第154回 会社の機関のいろいろ

  会社の機関とは、会社の意思決定または行為をする者として法により定められている自然人または合議体のことです。機関による行為や意思決定は、会社全体の行為や意思決定となるので、すべてが会社に効果帰属することになります。会社の機関と基本的な役割は下表のとおりです。

商法154-1

  それでは、今回は、会社法の中でも、とても複雑でややこしい機関設計の勉強です。焦らず、じっくり学習しましょう。

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  株式会社の社員である株主は、間接有限責任しか負いません。その結果、出資が促進されることになりますが、一方、会社経営の意思も能力もない多数の者が関わることになります。会社経営の意思も能力もない者に会社経営を任せたのでは、会社の不利益になるので、原則として、株主と会社経営者を分離して、会社経営は経営能力がある者に任せることにしています。つまり、株式会社においては所有と経営が分離されることになっています。

  そこで、会社法ではすべての株式会社は、株主総会および取締役会を置かなければならないと定められています。そのほかの機関は定款の定めにより置くことができるのが原則です。これを、機関設計自由の原則と言います。

しかし、会社の規模に応じて、一定の機関を置かなければならないとされる場合があります。

  まず、、株式会社の機関設計の基本的ルールを紹介します。

①すべての株式会社は、株主総会および取締役を置かなければならない。

②会計参与を置くことは、委員会設置会社以外の非公開会社かつ取締役会設置会社が監査役を置かない場合を除き、任意である。

③公開会社は、取締役会を置かなければならない。

④監査役会設置会社は、取締役会を置かなければならない。

⑤委員会設置会社は、取締役会を置かなければならない。

⑥委員会設置会社以外の取締役会設置会社は、監査役を置かなければならない。

⑦委員会設置会社以外の取締役会設置会社であっても、非公開会社かつ会計参与設置会社であれば、監査役を置くことを要しない。

⑧委員会設置会社以外の会計監査人設置会社は、監査役を置かなければならない。

⑨委員会設置会社は、監査役を置くことができない。

⑩非公開会社かつ監査役会非設置会社かつ会計監査人非設置会社である株式会社は、定款で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる。

⑪委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。

⑫委員会設置会社以外の公開会社かつ大会社は、監査役会および会計監査人を置かなければならない。
(大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上である会社、または、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である会社のことです。)

⑬非公開会社かつ大会社は、会計監査人を置かなければならない。

  いかがですか? ずいぶんとややこしいですね…!

  そこで、違う角度から、解説を試みます。

 

Ⅰ.取締役会の設置・非設置

  取締役会の設置・非設置は、公開会社か非公開会社か、また、大会社か非大会社か(=株主総会の権限が万能かどうか)によって決まります。

  つまり、取締役会は、取締役の権限濫用を取締役相互の監督で制限している場合は、取締役に付与される権限が大きく、株主の監督権が機能しにくいので、取締役の権限濫用防止の必要性が高まります。
逆に、会社が小規模だったりして株主総会の権限が万能であれば、経営者である取締役に付与される権限は小さく、株主の監督権が有効に機能するため、取締役の権限濫用の可能性は低くなります。

  公開会社を見てみましょう。公開会社の場合、もともと大規模な会社が多く、会社の合理的経営を図るために、株主総会の権限を制限して、経営は専門家である取締役に任せる必要性が高いと言えます。
ということは、取締役に付与される権限が大きくなります。さらに、株主の自由な交代が認められるので、株主の監督権も有効に機能しなくなります。
そこで、取締役の権限濫用防止のために取締役会を設置が強制されているのです。

  一方、非公開会社は、もともと小規模な会社が多く、会社の合理的経営を図るために、閉鎖性を維持しつつ株主総会によって会社に関する一切の事項を決定する必要性が高いと言えます。
つまり、経営者である取締役に付与される権限は小さいこと、株主の監督権が有効に機能することから、取締役会を設置する必要性は低いと言えます。
そこで、株主総会の権限を万能にするとともに、取締役会の設置は強制されていません。

  また、取締役会の設置・非設置については、大会社か非大会社かによっても、規定が変わってきます。下図にまとめましたので、覚える参考にしてください。

商法154-2

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Ⅱ.代表取締役の選任

  代表取締役の選任・不選任については、取締役会設置会社と取締役会非設置会社とで異なります。

  取締役会設置会社の業務執行に関する意思決定は取締役会によって行われるのはご承知のとおりですが、取締役会は合議体ですから、株式会社の代表としての行為を行うには適していません。
そこで、会社法は、取締役会には意思決定権限だけを与え、代表行為は代表取締役を定めて行わせることを定めました。

原則として取締役の過半数が出席した取締役会で、出席取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、代表取締役だけが会社を代表します。

  これに対して、取締役会非設置会社では、取締役各自が会社を代表します。ただし、複数の取締役がいる場合には、定款・定款規定に定められた互選、株主総会決議などの方法で代表取締役を設置することも可能です。

代表取締役を選任しない場合には、原則として取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、取締役各自が会社を代表します。
これに対し、代表取締役を選任する場合には、原則として取締役の過半数で業務執行の意思決定をし、代表取締役だけが会社を代表します。

 

Ⅲ.会計参与の設置

  株式会社は、適時正確な会計帳簿を作成しなければならず、会計帳簿作成の権限は原則として取締役にあります。しかし、取締役が会計の専門家とは限らないので、会計帳簿の適時性・正確性を確保するために会計参与を設置するかしないか選択できます。

 

Ⅳ.監査役・監査役会の設置

  取締役の職務執行については、取締役会非設置会社においては株主・株主総会が、取締役会設置会社においては、取締役会・株主・株主総会が監督を行いますが、取締役会では自己監督ということで厳密さに欠
けますし、株主にも十分な監督能力があるとも言えません。
そこで、会計や業務に関して取締役や会計参与の職務執行を監査するために、監査役・監査役会を設置できることになっています。

  なお、大会社や公開会社では、監査役・監査役会の設置は強制されています。

  以上の各機関を含め、個々の機関については、順次、詳しく解説していきますが、会計法は要求している機関設計を次の6つにまとめました。これは、絶対に覚えてください。

①すべての株式会社は、株主総会と取締役が必要。

②公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社は、取締役会が必要。
(委員会設置会社とは、a指名委員会、b監査委員会、c報酬委員会――と執行役を置く会社です。)

③取締役会設置会社は、a監査役、b3委員会&執行役――のどちらかが必要。
ただし、大会社以外の非公開会社では、会計参与を置けばこの限りでない。また、監査役と3委員会&執行役の両方をおくことはできない。さらに、委員会設置会社以外の大会社で、公開会社である会社は、監査役会が必要。

④取締役会を置かない場合は、監査役会や3委員会&執行役を置くことはできない。

⑤大会社と委員会設置会社では、会計監査人が必要。

⑥会計監査人を置くには、監査役または3委員会&執行役のいずれかが必要。

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