第161回 事業譲渡とその他の組織再編

  社会情勢が目まぐるしく変化するこの頃では、それに対応するためには、会社の組織そのものを変える必要性も出てきます。

  今回は、まず、株式会社以外の会社形態である①持分会社を確認した後、②事業譲渡、③その他の組織再編――と勉強しましょう。

行政書士講座

Ⅰ.持分会社

  持分会社とは、①無限責任社員(出資者)だけで構成されている合名会社、②無限責任社員と有限責任社員とが混在し構成されている合資会社、③出資者全員が有限責任社員で構成されていて、対外的には株式会社と同様の取扱いがなされるものの、対内的には民法上の組合に類似する合同会社――の総称で、社員相互間でも会社債権者に対する関係でも、社員の個性が重視される人的会社であることが特徴です。ですから、信頼関係を有する少数の者が共同して、小規模な営業をするのに適した形態と言えます。

  このほか、①内部関係について広い定款自治が認められること、②機関について株式会社のような規制がないこと、③持分譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要であること、④出資の払戻しや退社による持分の払戻しが比較的自由であること――などの特徴もあります。ただし、③④の特徴は合名会社・合資会社についてのみです。なお、ここでいう持分とは、出資者が会社に対して有する地位のことです。

1.持分会社の設立

  持分会社の設立は、社員となろうとする者が定款を作成し、設立登記をすることによって成立します。株式会社では定款の効力発生には公証人の認証が必要でしたが、持分会社においては必要ありません。

持分会社設立には合名会社・合同会社では社員が1人いれば足りますが、合資会社では無限責任社員と有限責任社員になろうとする者それぞれ1人以上、合わせて2人以上が必要です。

  無限責任社員の出資の目的は、金銭その他の財産に限らず、信用・労務でも可能です。一方、有限責任社員は、金銭その他の財産に限られます。合名会社・合資会社においては、社員は、定款作成後設立の登記をするまでに全額の払込みまたは全部の給付をしなければなりません。

  また、設立取消原因には、①社員の行為能力の制限、意思表示の瑕疵、②債権者を詐害する設立――があります。設立無効を求める場合には、株式会社と同様の設立無効の訴えを起こすことができますし、株式会社と異なり設立取消の訴えを提起することもできます。

さらに無効原因は、客観的無効原因のみならず、主観的無効原因も認められます。

2.持分会社の社員

  会社は法人であるので、通常では会社の債務は社員の債務ではありませんが、合同会社を除く持分会社の社員は、会社債権者に対して直接責任を負っているので、無限責任社員はすべて直接責任を、有限責任社員は出資の未履行分を限度として直接責任を負います。

  また、社員がその有する持分の一部または全部を譲渡するには、原則として他の社員の全員の承諾が必要です。ただし、業務を執行しない有限責任社員の持分は業務執行社員全員の承諾で足ります。ただし、持分会社では、社員の氏名・名称や住所が定款の記載事項となっているため、持分譲渡の際には定款の変更が必要です。

3.管理

  持分会社においては、原則として各社員の会社の所有と経営が分離されていません。業務執行の決定は、社員が2人以上いる場合には、原則として社員の過半数をもって行います。定款で一部の社員を業務執行社員と定めた場合には、当該業務執行社員の過半数をもって行います。

  なお、定款で業務執行社員を定めた場合でも会社の常務は各社員が単独で行えますし、業務を執行しない社員には、業務・財産状況調査権が認められています。

  持分会社では、原則として業務執行社員が会社を代表し、業務執行社員が2人以上いる場合は、各自が会社を代表します。会社を代表する社員の代表権は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為に及び、これに対する制限は、善意の第三者に対抗することができません。

なお、定款または定款の定めにより、業務執行社員の中から持分会社を代表する社員を定めることも可能です。

4.社員の加入と退社

  持分会社の社員の持分の全部または一部が譲渡された場合には、譲渡人が新たな社員として加入することになりますが、定款を変更して新たに社員を追加することもできます。

  一方、退社には社員自らの意思による①任意退社と、法定の原因による②法定退社――があります。法定退社の事由としては、a定款で定めた事由の発生、b総社員の同意、c死亡、d除名――などがあります。

  なお、退社した社員は、持分の払戻しを受けることができます。

5.定款の変更

  持分会社は、原則として総社員の同意によって定款変更をすることができます。定款を変更することにより、持分会社の種類を変更することも可能です。例えば、合名会社が有限責任社員を加入させる定款を変更することで合資会社への種類変更が可能です。

  逆に、合資会社の有限責任社員が退社したことにより、その会社の社員が無限責任社員のみとなった場合、その会社は合名会社となる定款変更をしたと見なされます。また、合資会社の無限責任社員が退社したことによりその会社の社員が有限責任社員のみになった場合には、その会社は合同会社となる定款の変更をしたと見なされます。

6.解散および清算

  持分会社の解散事由は、株式会社とほぼ同様で、次の7つです。

①定款で定めた存続期間の満了

②定款で定めた解散事由の発生

③総社員の同意

④社員が欠けたこと

⑤合併

⑥破産手続開始の決定

⑦解散を命ずる裁判

  解散の効果も株式会社とほぼ同様で、会社の継続も認められます。

  持分会社の清算は、原則として法定の手続きに従う法定清算ですが、合名会社・合資会社において一定の場合には、定款または総社員の同意により会社の財産の処分方法を定める任意清算も行えます。

 

Ⅱ.事業譲渡

  事業譲渡とは、一定の目的のために組織化された有機的一体をなす機能的財産の譲渡で、譲受会社が事業活動を承継し、譲渡会社が競業避止義務を負担する契約です。例えば、自動車を製造するA社が、B社に製造工場一式を売ることです。

  事業譲渡には、①事業全部譲渡、②事業の重要な一部の譲渡、③他の会社の事業全部譲受け――があり、原則として株主総会の特別決議が必要です。②の事業の重要な一部の譲渡は、通常、重要な財産の処分および譲受に含まれるため、取締役会設置会社では取締役会の決議が必要です。

  また、他の会社の全部の譲受けをする場合において、その会社の事業の全部の対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が、その会社の純資産額として法務省令で定める方法により算出される額の5分の1を超えないときには、原則として株主総会の決議は不要です。

  一方、事業の一部を譲渡する場合でも、その譲渡により譲渡する資産の帳簿価額がその会社の純資産として法務省令で定める方法により算出される額の5分の1を超えないときは、事業の重要な一部譲渡には該当せず、株主総会の決議は不要です。

  また、事業譲渡の相手方が、特別支配会社である場合も株主総会の決議は不要です。特別支配会社とは、総株主の議決権の10分の9以上を保有している会社のことです。

  続いて、事業譲渡における諸規制を見ていきます。

  まず、譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはなりません。

  また、譲受会社が譲渡会社の商号を引継ぎ使用する場合、その譲渡会社も原則として、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。

  なお、譲渡会社の商号を続用する場合でも、事業を譲り受けたのち、遅滞なく譲受会社がその本店の所在地で譲渡会社の債務を弁済する責任を合わない旨を登記した場合には、弁済の責任を負いません。逆に、事業を受けたのち、遅滞なく譲受会社・譲渡会社から第三者にその旨の通知を出した場合には、譲受人はその第三者に対する弁済責任を負いません。

 

Ⅲ.その他の組織再編

  事業譲渡以外の組織再編には、①組織変更、②合併、③会社分割、④株式交換と株式移転――などがあります。

1.組織変更

  組織変更とは、法人格の同一性を保ちながら、株式会社が組織を変更することにより持分会社となることや、持分会社がその組織を変更することにより株式会社になることです。

  株式会社が組織を変更するには、総株主の同意を得る必要があり、持分会社が組織を変更する場合には、原則として総社員の同意が必要です。さらに、債権者保護手続きも必要です。

2.合併

  合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社になることで、①吸収合併、②新設合併――の2つがあります。

  ①の吸収合併とは、会社が他の会社とする合併で、それにより消滅する会社の権利義務の全部を、合併後存続する会社に承継させるものです。

  ②の新設合併とは、2つ以上の会社がする合併で、合併による消滅会社の権利義務の全部を新設する会社に承継させるものです。

商法161-1

  合併の手続きは、契約の前に、まず株主総会特別決議による承認が必要です。ただし、①吸収合併消滅会社において、存続会社が特別支配会社である場合、②吸収合併存続会社において、消滅会社が特別支配会社である場合――は原則として株主総会決議は不要です。

なお、反対株主には、原則として株式賠償請求権が認められます。また、債権者保護も必要です。

吸収合併の効果は契約で定めた効力発生日に、新設合併の効果は設立登記による設立会社の成立の日に、それぞれ発生し、消滅会社の権利義務一切が存続あるいは設立会社に承継されます。

消滅会社は合併により解散しますが、権利義務は継承されるために清算手続きが行われません。

2.会社分割

  会社分割とは、株式会社または合同会社が、事業に関して有する権利義務の一部または全部を、会社分割後新たに設立する会社または既存の他の会社に承継させることで①吸収分割、②新設分割――の2つがあります。

  ①の吸収分割とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させるものです。

  ②の新設分割とは、1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社の承継させるものです。

  会社分割の手続きは、株主総会特別決議によって、吸収分割の場合には契約の締結、新設分割の場合には新設分割計画の作成が必要です。反対する株主には、原則として株式買収請求権が認められます。また、債権者保護手続きも必要です。

  会社分割の効果は、吸収分割の場合には契約で定めた効力発生日、新設分割の場合には、設立登記による設立会社成立の日に、それぞれ効力が生じます。

3.株式交換と株式移転

  株式交換と株式移転は、完全親子会社関係を円滑で簡易に創設するための制度です。株式交換は、既存の会社間で行われるのに対し、株式移転は新たに完全親子会社を設立して、完全親子会社関係を創設するものです。なお、完全親子会社関係とは、親会社が子会社の発行済株式の全部を保有する関係のことです。

  株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることです。一方、株式移転とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社(完全親会社)に取得させることで、新たに設立する会社は株式会社に限られます。

手続きとしては、まず、株主総会特別決議による承認、続いて、株式交換の場合は契約の締結、株式移転の場合は株式移転計画の作成をしなければなりません。反対する株主には、原則として株式買取請求権が認められます。

  株式交換・株式移転により株主は変動しますが、会社の財産は変動しませんので、合併や会社分割の場合と異なり、原則として債務者保護手続きは不要な点に注意してください。

  株式交換や株式移転は、完全親子会社関係をもたらします。つまり、

①株式交換は株式交換契約に定めた効力発生日にその効力が発生し、株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の発行済株式全部を取得します。

②株式移転は、株式移転設立完全親会社の設立登記による成立の日にその効力を発生し、株式移転設立完全親会社は、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得します。

↓↓↓
さらに詳細は下記へ

行政書士講座

ページ上部へ戻る