第156回 株主総会以外の機関~その1

  株式会社の株主総会以外の機関を2回に分けて解説します。今日は、①取締役、②取締役会、③代表取締役、④会計参与――についてです。

 

Ⅰ.取締役

  取締役は会社経営の専門家ですが、その定義は、会社の種類によって2つに分かれます。まず、取締役会非設置会社の取締役は、会社の業務を執行する必要的機関です。これに対して取締役会設置会社の取締役は、取締役会を構成し、会社の業務執行の決定と取締役の職務執行の監督権を有する者です。つまり、取締役会非設置会社の取締役は会社の機関ですが、取締役会設置会社の取締役は機関ではなく、機関である取締役会のメンバーのことであることで異なります。

1.取締役の被選資格と員数

  法人、成年被後見人・被保佐人などは取締役になれません。

  会社法では、公開会社の取締役は、必ず株主の中から選任しなければならないという定款は定めてはならないことになっています。それは、株式会社では所有することと経営することが、制度的に分離されているからです。また、公開会社の従業員に限定するという定款を設けることもできません。

  一方、非公開会社では、実質的な所有と経営が一致していることが多いので、定款で「取締役は株主の中から選任する」と定めることが可能です。

  取締役の員数は、会社の種類によって異なります。取締役会非設置会社では1人以上ですが、取締役会非設置会社では3人以上です。取締役会を設置する場合には取締役会の決議は多数決で行われるので、最低3人は必要だからです。

  取締役は、株式総会の普通決議で選任します。なお、定足数は定款で定めても、必ず3分の1が必要です。つまり、定款で3分の1以下に定められないということです。一方、終任は①任期満了と②解任――の2つが中心です。そのほか、③辞任、④民法の定める契約の終了事由、⑤欠格事由の発生――でも終任します。

  ここでは、①任期満了と②解任について詳しく説明します。

  公開会社の取締役の任期満了は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結時までです。その理由は、株主が取締役の経営者としての適否を判断するチャンスを多くするためです。

これに対し、非公開会社の取締役の任期は10年まで延長できます。実質的に所有と経営が一致している非公開会社では、株主が取締役の経営者としての適否を判断する必要があまりないからです。

  解任は、原則として理由のいかんを問わず、株主総会の普通決議で行えます。ただし、正当な理由なく解任したときには、会社は当該取締役に対して損害賠償をしなければなりません。

また、違法行為を行った取締役に対して、株主は裁判所に取締役解任の訴えを提起できます。裁判所が不正行為などを認定すれば、株主総会の決議がなくても、また、株主総会の解任決議が不成立でも、当該取締役は裁判所の命令によって解任されます。解任請求できる株主の要件は公開会社と非公開会社で異なりますので、次の表で確認してください。

商法156-1

  なお、取締役の辞任などで取締役の員数が欠けた場合、当該取締役は、新取締役が就任するまで、取締役としての権利義務を有します。

 

Ⅱ.取締役会

  取締役会は、取締役会設置会社において取締役全員によって構成され、会社の業務執行の意思決定と取締役の職務執行の監督をする権限を有する必要的機関で、いわば、経営者会議です。

  取締役会設置会社では、株主は株主総会で会社の基本的事項を決定するにすぎないため、取締役の権限は極めて広範囲で強力なものとなるので、複数の取締役からなる取締役会を設け、取締役相互の協議によって、会社の業務執行に関する意思決定が適切なものとなるようにしたものです。

1.取締役会の権限

  取締役会の権限は、会社の業務執行の意思決定と取締役の職務執行の監督が主です。業務執行の意思決定権限は、取締役会にあります。特に、①重要な財産の処分と譲受け、②多額の借財、③支配人その他の重要な使用人の選任・解任、④支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止、⑤社債の発行――などは、会社にとって非常に重要ですから、取締会で決定しなければなりません。ただし、日常的・細目的事項に関しては、絶対に取締役会で決定しなければならないというほど重要はないので、代表取締役に委任されたものとされています。

  また、取締役会は、取締役の職務執行の監督を行う権限も有しています。そのため、取締役会は最低でも3カ月に1回は開催しなければなりません。

2.取締役会の招集・決議

  取締役会の招集権限は、各取締役が持っています。取締役会で招集権者を決めたときは、その取締役が招集権を持ちますが、この場合でも、招集権を持たない取締役は、一定の要件のもとで取締役会を招集できます。なお、監査役非設置会社の株主や監査役設置会社の監査役にも、取締役会の招集権限があります。

  取締役会の招集通知は、1週間前に各取締役(監査役設置会社では取締役および監査役)に通知を発することでなされます。定款でこの期間を短縮することも可能です。通知は、口頭でも書面でもOKで、議題を示す必要もありません。なお、取締役などの全員の同意がある場合には、招集手続を省略することもできます。

  取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、1人1議決権の出席取締役の過半数の賛成で行われます。定款で決議要件を重くすることは可能ですが、軽くすることはできません。

また、定款に、取締役が提案した議題について、取締役全員が書面または電磁的記録により同意した場合は、当該議題を可決する取締役会決議があったものと見なすことを定めることも可能です。

しかし、取締役に議決権の代理行使をさせることはできません。また、決議について特別の利害関係のある取締役は、議決権を行使することができません。

  取締役会の議事は議事録を作成し、10年間本店に置くことが必要です。株主や親会社の株主・会社債権者は、権利行使に必要な場合に取締役会の議事録の閲覧・謄写を請求することができます。

3.特別取締役

  取締役会から委任された一定事項の決定を行う取締役を特別取締役と言います。取締役会設置会社で、取締役の数が6人以上であり、取締役のうち1人以上は社外取締役である場合に設置できます。その目的は、取締役の数が多く迅速な業務執行の意思決定ができない場合に、迅速な業務執行の意思決定を可能にさせることです。

4.取締役会決議の瑕疵

  経営の専門家で構成される取締役会でも決議に瑕疵があることはあり得ます。例えば、取締役会の招集手続に瑕疵があった場合、取締役以外の者が決議に参加した場合、同意なしの書面による持ち回り決議が行われた場合――などが考えられます。

  株主総会の場合と異なり、特別の訴えの制度が存在しないため、原則として、瑕疵ある取締役会の決議は無効になります。ただし、招集手続に瑕疵があった取締役が出席しても、決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情がある場合には、法的安定性を優先して有効であるとの判例があります。

 

Ⅲ.代表取締役

  代表取締役は、対内的には業務を執行し、対外的には会社を代表する権限を有する機関で、取締役会設置会社では必要的機関です。

  代表取締役の選任は、取締役会の有無により以下のように異なります。

取締役会非設置会社では、原則として各取締役が代表権を有し、代表取締役の選任は任意です。選任する場合は、定款・定款の定めにより互選、株主総会の決議により取締役の中から、代表取締役を定めることができます。

一方、取締役会設置会社では、代表取締役の選任は必要で、取締役会の決議で取締役の中から選任されます。

  また、代表取締役は、取締役退任と同時に代表取締役の地位も失います。しかし、代表取締役を退任しても取締役の地位は失いません。取締役会設置会社では、取締役会の決議で、いつでも代表取締役を解職することができます。

1.代表取締役の権限

  代表取締役の代表権は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及び、これを制限しても善意の第三者に対抗することができません。会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を包括的代表権と言い、会社内で権限の制限をしても、その制限の存在を知らない第三者に対抗できないことを不可制限的代表権と言います。

  代表取締役が権限の範囲内の取引において、その権限を自己の利益のために濫用した場合、取引は原則として有効ですが、相手方に悪意または過失があったときは、取引は無効とされます。

  また、代表権がないにもかかわらず、社長・副社長などの株式会社を代表する権限を有すると思われる名称を付した者を表見代表取締役と言いますが、表見代表取締役がした行為は、会社が善意の第三者に対してその責任を負います。このことを権利外観法理と言い、社長などという名称からその者に代表権をあると信じた相手方を保護する目的です。

 権利外観法理が成り立つ要件は、次の3つです。

①外観の存在

②帰責性

③外観の信頼

  ①の外観の存在とは、真実の権利関係とは異なる虚偽の外観が存在しなければならないということです。例えば、ただの取締役で代表権はないのに、社長などという名称がついている場合です。

  ②の帰責性とは、虚偽の外観の作出に関して本人に責任がなければならないということです。

  ③の外観の信頼とは、相手方が権利関係と外観が異なることについて善意かつ無重過失でなければならないということです。

  また、権利外観法理が適用された場合、会社は効果帰属を否定できず、責任を負うことになります。

2.代表行為の瑕疵

  代表行為の瑕疵で問題となるのは、①無権代表行為と②代表権の濫用――です。

  ①の無権代表行為とは、株主総会決議や取締役会決議に反する行為や、これらの決議を欠く代表行為――のことです。例えば、取締役会設置会社において、代表取締役が必要とされる取締役会決議を経ずに多額の借財をしてしまったような場合です。判例では、民法93条但し書の類推適用により、相手方が善意・無過失なら有効、悪意・有過失なら無効としています。

  ②の代表権の濫用とは、客観的には代表権の範囲内にある行為を主観的には自己または第三者の利益を図る目的で行う場合を言い、明文規定はありません。例を挙げれば、客観的には代表権の範囲内に属する会社の営業資金の借入れを、主観的には自己消費の目的で行ったような場合です。

 

Ⅳ.会計参与

  会計参与とは、取締役と共同して、計算書類・臨時計算書類・連結計算書類などを作成する機関です。

  株式会社は、適時かつ正確な会計帳簿を作成しなければなりません。この敵時かつ正確な会計帳簿の作成権限は、原則として取締役にありますが、取締役が適時かつ正確な会計帳簿を作成する能力を有しているとは限りません。そこで、会計帳簿の適時性・正確性を確保するために、会計参与の設置が選択できます。ここまでは、前述の復習です。

  会計参与の権限と義務は下表のとおりです。

商法156-2

  続いて会計参与の選任・解任・任期などについて見ていきましょう。

  会計参与は、取締役と同じく株主総会の普通決議によって選任されます。また、いつでも、株主総会の普通決議で解任できます。解任の場合は、正当な理由がない場合には損害賠償請求を会社に対して行えることも取締役と同様です。

  任期は原則2年、非公開会社では10年まで延長できるのも取締役と同様です。

  また、会計参与は公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人などの専門家でなければなりません。そして、会計設置会社またはその子会社の取締役、監査役、支配人、その他の使用人や、業務停止処分期間中の者などは会計参与となれません。

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