第148回 商行為のルール~民法と商法の違い~

  商法のまとめは商行為についてです。今回のポイントは、民法と商法の違いです。
民法に規定のある制度について、商行為の迅速性などの理由から修正されている場合があります。そこで、まず民法の内容、次に修正される理由、商法の内容と見ていくことにしましょう。おのずと民法の復習にもなるので、一挙両得です。

  では、①商行為の代理、②商事契約の成立、③商事債権の担保、④商事売買――です。
 

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Ⅰ.商行為の代理

  まず、代理についてもう一度整理したいと思います。

代理制度とは、代理人が本人のためにするということを示して相手方に対して意思表示を行って、その法律効果を直接本人に帰属させる制度です。
例えば、所有の空き地を売りたいXさんが、不動産取引に詳しい友人のYさんに頼んで売値を決め、買い手を見つけて契約してもらうというような場合です。

日常生活での取引関係が複雑になり、その規模や範囲が拡大し発展してくると、専門的知識や技術を有する人の協力・手助けが必要となります。そこで、本人の代わりに他人に事務処理をさせて、その結果を本人が享受する制度が代理制度です。

商法148-1

  ところで、民法では、代理人が代理行為として相手方に意思表示をするには、本人のためにするということを相手方に示す顕名が必要でした。覚えていますか?

例えば、YさんがZさんに土地を売る場合に、「私はXさんの代理人です」と示します。契約書には、「X代理人Y」と記します。このように顕名することによって直接本人に対して意思表示の効果が生じるのでしたね。

それでは、非顕名の場合はどうだったでしょう? Yさんが顕名しなかった場合、Zさんは自分の契約の相手はYさんだと思い込みます。そこで、民法では、顕名をしないで行ったYさんの行為はYさん自身のために行った行為と見なされるのが原則でした。

  ここからが、今日の勉強です。商行為においては迅速性が要求され、いちいち顕名をするのでは煩雑で迅速性が欠けること、相手方も使用人等の代理人であることを知っているのが普通なこと――から、非顕名でも、代理人の行為の効果は本人に帰属します。

さらに、判例によれば、代理人が顕名をせず、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかった場合は、本人・相手方と代理人・相手方に同一に契約が成立し、相手方は、法律の効果について、その一方を選択できるとしています。

商法148-2

 

  次に、代理権の消滅について、民法では、本人の死亡で消滅しましたが、商取引を円滑に処理するために、商行為では相続人に営業を続けさせる必要があります。そこで、商法では、使用人の選任などによる商行為の委任による代理権は、本人の死亡では消滅しませんのでこの点も注意してください。

 

Ⅱ.商事契約の成立

  契約とは、当事者の相対立する意思表示が合致することによって成立する法律行為で、契約により当事者に債権・債務が発生します。
売買契約を例にすれば、売主Xさんの「買いませんか?」という申込みに対する買主Yさんの「買います」という承諾といった相対立する意思の合致で成立します。

民法で上記のように勉強した契約ですが、商法では、①隔地者間の意思表示、②諾否通知義務、③受領物品保管義務――の面で取扱いが異なります。
 

1.隔地者間の意思表示

  民法では、承諾期間の定めのない申込みは、申込みの撤回がない限り効力は維持されます。何年もたってから相手方が承諾しても有効です。しかし、簡易迅速な処理が必要な商法では、これでは不都合です。

そこで、商法では、承諾期間を定めないで契約の申込みを受けた者が、相当の期間内に承諾の通知をしなかった場合は、その申込みは効力を失うとしています。
 

2.諾否通知義務

  また、民法では、契約の申込みを受けても、諾否を通知する義務はありません。しかし、これでは商取引では不都合が生じます。

そこで、商法は、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合、遅滞なく諾否の通知を発しなければならず、もし、通知をしなかった場合は、承諾したものと見なされます。
 

.受領物品保管義務

  次に、民法では申込みと同時に送付されてきた物品を保管する義務はありません。

しかし、商取引では、物品の安全保護と商人の信用保持が必要なことから、商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合に、申込みとともに受け取った物品があるときは、申込みを拒絶したときでも、申込者の費用で物品を保管する義務を負います。
しかし、物品の価格が保管費用より低い場合や、保管によって損害を受ける場合には保管義務発生しません。
 

4.報酬請求権

  商人がその営業の範囲内において、他人のためにある行為をしたときは、相当の報酬を請求することができます。

 

Ⅲ.商事債権の担保

  担保制度とは、貸金を確実に回収するなど、債務者が債務を履行しない場合に受ける債権者の危険を考慮して、あらかじめ債務の弁済を確保し、債権者に満足を与えるための手段でしたね。
そして、担保制度は、人的信用にポイントを置く「人的担保」と、財産にポイントを置く「物的担保」の2つがありました。人的担保の典型例は連帯債務、保証債務など、物的担保の典型例は質権、留置権などです。
 

1.商事債権の人的担保

  民法では、多数人が1個の分割可能な給付を目的とする債務を負うときは、分割債務になるのが原則でした。つまり、債務者の数で頭割りした債務を負ったのです。これを分割債務と言います。

しかし、債務の額も大きくなる商行為では、債権回収のリスクを債権者が負う(債務者の1人でも弁済できなければ代金を取り損ねる)ことは不都合です。そこで、商法では、数人の者がその1人または全員のために商行為によって債務を負担した場合は、その債務は各自が連帯して負担とする連帯債務としました。
連帯債務とは、同じ内容の給付は、債務者のそれぞれが独立に全部の弁済をしなければならないという債務を負担し、1人が弁済すれば他の債務者はもはや弁済しなくてよい――という債務です。

連帯債務の場合、債務者は債権者に対し、各自が債務全額について債務を負担するので、債権回収に関する債権者のリスクは分割債務に比べ、大きく減少します。

  次に債務の保証人について見てみましょう。

民法では、連帯保証ではない単純な保証債務となるのが原則でした。保証人は、主たる債務者がその債務を履行しない場合に初めて履行すればよかったのです。これを補充性と言い、その性質から次の2つの抗弁権が認められていました。

まず、催告の抗弁権です。保証人が債権者から支払いを求められた場合には、まず主たる債務者に請求するように債権者に主張できることです。

次に検索の抗弁権です。債権者が強制執行してきた場合には、保証人は主たる債務者に弁済の資力があり、容易に執行できる財産があることを証明して、まず主たる債務者の財産に対して強制執行するように求めることができることです。

さらに、共同保証の場合には、分別の利益もあります。つまり、保証人が複数人いれば、頭割りで分割した額について保証すればいいのです。

  しかし、やはり商売の上ではこれでは困ります。そこで商法では、債務が主たる債務者の行為によって生じた場合、または、保証が商行為である場合には、保証人が連帯して保証債務を負担する連帯保証にしました。連帯保証では、2つの抗弁権はありません。また、分別の利益もありません。連帯保証人は、各自主たる債務の全額を保証することになり、債権者にとってはとても有利になっています。
 

2.商事債権の物的担保

  物的担保の代表、質権について見てみましょう。まず、質権の復習から始めます。質権とは、債権者が債権の担保として債務者などから受け取った物を、債権の弁済があるまで留置し、弁済がないときには他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利でしたね。
民法では、暴利行為を防ぐために、質権において流質(りゅうじち)契約を禁止していました。流質とは、弁済期に借金を返せなかったら、質権者がただちに質物の所有権を取得するといった契約です。通常、質物は借金の額より価値の高い物です。これは暴利行為に当たるので、民法で債務者を保護していました。

  しかし、商人は自己の利害の計算ができるので、法による後見的介入は必要ありません。つまり、商法では、流質契約が認められています。

  次に留置権です。これも、留置権の復習からです。留置権とは、他人の物を占有している者がその物に対して生じた債権を有するときに、その債権の弁済を受けるまでその物を手元にとどめ置くことのできる権利です。
例えば、故障した車を修理に出した場合、修理代金が支払われるまで、車を修理工場が引き渡さないことです。

民法の留置権は、債権者がそのものを留置することによって債務の弁済を間接的に強制する権利です。したがって、目的物は債務者所有のものか否かを問いませんが、債権と目的物との間には、直接的・個別的に強い関連性(牽連性)が必要とされます。
例えば、上記の車の修理の場合、車を修理したことによって生じた代金というように直接的で個別的な牽連性があれば、借りている車でもOKです。

一方、商法は、商人間の留置権については、商人間双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、債権者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物または有価証券を留置できるとしています。

つまり、商人間留置権も、債権者が物を留置することによって、債務の弁済を間接的に強制する権利であることは民法による留置権(民事留置権)と同じですが、目的物は債権者所有のものでなければなりません。借りている車ではNGなのです。理由は所有者の利益を保護するためです。

また、牽連性については、一般的・抽象的牽連性があればOKです。車の修理でいえば、当該契約とは全く別の契約で修理を依頼され保管している別の車でも牽連性があると言えます。継続的に行われる商取引では、債権と目的物の間に直接的・個別的に牽連性を要求していたのでは、債権者の保護が十分に図れないというのが、その理由です。

つまり、民事留置権と比較すると、所有関係は厳格にし、牽連性は緩和しているのです。

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  では、今までの内容を民法・商法を比較して一覧にしますので、確認をしてください。

商法148-3

Ⅳ.商事売買

  商法における売買契約の特徴は、売主の保護です。主に6つのポイントがあります。

商法148-4

  まず、適用範囲は表のとおりです。供託と競売の関係では、民法の場合、買主が売買目的物を引き取ってくれない場合、売主は売買目的物を供託できます。また、売買目的物が供託に適さない場合は、裁判所の許可を得て競売できます。しかし、裁判所の許可には時間がかかるため売主に不利です。

商法では、供託はもちろん競売もできます。競売の際、相当の期間を定めて催告すれば、裁判所の許可を得る必要はありません。

  次に確定期売買の解除についてお話しします。確定期売買とは、売買の性質や当事者の意思表示によって、一定の日時・期間内に履行をしなければ、契約をした目的を達することができない売買のことで、季節物の売買などがその例です。
民法では確定期を徒過したために契約を解除する場合には、相手方に契約解除の意思表示をしなければなりません。

しかし、解除の意思表示を必要としているということは、解除の意思表示がなされるまでは、売主は不安定な地位に置かれることになってしまいます。さらに、売買目的物の価格の変化によって、価格が高騰すれば履行を求め、下落すれば解除するように、買主が投機を試みることさえできます。

そこで、商法では、確定期を徒過した場合、相手方が直ちに履行の請求をしない限り、当然に契約を解除したものと見なされるとして、解除の意思表示を不要としました。

  買主の検査・通知義務にも商法特別のルールがあります。
民法では、売買目的物に瑕疵がある場合、買主が瑕疵を知ったときから1年以内に契約の解除や損害賠償の請求をしなければならないと定められています。言い換えれば、瑕疵を知ったら請求すればいいと言うことですから、買主に検査・通知義務はないことになります。しかし、買主に検査・通知義務がないとすると、長い間売主が不安定な地位に置かれます。また、売買目的物の価格の変化によって買主が投機をすることが可能となってしまいます。

そこで、商法では、買主は遅滞なく売買目的物を検査しなければならないとし、瑕疵がある場合にはただちにその旨を通知しなければならないことになっています。通知をしなければ契約の解除はできないのです。

最後に買主の保管・供託義務についてお話しします。民法では、売買目的物に瑕疵が存在したため契約が解除されたとしても、買主は売買目的物返還の義務を負うにすぎませんので、目的物を保管・供託する義務はありません。しかし、買主が目的物を適切に保管等しないと売主は転売の機会を失ってしまいます。

そこで、商法では、売買目的物に瑕疵が存在したため契約が解除された場合、買主は売主の費用で売買目的物を保管、または供託しなければならないとしています。品物が違った場合、数量超過の場合についても同様です。

  では、商事売買と民事売買の違いを下の一覧表で確認しましょう。

商法148-5

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