第150回 会社の概念と株式会社の設立

  今回から、商法の特別法である会社法に入ります。まず、会社法上の会社の概念をつかみ、会社の代表格である株式会社とその設立について学ぶことにします。

メニュ―は①会社の概念、②社員と会社の種類、③株式会社の設立――です。

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Ⅰ.会社の概念

  会社法3条、5条を読むと、会社は、会社法の規定によって設立された、営利を目的とする法人であると定義できます。

そして、会社法によって設立される会社は、

①株式会社

②合名会社

③合資会社

④合同会社――の4種類に分けることができます。

  どの種類の会社でも、会社と呼べるための要件は、

①法人性

②営利性

③社団性――です。
 

1.法人性

  法人とは、民法で学習したように自然人でない権利・義務の帰属の主体となり得る地位を有するものです。そして、会社は法人とされます。

権利や義務の帰属主体となる地位を法人格と言いますが、会社に法人格を認めることによって、団体名で権利を有し義務を負うことが認められます。しかし、自然人ではないので、所得できる権利や義務に次の3つの制限があります。

①性質による制限

②法令による制限

③定款所定の目的による制限

  まず、①の性質による制限とは、会社は自然人ではないので、当然ながら自然人に特有な生命・身体に関する権利や親族・相続上の権利は取得できないということです。

  次に②の法令による制限は、会社に法人格を与えたのは、法令なので、当然必要があれば法令で制限を加えることができるということです。

  そして③の定款所定の目的による制限については、少し補足します。

まず、定款(ていかん)とは、会社の組織や活動を定めた会社の根幹となる規則のことです。
具体的には、定款には会社の目的(営業内容)が記載され、会社への出資者は、この定款目的達成のために自己資金を提供しているわけです。そこで、会社は定款所定の目的以外の行為は行えないのです(民法34条)。定款目的以外の行為で出資者が予想しない不利益を被ることを防ぐことが目的です。
 

2.営利性

  営利性とは、一般的に言えばお金儲けのことですが、法的に言うと、会社は営利を目的とする団体であり、対外的な活動で収益の増大を図り、収益を構成員に分配することが必要――ということになります。
つまり、対外的な活動で利益を得ていても、その利益を出資者に分配していなければ営利性はなく、会社とは言えないことがここでのポイントです。

  出資者は、社員と言い、株式会社なら株主を指しますが、株主に対する①剰余金配当請求権、②残余財産分配請求権――の全部を与えないという定款の定めは効力を有しない――と会社法105条2項に規定されているのは、営利性の現れと言えます。
 

3.社団性

  会社は、構成員が団体との間の社員関係により団体を通じて間接的に結合する団体(=社団)です。
もっとも、社員が1人となることは会社の解散原因とはならず、社員が1人である一人会社(いちにんがいしゃ)の設立や存続も認められています。

 

Ⅱ.社員と会社の種類

  先ほども述べましたが、社員とは出資者のことです。ここでは従業員=社員でないことに注意が必要です。

社員には、

①会社の債務を完済できないときに、社員が連帯して会社債権者の対して直接弁済の責任を負う直接責任

②社員が会社債権者に直接責任を負わない間接責任――の2つの形態があります。

  また、社員の責任が

①一定額に限定される有限責任

②限定されない無限責任――に分けることもあります。

  次に、会社法上の会社は、

①株式会社

②持株会社――の2つの類型に分けることができます。

さらに、持株会社には、

a合名会社

b合資会社

c合同会社――の3つの類型があります。

  ①の株式会社の特徴は、社員である株主は、間接有限責任社員ということです。つまり、株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度として(有限責任)、会社債権者に対しては直接弁済の義務を負いません。

また、株式会社では、所有と経営の制度的分離が図られ、株主は原則として業務執行には参加しないものとされています。そこで、すべての株式会社には、株主によって構成される株主総会と、株主総会の決議によって選定される取締役が置かれます。

さらに典型的な株式会社では、取締役によって構成される取締役会が、会社の業務執行に関する意思を決定し、取締役会の決議によって選定される代表取締役が、取締役会によって決定された意思に基づいて現実に業務を執行し、対外的には会社を代表します。
また、一定の会社では、株主総会の決議で選定された監査役が、取締役の職務の執行を監査します。

  aの合名会社は、社員の全員が直接無限責任社員からなる会社です。
社員各自が会社債務の全額について、会社債権者に対して直接に弁済の義務を負う直接無限責任社員です。

また、定款に別段の定めがない限り、全社員が業務執行権をもち、業務執行社員各自が会社を代表する権限を有します。

  bの合資会社は、直接無限責任社員と直接有限責任社員からなる会社です。
有限責任社員は、その出資の価額の内の履行の済んでいない価額を限度として、会社債権者に対して直接に弁済の義務を負います。合資会社でも、定款に別段の定めがない限り、全社員が業務執行権を持ち、業務執行社員各自が会社を代表する権限を有します。

 cの合同会社は、持分会社の類型に属しますが、間接有限責任社員からのみなる会社です。
合同会社における社員の出資については、会社設立時までに出資財産の全額払込みまたは全額給付をしなければならず、社員が直接責任を負うことはありません。

合同会社でも、定款に定めがない限り、全社員が業務執行権を持ち、業務執行社員各自が会社を代表する権限を持ちます。

  以上4種類の会社の基本的な違いを下表で確認しておいてください。

商法150-1

 

Ⅲ.株式会社の設立

  会社法の中心は株式会社です。ここでは、株式会社設立の流れと、発起設立と募集設立の違いをはっきりとつかむようにしましょう。

株式会社は次の4つの要件を満たすことで実体が形成され、設立の登記によって法人格を取得し成立します。

①団体の根本規則である定款の作成

②社員の確定

③出資履行による会社財産の形成

④団体の活動の基礎である機関の具備

  会社を設立する際に、会社の設立の企画者として定款に署名又は記名押印(電子署名)した者を発起人と言いますが、発起人は、その会社の設立を主宰する者で、設立準備から完了までの責任を負います。発起人の資格に制限はなく、法人や制限行為能力者がなることもできます。また、その員数は1人でも認められます。

実際に行動した人でも、定款に署名捺印していなければ、法律上発起人と見なされません。逆に、実質的に設立に関与していなくても、発起人として定款に記載された人は、発起人ということになります。

  設立の方法には、

①発起設立

②募集設立――の2種類があります。

  ①の発起設立とは、発起人が設立に際して発行する株式の全部を引き受ける設立方法です。

  一方、②の募集設立とは、発起人が設立の際に発行する株式の一部だけ引き受け、残りを発起人以外の人が引き受ける設立方法です。この場合、発起人は、設立時発行株式を必ず1株以上引き受けなければなりません。
 

1.設立の手続き

  定款は会社の組織・活動に関する根本規則とお話ししましたが、発起設立・募集設立いずれの場合も設立の最初の手続きは、発起人による定款の作成です。定款は書面に記載するか、電磁的記録として記録することにより作成され、発起人全員が署名または記名押印(電子署名)しなければなりません。また、公証人による認証も必要です。

  定款の内容には、

①絶対的(必要的)記載事項

②相対的記載事項

③任意的記載事項――がありますので、それぞれを下表で確認してください。

商法150-2

  上表の相対的記載事項中の変態設立事項について補足します。

  変態設立事項とは、

①現物出資

②財産引受け

③発起人の報酬その他の特別の利益

④設立費用――の各事項のことです。


変態事項はいずれも会社の財産的基礎が害される危険性が高いので、その効力を生ずるためには一定の内容が定款に記載されていなければなりません。また、発起人は、変態設立事項を調査させるために、原則として裁判所に対し検査役の選任の申立てを行う必要があります。この結果、変態設立事項が不当なときは、裁判所で、募集設立の場合はさらに創立総会で、変更することができます。

  ①の現物出資とは、金銭以外の財産でする出資をいい、設立時については発起人にのみ認められます。

  ②の財産引受けとは、発起人が会社のために会社成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約のことで、譲渡の目的財産、その価額、譲渡人の氏名・名称を定款で定めなければなりません。

なお、現物出資と財産引受けは、次の条件のもとでは、検査役の調査が不要です。

a目的物の価額の総額が500万円以下の場合

b目的物が市場価格のある有価証券である場合

c目的物について価額が相当であることについて弁護士などの証明を受けた場合

  さて、次は、株式発行事項の決定です。設立時発行株式に関する事項のうち、

①発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数

②①の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額

③成立後の株式会社の資本金および資本準備金に関する事項――は、

発起人の全員の同意により定めなければなりません。

  株主の引受けと出資の履行について、発起設立の場合は、設立時発行株式は発起人がすべて引き受け、引き受け後遅滞なく、金銭の全額を払込みます。現物出資をする発起人は、金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません。発起人は、この出資の履行をすれば、会社成立時に株主となります。

  次に、発起人は、出資の履行が完了したら、遅滞なく設立時取締役その他の機関設計と設立時役員などを選任します。選任は、発起人の議決権の過半数で決定します。また、定款で設立時役員などを定めていた場合には、発起人の出資の履行が完了したときに、設立時役員などに選任されたと見なされます。

設立時取締役は、選任されたら遅滞なく出資の履行が完了しているかなどの調査をします。調査の結果、法令・定款に違反していたり、不当な事項があった場合、発起人にその旨を通知しなければなりません。

  一方、募集設立の場合は、まず発起人が設立時発行株式の一部を引受けます。そして、残りの株式について、発起人は株主を募集します。設立時募集株式の引受けの申込みをする人は、発起人に対して、一定の事項を記載した書面等を交付し申込みます。発起人は、株式を申込んだ人に割当て、これにより株式申込人は、株式引受人となり、払込みをする義務を負います。

引受人は、発起人が定めた払込期日または払込期間内にそれぞれ全額の払込みをしなければなりません。払込みがなかった場合には迅速な設立を認めるため、失権が認められます。つまり、払込みがあった分だけで会社の設立をしてよいということです。引受人は、出資の履行をすれば、会社成立時に株主となります。

設立時募集株式の払込期日または払込期間が経過したら、発起人は遅滞なく設立時株主によって構成される創立総会を招集しなければなりません。

創立総会では、まず発起人による経過報告が行われ、機関設計に合わせて設立時取締役などが選任されます。そして、設立時取締役による出資の履行が完了しているかなどの調査の結果が創立総会に報告されます。

なお、創立総会により、変態設立事項などの定款内容を不当と判断したときは、定款の変更をすることができます。創立総会では、議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数の出席で、かつ出席した当該設立時株主の3分の2以上の多数をもって決議されます。

  以上の手続き後、設立登記を、本店の所在地において行うことで、会社は法人格を取得します。煩雑な手続がいろいろ出てきましたので、下図でおさらいしましょう。

商法150-3

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2.設立中の会社の法律関係

   設立中の会社の法律関係をお話しします。

会社は、設立の登記をして初めて法人格を取得するので、登記前には権利能力を有していません。しかし、設立登記前でも、発起人の行為の効力は成立後の会社に帰属すべきものと言えます。そこで、設立中の会社という概念を用いて、発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は実質的には設立中の会社に帰属し、会社が成立したのちは、当然に会社に帰属することとしています。

  では、発起人が行った行為の効果のどこまでが設立中の会社に帰属し、会社の成立によって会社に帰属するのでしょう?

発起人には、会社の設立を直接の目的とする行為や設立のために経済上必要な行為をする権限があることは認められますが、設立後の事業に属する行為をする権限までは認められていません。つまり、会社が成立後すぐ事業を行えるように、使用人と雇用契約をしたり、原材料の仕入れルートを確保したりする開業準備行為をする権限はないとされています。もっとも、財産引受けも開業準備行為に該当しますが、判例は、原始定款に記載され、その他厳重な法定要件をみたした財産引受けは例外的に許されるとしています。
 

3.設立無効および会社不成立

  設立登記によって会社が成立しても、設立の過程に違法な点があれば、本来はその会社の設立は無効なはずです。しかし、それでは、会社を巡る法律関係が混乱し、法的安定性を害することになることから、会社法では設立無効の訴えという制度を設けて、無効の主張や効果を大幅に制限しています。

  設立無効の訴えは、会社の成立の日から2年以内に、株主等によってのみ提起することができます。また、無効事由は、定款の絶対的記載事項を欠いている場合や、定款の認証がない場合など、客観的かつ重大な瑕疵に限られます。また、株式会社では、設立に参加した個々の社員の意思無能力・制限行動能力、意思表示の瑕疵・欠缺などの主観的原因は、設立無効原因になりませんが、持分会社では主観的無効原因も認められています。

  また、会社の実態形成手続は開始されたのに、設立登記まで至らなかった場合を会社の不成立と言い、誰でもいつでも会社が存在しないことを主張することができます。
 

4.設立関与者の責任

  会社を健全に設立するため、会社法には設立に関しての厳重な罰則規定が定められています。また、発起人や設立時取締役・設立時監査役などの設立の関与者に対しても、次のような重い民事責任も課しています。

現物出資または財産引受けの対象となった財産の価額が、定款に記載された価額より著しく低いときは、発起人および設立時取締役は、株式会社に対して、連帯してその不足額を支払う義務を負います。

もっとも、発起設立では、

a検査役の調査を経た場合

b発起人および設立時取締役がその職務を行うについての注意を怠らなかったことを証明した場合――には、免責されます。

これに対して、募集設立では、a検査役の調査を経た場合のみ免責されます。

なお、現物出資または財産引受けを実際に行った発起人は免責されません。

  さらに、発起人・設立時取締役・設立時監査役は、株式会社の設立について任務倦怠があれば、会社に対して連帯して損害賠償責任を負い、任務倦怠について悪意・重過失があれば、第三者に対しても連帯して損害賠償責任を負います。

  最後に、設立関与者の責任を表にまとめ今回の講義は終わります。

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