第152回 株式とは~その2

  今回は、前回の公開会社、非公開会社のところで出てきた株式の譲渡について詳しくお話しします。
では、①株式譲渡自由の原則と制限、②株式の動的安全・静的安全、③株主名簿――です。

行政書士講座

Ⅰ.株式譲渡自由の原則と制限

  株式譲渡自由の原則とは、株主は株式を自由に譲渡できるという原則です。

その理由は、まず、そうする必要性があるということです。
株式会社では、社員である株主は、間接責任しか負わないため、会社債権者が見当てにできるものは会社財産だけです。そこで、会社債権者保護のために会社財産が重視され、いったんなされた出資の払戻しは認められていません。つまり、株主による投下資本の回収の手段としては、株式を譲渡するしか方法はないのです。
そこで、株式の譲渡を原則として自由にしておく必要性があるのです。

  次に、許容性が理由となっている点も挙げられます。
通常、株主同士は面識がなく、同じ会社の社員であるといっても個人的信頼関係があるわけではありません。また、株主は間接有限責任しか負わず、原則として会社経営にも当たらないので、株主の個人財力や経営能力は、会社や会社債権者には関係ありません。
そこで、株主の自由な交代があっても何ら不都合は生じないので、株式の譲渡は原則自由になっています。

  それでは、原則自由な株式の譲渡からお話しを始めます。

  株券発行会社の場合、株式の譲渡は株券を譲受人に交付することにより行います。株券の交付により株式会社以外の第三者に対抗することができます。会社に対抗するためには譲受人の氏名または名称および住所を株主名簿(後述します)に記載しなければなりません。

  株券不発行会社の場合は、当事者間の意思表示のみによって株式を譲渡することができます。会社その他の第三者に対抗するためには、譲受人の氏名または名称および住所を株主名簿に記載しなければなりません。

いずれの場合も、株式の譲渡は自由に行えますが、いくら自由と言ってもそれは原則であって、例外があります。下図のように制限があるのです。

商法152-1

1.権利株譲渡制限

  会社成立前の株式引受人の地位を権利株と言いますが、権利株の譲渡は、譲渡当事者間では有効ですが、会社に対して対抗することはできません。その理由は、この時点の会社にとって誰が株主を把握しておく必要があるからです。

また、対抗できないというのは、単に会社に主張できないということであって無効であることとは異なります。
ですから、逆に会社側から権利株の譲渡の効力を認めることは可能です。
 

2.株券発行前譲渡制限

  株券発行会社において、株券発行前になされた株式譲渡は、譲渡当事者間では有効ですが、会社に対する関係では無効です。
その理由は、会社が誰に株券を発行したらよいか分からなくなってしまうからです。権利株譲渡制限と違うのは、無効となる点で、会社は譲受人を株主と認めることができません。

商法152-2

3.自己株式取得制限

  自己株式=自社株は、一定の場合に限り、取得(購入)できると規定されています。つまり、一定の制限を受けるのです。
その理由は、自社株の取得を自由に認めると主に、次の4つの弊害が生じるとされているからです。

①会社の財産的基礎を害する

②株主平等の原則に反する

③株式取引の公正を害する

④会社支配の公正を害する

  ①の会社の財産的基礎を害することの理由は、会社財産を財源として自己株式を購入すると、実質的に出資の払戻しと同様の結果となり、債権者に不利益を与えるからです。

  ②の株主平等の原則に反することの理由は、一部の株主のみから買い受けると、株主相互間の投下資本回収の機会に不平等を生じさせるからです。

  ③の株式取引の公正を害することの理由は、会社が自己株式取得によって株価を操作し、あるいは内部者取引を行い、一般投資家の利害を害するおそれがあるからです。

  ④の会社支配の公正を害することの理由は、自己株式を買い受けることによって、現経営者による会社支配が完成されてしまうからです。
 

4.子会社による親会社株式取得制限

  子会社は、原則として親会社の株式を取得することができません。
ここでいう子会社とは、会社(親会社)がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社などのことで、親会社とは、他の株式会社(子会社)の総議決権の過半数を有する会社、その他実質的に経営を支配しているものとして法務省令で定める会社のことです。

  子会社が自由に親会社の株式を取得できるとすると、親会社と子会社との間の経済的一体性や支配服従関係から、親会社自身による自己株式の取得と同様の弊害が生じるからです。

具体的には、子会社による親会社株式の取得は、実質的に出資の払戻しになるおそれがあります。
また、親会社は子会社を支配しているので、親会社が子会社に親会社株式を取得させることにより、親会社の株式について不当な株価操作や投機的行為を行ったり、親会社の現経営者の支配を固定化することが可能になります。
 

5.譲渡制限株式

  会社は定款に規定することにより、株式譲渡に会社の承認を要する株式である譲渡制限株式を発行することができます。

  本来、株主の投下資本回収手段を保障するために株式の譲渡は自由なはずですが、わが国の株式会社には、家族経営の会社などの小規模・閉鎖的な会社が多く、このような会社の場合、会社にとって好ましくない人が株主となって会社経営を妨害したり、会社を乗っ取ったりすることを防止しなければなりません。
そこで、例外的に定款の規定によって譲渡制限を設けることができるようにしたものです。

 

Ⅱ.株式の動的安全と静的安全

  会社法で定められている、株主の投下資本回収の手段である株式の譲渡を簡単にするためや、株式の流通性を高めるための制度を詳しく解説します。

  何度もお話ししているように、株式会社は株券を発行しないのが原則です。定款で株券を発行する旨を定めることができ、定めのある会社を株券発行会社、定めのない会社を株券不発行会社と言います。

  まず最初は、株券発行会社の各制度から、説明していきます。

  目に見えない観念的な権利である株式を有価証券である株券に結合表章した結果、株式を譲渡することは、相手方に株券を交付するだけになりました。株券を交付、つまり手渡すだけで済むので、民法における債権譲渡の手続きに比べてとても簡単です。しかし、安心して買うことができなければ、いくら手続きが簡単でも流通性が高まることにはつながりません。
そこで、株券の所持に次の3つの効力を認めました。

①資格授与的効力

②免責的効力

③善意取得

  ①の資格授与的効力とは、株券を所持している者は真実の株主と推定されることです。
株券を所持しているといっても、株券を拾ったかもしれないし、盗んだかもしれないのですが、一般的に見て、株券を所持している者が株主である可能性が非常に高いことから、いちいち自分が真実の株主であることを立証しなくても、株券を所持していれば株主としての地位を主張できます。他方、主張された相手方は、株券の所持人は真実の株主ではないことを立証できなければ、その主張を拒むことはできません。

  ②の免責的効力とは、株券を所持している者を真実の株主として扱った者は、原則としてすべての責任から解放されるという効力です。会社法には明文規定がないので、手形法の規定を類推適用します。

資格授与的効力によって株券を所持している者を真実の株主と推定することで、相手方(会社など)は安心して株主として扱います。それにもかかわらず、そのことに対する責任を追及されるのでは、そこに矛盾が生じます。
例えば、株券を拾ったYさんが、株主のふりをして権利を主張した場合に、会社がこれを信用して権利を認めたときは、真実の株主Xさんに対して責任を負わなくていいのです。

この免責的効力を受けるためには、相手方は善意かつ無重過失でなければなりません。
上記の例で、会社が真実の株主がXさんであることを知っていた場合、または、知らない場合でも著しく不注意であった場合には、会社を保護する必要がないので、免責されません。

  ③の善意取得とは、株券を所持している者から株券の交付を受けた者は、たとえ譲渡人が無権利者であっても、善意かつ無重過失であれば、株式についての権利を取得できることです。
民法における動産の善意取得(即時取得)の株券・株式バージョンです。

例えば、Xさんを真実の株主、Yさんを株券盗取者、CさんはYさんから株券を買った人――とします。Cさんは、Yさんが真実の株主と推定していたのですから、もし、この場合に株式を取得できなかったら理不尽な不利益を被ります。
そこで、善意取得であるとして、Cさんは、株式を有効に取得できることにしました。この制度の土台は、有価証券である株券の資格授与的効力なのは、もちろんです。

  次に株券不発行会社の場合はどうでしょう?
株券不発行会社では、当事者の意思表示のみで株式を譲渡することができるので、何ら問題はありません。

   以上は、株式の動的安全でした。
しかし、動的安全を確保するだけでは、真実の株主が善意取得によって株式を失うおそれがあります。

そこで、その対策として次の3つの静的安全の制度を設けました。

①名義書換制度

②株券不所持制度

③株券失効制度

  ①の名義書換制度は、譲受人が株主名簿(次回説明します)を自分名義に書き換える制度のことです。
自分名義に書き換えてしまえば、株主権行使のために株券を提示する必要もないし、株券を喪失して善意取得される心配も低下します。

  ②の株券不所持制度は、株主が株券を所持しないという制度です。名義書換制度があるとは言え、株券を自己保管すれば盗取されたり紛失する可能性はゼロではありません。株主が保管していなければ、善意取得される可能性はなくなります。

  ③の株券失効制度は、株券をなくしてしまった時の制度です。
株券の紛失などの場合に株券を無効とすれば、それ以後、善意取得によって株式を失うおそれはなくなります。ただし、株券失効制度は次のような手続を経なければなりませんので、無効となる前に善意取得されてしまえば、真実の株主には戻れません。

  なお、株主失効制度の流れは次のようです。

商法152-3

 

Ⅲ.株主名簿

  今までの解説に何度か出てきた株主名簿ですが、株主名簿とは、株主および株式に関する事項を明らかにするために、会社法上作成を要する帳簿のことです。

  株式会社では、株式譲渡によって会社とは無関係に株主が変更されるので、会社が常に真実の株主に権利を行使させなければならないと定めると、事実上その処理は不可能となります。また、株券不発行会社では株券自体が存在しないため、第三者に対する対抗要件も持ち合わせません。

  そこで、会社の事務処理上の便宜と株券不発行会社における第三者との法律関係の簡明な処理のために、株主名簿制度が採用されました。株主制度の採用により、株主は会社から各種の通知を受けることができ、権利行使の機会を失わずにすみます。また、権利行使のたびに株券を提示する必要もなくなり、株券を紛失したり盗まれたりする危険を減らすことができます。そして、株券不発行会社の場合には、第三者に対する対抗要件とすることができます。

  つまり、株主名簿制度は、会社の事務処理上の便宜ばかりでなく、株主の利益にもなります。
以下は、株主名簿制度での重要なポイントです。
 

1.名義書換

  譲渡・贈与・相続など、取得事由を問わず、株式を取得した者は会社に対して株主名簿の名義書換を請求できます。名義書換の請求に当たっては、株券発行会社の株主は、会社に対し株券を提示しなければなりません。一方、株券不発行会社の株主は、株式譲渡人などとともに請求を行わなければなりません。

  名義書換請求を受けた会社は、請求者が、例えば盗んだというように真実の株主ではないことを証明できる証拠がない限り、名義を書き換えなければなりません。
 

2.株主名簿の効力

  株主名簿の効力には、

①資格授与的効力

②免責的効力

③確定的効力――の3つがあります。

  ①の資格授与的効力とは、株主名簿に株主として記載されている者は、株主と推定されるという効力です。
例えば、ある時点で真実の株主であり株主名簿上の株主Xさんだったものが、後日株式の譲渡により真実の株主がYさんとなっても、株主名簿が書き換えられるまで、会社との関係ではXさんが株主と推定されます。

  ②の免責的効力とは、株主名簿に株主と記載されている者を株主として扱えば、会社は原則としてすべての責任から解放されるという効力のことです。
例えば、①の例で、会社がXさんに対して剰余金配当を行い、真実の株主であるYさんが会社に対して損害賠償請求した場合でも、会社は原則として責任を負わなくてもいいのです。ただし、会社は善意・無重過失でなければなりません。

  ③の確定的効力とは、株主は名義書換を行わない限り、会社・第三者(株券発行会社では会社)に対し株主であることを対抗できないという効力です。対抗力とも言います。

会社に対抗できないだけですから、会社側が新しい株主を真実の株主と認めることは可能です。また、会社が株主による名義書換請求を不当拒絶した場合は、株主であることを対抗できます。
 

3.株主名簿の基準日の制度

  会社が一定の日(基準日)を定め、その基準となる日において株主名簿に記載されている株主を、その権利を行使すべき株主と見なす制度です。これは、会社が株主として権利行使をさせるべきものを確定する制度とも言えます。

商法152-4

  具体的に説明すると、上の図で、6月30日の株主総会に出席し権利を行使できる株主は、決算日である3月31日現在における株主です。決算日を基準日とし、この日における株主を権利行使できる株主と確定します。
つまり、株主総会に出席し権利を行使できる株主は、基準日である決算日の最終株主名簿に記載された株主とするのです。

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