のみならず、民と民の競争入札も認められ、実施の過程での透明性・中立性・公正性を確保するため、内閣府に官民競争入札等監理委員会が設置されています。

  ⑥の指定管理者制度とは、地方公共団体の有する公の施設の管理・運営を、契約ではなく公法上の指定という行政処分により民間事業者一般に認容する制度です。

  ⑦のモデル事業とは、NPMの理念である「PDCA=Plan(計画)、Do(実行)、Check(点検)、Action(改善)」の考え方に基づき、定量的な成果目標を立てて、事後的に厳格な評価を行うとともに、事業の性格に応じた予算執行の弾力化を行い、事業効果を予算に反映させるものです。

  ⑧のオンブズマンとは、市民の苦情に基づいて行政を監視し、行政に対する市民の苦情等を処理し、必要に応じて是正勧告する行政監察官のことです。一般に人権擁護に加え、行政に対する苦情救済や行政改革などの機能を有しています。オンブズマン制度は、1809年にスウェーデンで初めて導入され、第二次世界大戦後に近隣の北欧諸国から英連邦諸国へと普及、ヨーロッパを中心に世界の30カ国以上で導入されています。

日本では、1990年に神奈川県川崎市で初めて導入されましたが、国の制度としては実現に至っていません。

 

Ⅲ.地方分権

  我が国では、行政改革の一端として、住民に身近な行政の権限を中央政府からできる限り地方自治体に移し、地域の創意工夫による行政運営を推進できるよう、地方分権が推し進められています。ここで、取上げるのは①平成の大合併、②道州制、③地方分権改革推進法、④地域主権戦略会議、⑤住民投票――です。

  まず最初に挙げなければならないのが、①の平成の大合併です。政府は、市町村合併特例法(市町村の合併の特例等に関する法律)を大幅に改正し、市町村の合併を容易にして、約3200ある市町村を2005年までに約1000にするよう市町村合併を推進しました。2011年11月現在の市町村数は1719です。

  市町村合併のメリットは、a福祉サービスの安定的な提供・充実、b窓口サービスや公共施設の広範な利用が可能となること、c広域的な施設整備による一体的なまちづくり、d行政経費の節約による高水準の行政サービス――が挙げられ、デメリットとしては、a住民の声が届きにくくなる、b行政によるサービスの低下、c各地域の歴史や文化等の喪失、d財政状況の良し悪しで市町村間に格差ができること――が挙げられます。

  ②の道州制とは、複数の都道府県を統合した面積規模を持つ広域行政体をつくり、自立のための権限を与える制度のことです。道州制特区推進法(道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律)が制定され、現行の都道府県制を前提にしつつ、道州制特別区域において特定広域団体で実施されることが適当と認められる施策に関する行政の推進を図っています。なお、現在特定広域団体となっているのは北海道のみです。

  また、地方分権を推進するため、地方分権一括法が1999年に制定され、その後2006年12月には、③の地方分権改革推進法が成立しました。地方分権改革推進法の目的は、地方分権改革の基本理念や国と地方双方の責務、施策の基本的な事項を定め、必要な体制を整備することです。

同法に基づき、2007年4月から内閣府に設置された地方分権改革推進委員会において調査審議が行われ、内閣総理大臣に対して勧告等がなされ、2009年12月、政府は地方分権改革推進計画を策定しました。なお、2010年3月31日に地方分権改革推進法が失効したことで、地方分権改革推進委員会も活動を終了しています。

  ④の地域主権戦略会議は、地域主権改革に関する施策を検討・推進することを目的として、2009年11月に閣議決定に基づいて内閣府に設置された内閣総理大臣を議長とする会議です。

2010年6月22日に地域主権戦略大綱が閣議決定され、地域主権改革を総合的に推進するために必要な法制上の措置などを定めて、今後の改革の取り組み方針を明らかにしました。具体的には、a義務付け、枠付けの見直しと条例制定権の拡大、b基礎自治体への権限移譲、c国の出先機関の原則廃止、dひも付き補助金の一括交付金化、e地方税財源の充実確保――などが掲げられています。

  また、2010年12月には、アクション・プランが閣議決定され、出先機関改革を円滑かつ速やかに実施するための仕組みとして推進委員会が設置されています。

  ⑤の住民投票とは、一定の資格を持つ地域住民すべての投票により意思決定を行う制度で、a憲法95条に規定されている住民投票、b法律に基づく住民投票、c条例に基づく住民投票――などがあります。

aの憲法95条に規定されている住民投票制度とは、国会が特定の自治体だけに適用される地方特別法を制定する場合で、その自治体の住民投票によって過半数の同意が必要という制度です。例えば、広島平和記念都市建設法が戦後初期に実施されています。

bの法律に基づく住民投票制度とは、2002年の市町村合併特例法の一部改正によって、市町村合併に関する住民投票が制度化されたものです。

cの条例に基づく住民投票制度とは、課題ごとに住民投票条例等を制定する場合や、恒常的な条例を制定する場合などがあります。例として、1996年の新潟県巻町における原子力発電所建設をめぐる住民投票が挙げられます。

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