第162回 民主政治とは

 さて、行政書士試験対策のブログもいよいよ大詰め、カテゴリーとしては一般知識の政治・経済・社会の解説に入ります。行政書士試験では、14問中6問という一般知識科目での合格最低ラインが設定されています。いくら、今までの専門科目の成績がよくても、一般知識で6問正解ができないと合格できないので、侮れない科目です。

  行政書士試験の過去問を見てみると、平成11年の試験委員制度導入前では、情報関連の出題はなく、政治用語、歴史、経済用語――などが出題の中心でした。平成12年~17年は、試験委員制度が導入され、情報関連の出題が導入され、増加の傾向です。平成18年以降の現行試験制度導入後では、情報関連が4~5問出題されています。学習範囲が広範になる政治経済分野と異なり、情報関連は、効率的に学習することで得点が見込みやすいので、ぜひ、押さえておきたいポイントです。 

行政書士講座

  一般知識の1回目・2回目は政治分野のコアである民主政治について学びましょう。政治は、社会を構成する人々の集団内部の利害関係を調整し、社会の秩序を維持するための努力や工夫をすることと言えます。

  それでは、①近代民主政治、②議院内閣制と大統領制、③政党政治のメリット・デメリット――と解説します。

 

Ⅰ.近代民主政治

  近代民主政治は大きく、①国民みずから全体の意思決定に参加する直接民主制と、②選挙によって国民に選ばれた代表に政治的意思決定を委ねる間接民主制――に分けることができます。

  近代民主政治の特徴は、①国民主権、②基本的人権の尊重、③代議制――です。今日の国家では間接民主制を原則とする国が一般的で、間接民主制の補完として直接民主制的な制度を採用している国もあります。直接民主制的な制度の要件として覚えなければならないのは、①レファレンダム(国民投票)、②イニシアチブ(国民発案)、③リコール(解職請求権)――です。

  歴史的にみると、はイギリスの名誉革命における権利の章典、アメリカ独立宣言、フランス革命――などを通じて、近代民主政治体制は成立しました。

  17~18世紀の市民革命期の代表的な政治思想に社会契約説があります。社会契約説は、一切の社会的秩序のない自然状態を想定し、その中で個人が自然権を確保するために相互に社会契約を結び、その結果、国家が成立する――という説です。社会契約説を唱える代表的な思想家にホッブス、ロック、ルソー、モンテスキュー――が挙げられますので、下表を使って必ず覚えてください。

一般教養162-1

 

Ⅱ.議院内閣制と大統領制

  議院内閣制は、内閣(行政府)が議会(立法府)の信任の上に成立する政治制度です。通常、議会の第一院における多数派から首相が選出され、首相が組閣し、閣僚は主に国会議員の中から選出され、内閣は議会に対して連帯して責任を負います。

  立法府と行政府は協力関係にあり、それが維持されなくなった場合のための手段として、①不信任制度、②内閣総辞職、③議会の解散制度――を備えるのが通常です。

  一方、大統領制とは、行政府の長である大統領に非常に強い権限が与えられている政治制度のことです。大統領は、議会とは無関係に選出され、議会に対して責任は負いません。通常、立法府と行政府の役割が厳格に分離され両者の権能が明確化されるなど、三権の間に厳格な権力分立が保たれています。

  下の表は、イギリスの議院内閣制とアメリカの大統領制を比較したものです。それぞれを比較しながら議院内閣制と大統領制の違いをしっかり確認しましょう。

一般知識162-2

  なお、その他の主要各国の政治制度は次のとおりです。

ドイツ:連邦議会議員と州議会選出議員からなる連邦会議によって選出された、任期5年の大統領が存在しますが、象徴的な存在にすぎず、広範な権限を持つ連邦政府と連邦宰相による議院内閣制をとっています。

フランス:大統領は、国民の直接選挙(2回投票制による決選投票あり)によって選出され、任期5年で3選は禁止されています。大統領は、首相や閣僚の任免権、閣僚の主宰、条約の批准権や非常事態における措置権、議会解散権などの強力な権限を有しています。

ロシア:国家元首であり、任期6年で国民の直接選挙により選出される大統領による政治体制をとっています。大統領は、首相任免権、下院の解散権、非常大権をもち、軍の最高司令官を兼ねるなどの強大な権力を有しています。

韓国:国民の直接選挙により選出される大統領制(任期5年)を採っています。大統領は法案および予算案の提出権を有し、議会は一院制で解散制度はありません。

中国:民主集中制を統一基本原理としています。一院制の全国人民代表大会が国家の最高権力機関であり、すべての権力が集中しています。国家主席が、対外的に国家を代表し国家元首的な存在です。

 

Ⅲ.政党政治のメリット・デメリット

  政党とは、特定の主義・政治思想で一致した人々が、その主義・思想に基づき結成し、政権の獲得・維持を目指す政治集団(結社)です。政党が議会を通じて政権を掌握して政治を運営することを政党政治と言います。

  政党政治は、その政党間の関係により次の3つに分類されます。

①二大政党制:政権担当能力を有する同程度の勢力の2つの政党が、選挙の結果に応じて政権交代を繰り返す形態

②多党制:議会の過半数を得るに足らない程度の勢力を有する政党が複数存在する形態(連立政権を樹立する場合が多い)

③一党制:他の政党の存在を認めず、1つの政党のみで政治権力を握る形態

  それぞれのメリット・デメリットは一覧にまとめました。

一般知識162-3

  また、政党政治に強く影響を与える圧力団体の存在を解説します。圧力団体とは、政府・議会・政党に圧力をかけて政策決定に影響を与え、自団体の特殊利益の実現を図る集団のことで、政権獲得を目的としない点で政党とは異なります。この圧力団体は、政党や議会の機能を補うものとして、職業利益を代表する新たな団体として発生しました。

アメリカでは、圧力団体が代理人としてロビイストを雇って活動し、「圧力団体は上院・下院に次ぐ第三院」と呼ばれるほどです。ロビイストとは、圧力団体の利益を政治に反映させるために、政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々で、米国議会のロビーなどで議員と話し合うという慣行からできた語です。

一方、日本では、アメリカと異なり職業的ロビイストが未発達であることから、自民党政権下では、国会議員自身が特定分野の政策決定に強い影響力を持つ族議員として、行政に対するロビイスト的な役割を果たすことがありました。

  そして、日本の圧力団体の特徴として、主に行政機構を活動の対象とすることが挙げられます。圧力団体が政治に与える影響は主に次の3点です。

①議会や行政機関の正常な運営の阻害

②政治権力と癒着し、政治腐敗を招く

③圧力団体を構成しにくい社会的弱者の利益が軽視される

なお、日本の圧力団体の具体例としては、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、日本医師会などが挙げられます。

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