第160回 計算

  株式会社は、法務省令により適時に正確な会計帳簿を作成することを求められています。会計帳簿とは、計算書類・附属明細書作成の基礎となる帳簿のことで、会社債権者保護のために会社財産を確保する目的で、作成が義務付けられているのです。

  今回は、主にそのための計算に関する様々な規定を勉強します。①会計帳簿と計算書類、②資本金と準備金、③剰余金の配当、④解散と清算――を取り上げます。

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Ⅰ.会計帳簿と計算書類

  会計帳簿とは、計算種類や附属明細書の作成の基礎となる帳簿で、いわゆる仕訳帳、元帳、現金出納帳などがこれに当たります。

株主には少数株主権として、会計帳簿の閲覧や謄写を請求する権利が認められていますが、株主としての権利の確保や行使に関する調査以外の目的で請求を行った場合や、会社の業務を妨げて株主共同の利益を害する目的で請求を行った場合には、会社はこれを拒否することが可能です。

  次に、株式会社は、法務省令で定めるところにより、①成立の日における貸借対照表、②各事業年度における貸借対照表や損益計算書などの計算書類、③事業報告、④これらの附属明細書――を作成しなければなりません。そして、計算書類は、原則として定時株主総会で承認を受けなければならないことになっています。

また、株主や会社債権者は、会社の営業時間内ならいつでも、計算書類等について閲覧などの請求を行えることになっています。

  それぞれの計算書類を詳しく説明すると次のとおりです。

貸借対照表:ある時点における会社の資産、負債等を記載することにより、その時点における会社の財産状態を明らかにするもの

損益計算書:会社の一事業年度に発生した収益と費用とを記載し、その事業年度内の会社の経営成績を明らかにするもの

事業報告:一定の事業年度における会社およびその子会社からなる企業集団の事業の状況の概要を文章の形で記載した書類

附属明細書:計算書類および事業報告の記載を補足する重要な事項を記載した書類                 

 

Ⅱ.資本金と準備金

  資本金は、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の金額です。資本金は、原則として設立または株式の発行に際して株主となる者が、会社に対して払込んだ、または給付した財産の額となります。しかし、その額の2分の1を超えない額は、資本金に組み入れないことが可能です。その場合には、残りを資本準備金として計上しなければなりません。

  資本に関する原則は、

①資本充実の原則

②資本維持の原則

③資本不変の原則――の3つです。

   ①の資本充実の原則とは、資本金は会社財産を確保するための基準である一定の金額であるから、その額が名目的に定まるだけでなく、資本金の額に相当する財産が現実に会社に拠出されなくてはならないという原則です。

  ②の資本維持の原則とは、資本金の額に相当する財産が現実に会社に保有されなければならないという原則です。

  ③の資本不変の原則とは、いったん確定された資本金の額は、任意に減少することはできないという原則です。資本金の増加と異なり、資本金の減少は、株主・債権者に不利益を与えることが考えられます。しかし、理由あって、例外として資本金を減少する場合には、厳格な手続き、a株主総会特別決議、b債権者の異議の制度――が要求されます。

  aの株主総会特別決議では、減少する資本金の額、準備金に組入れる場合はその組入れ額、資本金の額の減少が効力を生じる日――を定めなければなりません。

資本金の減少が株主総会の特別決議で決定された場合、債権者は、bの会社に対し異議を述べることが可能です。債権者に異議を述べる機会を与えるため、会社は、資本減少に関連する情報を官報に公告し、把握している債権者に対して個別に催告しなければなりません。そして、債権者が異議を述べた場合には、原則として会社は弁済等をしなければなりません。一方、異議を申し述べなかった場合には、債権者は資本減少を承認したと見なされます。

  準備金の額の減少の場合は、株主総会の普通決議で減少する額などを決めます。この場合も債権者は一定の場合を除き異議を述べることができます。

  以上のような資本減少の種類には、

①実質上の資本減少

②計算上の資本減少――があります。

  ①の実質上の資本減少は、会社が過剰な財産を株主に返還して、会社の利益率を高めるために行う資本減少です。

  ②の計算上の資本減少は、資本に欠損を生じている場合に、剰余金配当を可能にするために行われる資本減少です。

  では、資本金の減少に対し、資本金や準備金を増加させるための手続きはどうなっているのでしょう? 資本金の増加は、株主や債権者に不利益を与えることが考えにくいため、株主総会の普通決議で、剰余金を減少させ、資本金や準備金に組み入れることができます。

 

Ⅲ.剰余金の配当

  剰余金とは、資産の額と自己資本の帳簿価額の合計額から負債の額、資本金および準備金の額の合計額等を差し引いたもので、会社法では、純資産額が300万円を上回る場合は、分配可能額の範囲内でいつでも剰余金を配当することができるとされています。分配可能額とは、剰余金の配当、自己株式取得などによる純資産の社外流出の限度額のことで、基本的には、「剰余金の額-自己株式処分対価額-自己株式の帳簿価額」で計算されます。

  剰余金の配当をするには、原則として、その都度、株主総会の普通決議で、配当財産の種類と簿価、株主に対する配当割当に関する事項、剰余金の配当が効力を生じる日を決定しなければなりません。ただし、取締役設置会社では、一事業年度の途中において1回限り取締役会の決議によって剰余金の配当をすることができることを定款で定めることが可能です。これを中間配当と言います。なお、自己株式には剰余金の配当はなされません。

  これからは、違法な剰余金の配当が行われた場合の法律関係を見ていきます。違法な剰余金の配当とは、分配可能額がないのに、あるいはそれを超えて剰余金の配当がなされたような場合です。

①会社の請求権の行使:違法配当を決定した株主総会決議は無効となるので、会社は株主に対し違法配当金を請求できます。

             ↓

       しかし、会社が株主に対して請求するのは期待薄

             

②会社債権者の請求権の行使:会社債権者も株主に対して違法配当金を請求できます。

             ↓

       しかし、一債権者が全株主に対して請求をすることは事実上不可能

             

③取締役等に対する損害賠償請求:会社は取締役等に対して損害賠償請求を行うことで、損失を填補できます。

             ↓

       しかし、馴れ合いから、責任追及がなされないことも

そこで、

             

④代表訴訟の提起:株主が会社に代わって取締役等の責任を追及できます。

            

⑤取締役から悪意の株主への求償:取締役等が会社に対してした損害賠償は、株主が支払うべき義務を肩代わりしたにすぎません。したがって、取締役等は悪意の株主に対して求償権を行使できます。 

  また、取締役等が悪意・重過失によって会社債権者に損害を与えた場合にも、取締役等はその損害を賠償する責任を負います。

商法160-1

 

Ⅳ.解散・清算

  株式会社は、①定款で定めた存続期間の満了、②定款で定めた解散事由の発生、③株主総会の特別決議、④合併、⑤破産手続き開始の決定、⑥解散を命ずる裁判――により、解散します。④合併と⑤破産手続開始決定以外の場合には、清算手続に入ります。

  また、会社はいったん解散しても、①~③の場合は、清算が結了するまでは、株主総会の特別決議により、再び解散前の状態に復帰することが可能です。

  清算とは、会社の法律関係の清算処理をするための手続きのことです。具体的に言うと、精算人が現務を結了し、債権を取り立て、債務を弁済し、会社の残余財産を株主に分配する手続きです。株式会社が清算する場合には、会社は清算の目的にのみ存続し、清算結了と同時に消滅します。また、会社が解散する場合は、合併・破産手続開始決定による解散の場合を除いて、清算をしなければなりません。

  そして、解散により取締役はその権限を失い、清算人に就任するのが原則で、清算株式会社の業務を執行します。なお、株主総会や監査役はそのまま存続します。

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