第155回 株主総会

  今回から、株式会社の機関を個々に詳しく見ていきましょう。

まず、最初は株主総会です。株主総会は、株主によって構成される会社の意思を決定する機関で、株式会社には必ず設置しなければならない機関です。多くの株式会社の株主総会は6月下旬に開催されています。

商法・会社法の中で、一番重要な株主総会について、①株主総会の権限、②株主総会の招集と議事運営、③決議方法と議決権、④種類株主総会、⑤株主総会決議の瑕疵――と解説します。

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Ⅰ.株主総会の権限

  株主総会は会社所有者である株主によって構成されていますので、本来は会社に関する一切の事項について決定できるはずですが、実際の権限は株式会社の種類によって分けられます。

取締役会設置会社以外の株式会社では、株主総会には、会社法に規定する事項、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議する権限があります。

一方、取締役会設置会社である場合、株主総会には会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限って決議する権限があります。

  また、株式会社は会社の意思決定機関ですが、株主総会が決議する事項は多岐にわたるので、会社法では、会社にとっての重要性によって、

①普通決議

②特別決議

③特殊決議――の3つの決議方法を定めています。

各決議の定足数、可決数、具体例――を一覧にまとめましたので、確認してください。

商法155-1

 

Ⅱ.株主総会の招集と議事運営

  株主総会には、

①定時株主総会、

②臨時株主総会――とがあります。

  ①の定時株主総会とは、計算書類の承認をするためのもので、毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが定められています。

また、②の臨時株主総会は、定時株主総会以外で必要がある場合に招集され、必要に応じて臨時に開催されます。

  招集をするのは、原則として取締役か取締役会ですが、例外として、少数株主により招集ができる場合があります。取締役会などが招集する場合は、取締役会で、開催日時・場所・株主総会の目的事項、書面投票・電子投票を認めるときはその旨、その他法務省令で定める事項を決定し、代表取締役等が執行します。

  一方、少数株主による招集は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6カ月前からから引き続き有する株主が、取締役に対して招集を請求することによって行われます。また、この際に遅滞なく取締役などによる招集手続きが行われない場合には、当該請求をした株主は、裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することが可能です。

  招集通知は、原則として株主総会の2週間前(非公開会社の場合は原則として1週間前)までに発しなければなりません。
招集方法に関する規制は、株主の利益保護のためなので、議決権を行使できる株主全員の同意があれば、招集手続きを省略することができます。もっとも、書面・電磁的方法による議決権行使が行われる場合には、招集手続きの省略はできません。

  株主総会の成立は、

①招集通知に記載された日時に、

②株主が出席し、

③定足数が満たされ、

④取締役が出席し、

⑤議長が定足数が充足していることを確認報告し、

⑥開会を宣言する――ことでなされます。

  そして、議長は、定款に特段の定めのない場合には、株主総会で選任します。

議長には、総会運営の適正化を図るための強力な権限である、秩序維持権、議事整理権が与えられます。命令に従わない者や総会の秩序を乱す者を退場させることができる権利です。

  また、株主に与えられた権限に株主提案権がありますが、株主の意見を株主総会に反映させ、会社と株主、株主相互間の意思疎通を図る目的の権限です。取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで要件が異なりますので、下表で確認してください。

商法155-2

  一方、株主総会の審議を活発化して会社と株主の対話を促進するために、取締役、会計参与、監査役などには、説明義務が課されています。

  また、取締役会設置会社の株主総会で決議できる事項は、招集通知に記載された事項に限られます。したがって、議題を変更したり、追加したりして決議することはできません。なお、取締役会非設置会社では、特に制限はありません。

  そして、株主総会の混乱が予想される場合などに、株主総会運営の適正化を図るため、会社や株主は、株主総会招集の手続きや決議の方法が公正かどうかを調査してその証拠を保全する検査役の選任を裁判所に請求することができます。

  さらに、株主総会の議事については議事録を作成しなければなりません。議事録は10年間本店に、また写しを5年間支店に置いて、株主や会社債権者の閲覧・謄写請求に応じなければなりません。

 

Ⅲ.決議方法と議決権

  さあ、いよいよ決議です。決議は原則として多数決が妥当します。しかし、多数決は少数派の株主の利益を害する弊害もあるため、一定の場合には多数決の制限や例外を認めています。

  まず、株主平等原則に反するような決議、強行法規に反するような決議などは、多数決によってもできないことになっています。
例えば、もし「100株未満の株主には配当はしない」という決議を多数決で決定しても、これは無効です。

  また、一定の重要な議案に反対の株主は、自己が保有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に対して請求できます。これを反対株主の株式買取請求権と言いますが、詳しくは後述します。

  ちょっと複雑な制度に累積投票の制度があります。
2人以上の取締役を選任する際に、1株について選任される取締役の数と同数の議決権を与え、かつ、得票数の多いものから順に取締役として選任する一種の比例代表制度です。取締役会を構成する取締役は、株主総会の多数決で選任されますから、少数派株主の利益は無視されがちになりますので、少数派を代表する取締役を選任するために設けられた制度です。

分かりにくい制度ですので、次の具体例を参考にして理解してください。

A株式会社には100株を保有する多数派と50株を保有する少数派がいます。株主総会で3人の取締役を選ぶことになりました。取締役の候補者は、多数派の田中さん、鈴木さん、佐藤さん、少数派から斎藤さんです。
原則通り決議を行うと、田中さん・鈴木さん・佐藤さんは賛成100票、反対50票、斎藤さんは賛成50票、反対100票と、少数派の取締役は選出されません。

これに対して、累積投票制度を採用すると、1株について3票与え、一度に3人を選ぶので、田中さん賛成180票で当選、鈴木さん賛成100票で当選、佐藤さん賛成20票で落選、斎藤さん賛成150票で当選――というように、少数派の代表も選べることになります。

  次に、議決権とは、株主総会において決議に加わる権利のことで、その数は1株につき1個であるのが原則です。これを一株一議決権の原則と言い、例外は、以下の法で定められた場合のみ認められています。

①議決権そのものを有しないとされる場合 →議決権制限株式、単元未満株式、自己株式、相互保有株式(相互保有株式とは、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有すること、その他の事由を通じて株式会社が経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主は、その保有する株式について議決権を有しないものとされることです。株式を4分の1以上保有している支配会社の株式で議決権を行使されると、支配会社の株主総会の公正を害するおそれがあるからです。)

②議決権の行使が制限される場合 →議決権制限株式、自己株式取得・売渡請求に関する特別決議における売主である株主が有する株式、基準日後に発行された株式など

  そして、議決権行使の方法は、株主自身が株主総会に出席して行使するのが原則です。
しかし、以下の4つの場合に例外が認められています。

①議決権の代理行使 →定款で代理人の資格を株主に限定することもできます。

②書面による議決権の行使(書面投票制度)→議決権を有する株主数が1000人以上である会社は必須です。

③電磁的方法による議決権の行使(電子投票制度)→定款によります。

④議決権の不統一行使 →株主が2個以上の議決権を有するときは、これを統一しないで別々に行使することができます。なお、株主が他人のために株式を有する者でないときは、会社は議決権の不統一行使を拒絶することができます。

 

Ⅳ.種類株主総会

  種類株主総会とは、読んで字のごとく株主総会の種類株主版で、会社が2種類以上の株式を発行している場合に、ある特定の種類の株主によって構成される会社の意思決定機関です。

  種類株主総会は、会社法および定款規定事項に限って決議することが可能です。

内容の異なる種類の株式として認められるのは、

①剰余金の配当

②残余財産の分配

③株主総会において議決権を行使できる事項(議決権制限種類株式)

④譲渡制限(譲渡制限種類株式)

⑤株主から会社への取得請求権(取得請求権付種類株式)

⑥会社による強制取得(取得条項付種類株式)

⑦総会決議に基づく全部強制取得(全部取得条項付種類株式)

⑧(定款に基づく)種類株式総会の承認(拒否権付種類株式)

⑨種類株主総会での取締役・監査役の選任(選解任種類株式:ただし、委員会設置会社と公開会社には認められない)――などです。

  このほか、

⑩非公開会社は、剰余金配当・残余財産分配・議決権――について、株主ごとに異なる取り扱いをする旨を定款で定めることができます。その定めによる株式は、株式会社と組織変更などに関する規定との関係で内容の異なる種類の株式と見なされ、属人的みなし種類株式と呼ばれます。

  議決方法は、株主総会に準じて、普通決議、特別決議、特殊決議――の3つに分かれます。

 

Ⅴ.株主総会決議の瑕疵

  最後に、株主総会の決議に瑕疵があった場合を考えてみましょう。決議が有効か否かは、会社・株主・取締役など多数の者の利害に影響を与えるので、瑕疵の主張をできるだけ制限し、法律を画一的に確定することが必要です。

例えば、A株式会社の株主総会において、議決権のある株主Xさんに招集通知が届いていなかったとしたら、株主総会の決議はどうなるのでしょうか?

一般的には瑕疵ある行為は無効となるのでしたね。そして、無効は誰でも、いつでも、どんな方法でも主張できるのでしたね。つまり、株主総会の決議は最初からなかったことにできるのです。しかも、会社と株主Xさんとの関係で無効となるのですから、招集通知が届いて議決行ったYさんと会社との関係では、株主総会の決議は有効です。これでは、収拾がつかない状態になることは、たやすく想像できますね。

  そこで、会社法は、次の3つの制度を作りました。

①株主総会決議取消の訴え

②決議無効確認の訴え

③決議不存在確認の訴え

  これら3つの制度の目的は、

aできる限り無効の主張を制限する(無効主張の可及的制限)

b無効になっても遡及効を阻止する(無効の遡及効阻止)

c無効判決は、当事者以外の者にも効力を持つ(法律関係の画一的決定)――ことです。

  では、①~③をこれから説明します。

1.株主総会決議取消の訴え

1)取消原因

 ・株主総会の招集手続または決議方法が、法令・定款に違反するか著しく不公正なとき

 ・株主総会の決議内容が定款に違反するとき

 ・株主総会の決議について特別利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき

2)手続き

  まず、提訴できるのは、株主、取締役、執行役、監査役、精算人――に限られます。
判例によれば、株主の場合は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなく、他の株主に対する招集手続に瑕疵がある場合にも、株主総会決議取消の訴えを提訴できるとしています。

  次に提訴期間は、決議の日から3カ月以内です。株主総会決議取消の訴えを提起した場合、その提訴期間経過後に新たな取消事由を追加して主張することはできません。

  また、決議取消の方法は、この訴えのみで、取消判決が下されると決議は取消されます。

3)取消判決の効力

  取消判決が確定したときは、その判決は第三者にもおよぶ対世効を持ち、遡及効も持ちます。

4)裁量棄却 

  取消原因の一つに、株主総会の招集手続または決議方法が法令・定款に違反するというのがありましたが、これは極めて軽微な違反ということも考えられます。この場合、議決の取消しが認められると、結果的に会社や株主全体への利益を害することも考えられます。

  そこで、会社法では、招集手続または決議方法が法令または定款に違反するときでも、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないと認めるときは、請求を棄却できることにしました。これを裁量棄却と言います。
 

2.株主総会決議無効確認の訴え

1)無効原因

  株主総会の決議内容が法令に違反する場合です。
例えば、株主平等の原則に反する決議、違法な剰余金配当決議――などが該当します。

  これは、決議内容の瑕疵ですから、訴えのあるなしに関わらず無効です。なお、判例では、株主総会の決議の内容自体に法令違反の瑕疵がなく、単に決議の動機や目的が公序良俗に反する不法がある場合には、その決議は無効とならないとしています。

2)手続き

  提訴は、正当な利益がある者なら誰でも、いつでも行えます。どんな方法で無効の主張をしてもOKです。無効判決は、当然無効な決議を無効と確認するだけです。

3)無効判決の効力

  無効判決が確定したら、その判決は対世効、遡及効を有します。
 

3.株主総会決議不存在確認の訴え

1)原因 

  株主総会の事実がないのに総会議事録が作成されたり、事実上決議があったとしても、決議の手続上の瑕疵が著しく、決議が法律上存在すると認められない場合のことです。決議が存在しないのですから、決議は当然に不存在です。

2)手続き

  提訴は正当な利益がある者なら誰でも、いつでも、どんな方法でも提訴できます。判決は、存在しない決議を不存在と確認するだけです。

3)不存在判決の効力

  不存在判決が確定したときは、判決は対世効、遡及効を有します。

  最後に決議取消の訴えと決議無効・不存在確認の訴えとの相違点をもう一度確認します。

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  決議取消の訴えは、取消権者・提訴期間が制限され、訴えを起こすしか取消しを主張する方法がありません。

これに対して、議決無効・不存在確認の訴えの場合は、当然に無効あるいは不存在なのですから、主張権者・提訴期間に制限はなく、どんな方法で提訴してもかまいません。

  このような違いは、決議取消の訴えの原因は、主に手続的な瑕疵で、比較的軽微で、判定も時間の経過で困難となるのに対し、決議無効の原因は決議の内容上の瑕疵で、重大であるとともに時間的経過で判定が困難となることもないことによるものです。決議不存在は、手続的な瑕疵であるものの瑕疵の程度が極めて重大だからです。

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