第142回 住民の権利義務

  今回は、地方自治法に定められている①住民の権利義務について勉強します。さらに、②条例および規則、③地方公共団体の財務――についても勉強してみましょう。

 

Ⅰ.住民の権利義務

  地方自治法に定められた住民とは、市町村の区域内に生活の本拠である住所を有する者を指します(10条1項)。つまり、当該市町村の区域内に住所があれば、法人や外国人も住民です。ただし、地方自治法で「日本国民たる」と規定している場合は、自然人である日本人だけが当てはまります。

  住民に与えられた権利は、

①属する普通地方公共団体の役務の提供を等しく受ける権利

②選挙に参与する権利

③直接選挙権――などですが、②③は法人には認められていません。

  一方、住民は、属する普通地方公共団体の負担を分担する義務を負います。具体的には、行政サービスを受けるための経費に充てる税金、分担金、使用料や手数料を等しく負担することです。

  普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権は、日本国民たる年齢満20歳以上の者で、市町村の区域内に引き続き3カ月以上住所を有する者です。

被選挙権は、都道府県や市町村の議員は、日本国民たる年齢満25歳以上で市町村の区域内に引き続き3カ月以上住所を有する者です。市町村長は、日本国民で年齢満25歳以上、都道府県知事は日本国民で年齢満30歳以上です。

  普通地方公共団体の住民であって、選挙権を有する人は、地方自治制度についてのみ認められた直接請求を行うことができます。直接請求は、一定数の者の連署をもって、代表者が一定の事項を普通地方自治体に請求できる権利で、特に覚えていてほしい権利です。

直接請求には、次の6つの種類があります。

①条例制定改廃請求

②事務監査請求

③議会の解散請求

④議員の解職請求

⑤長の解職請求

⑥役員の解職請求

  ①の条例制定改廃請求は、選挙権を有する住民の総数の50分の1以上の者の連署をもって、代表者から長に対して、条例の制定または改廃を請求するものです(74条)。ただし、地方税の賦課徴収、分担金、使用料や手数料の徴収に関するものについては請求できません。

長がこの請求を受けたときは、20日以内に議会を招集し、意見を付けて議会に付議しなければならず、議会の議決があったときに条例の制定または改廃の効果が生じます。

  ②の事務監査請求は、選挙権を有する住民の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から監査委員に対して、当該普通地方公共団体の事務ならびに長および各種委員会・委員の権限に属する事務の執行に関して、監査の請求を行うものです(75条)。

請求の対象は、財務に関する事務に限らず、事務の執行全般に及び、外部監査人に請求できる場合もあります。

  ③の議会の解散請求は、選挙権を有する住民の総数の3分の1以上の者の連署をもって、その代表者から選挙管理委員会に対して議会の解散を請求するものです(76条)。なお、選挙権を有する住民が40万人を超える場合には、超える数に6分の1を乗じて得た数と、40万に3分の1を乗じて得た数とを合算した数以上の者の連署が必要です。
また、議会の議員の一般選挙の日から1年間、または議会の解散請求による解散投票の日から1年間は解散請求できません(79条)。

解散請求がなされた場合、有権者による投票が行われ、過半数の同意があった場合には、議会は解散されます。

  ④⑤の議員および長の解職請求は、選挙権を有する住民(議員の場合は選挙区内の)の3分の1以上の者の連署をもって、代表者から選挙管理委員会に対して解職の請求をするものです(80条)。これも、議員もしくは長の就職の日から1年間、または解職請求による解職投票の日から1年間は原則として解職請求できません。

解職請求があった場合は、有権者による投票が行われ、過半数の同意があった場合は解職されます。

  一方、⑥の役員の解職ですが、対象となる役員はa副知事または副市町村長、b選挙管理委員、c監査委員、d公安委員会の委員、e教育委員会の委員――です。

選挙権を有する住民は、その総数の3分の1以上の者の連署で、代表者から長に対して解職を請求します(86条)。ただし、aについては就職または解職請求による解職に関する議決の日から1年間、b~eの委員については6カ月間、解職の請求はできません。

請求がなされた場合には、長により議会に付議され、議員の3分の2以上の者が出席した会議で4分の3以上の者の同意によって解職されます。

  直接請求に関しては、6種類を比較すると覚えやすいので、下表を参考にしてください。

行政法142-1

  ところで、直接請求の代表者としての資格について、平成21年11月18日の最高裁の判決を受けて、2011に地方自治法が改正され、直接請求代表者の資格制限が次のように規定されました。

①請求に係る地方公共団体の選挙管理委員会の委員または職員

②選挙人名簿に表示されている者(選挙権の停止や失権、転出)

③選挙人名簿から抹消された者(死亡、国籍喪失など)

 

Ⅱ.条例および規則

  普通地方公共団体は、法令に違反しない限り、地域における事務およびその他の事務で法令により処理することとされているものに関して条例を制定することができます。

  また、条例中に、条例違反者に対して、2年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料または没収の刑、または5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることも可能です。

  議会の議長は、条例の制定または改廃の議決があった日から3日以内に条例を普通地方公共団体の長に送付しなければなりません。これを受けた長は、原則としてその日から20日以内に公布しなければなりません。条例に施行期日の定めがあるものを除いて、公布の日から起算して10日を経過した日から施行されます(16条)。

行政法142-2

  また、条例は地方の政治に関するものですから、性質上、国のみに属する国防や外交に関する事項などや、全国的に画一的な規制が必要な義務教育制度や裁判制度などについては、条例で定めることができません。

  条例の中で、国の法令に基づいて規制が加えられている事項について、当該法令と同一の目的でそれよりも厳しい規制を定める条例を、一般に上乗せ条例と言います。また、国の法令と条例が同一目的で規制を行う場合において、法令で規制が加えられていない項目について規制する条例を一般に横出し条例と言います。
これらは、法令に違反しないかが問題となる条例で、法令と条例のそれぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、両者の間に矛盾・抵触がない場合に条例として認められます。次の判例を参考にしてください。

☆条例制定権の限界に関する判例(最判昭53.12.21)
 
 河川法は、普通河川については、適用河川または準用河川に対する管理以上に強力な河川管理は施さない趣旨であるから、普通地方公共団体が条例をもって、河川法が定める以上に強力な河川管理を定めることは、同法に違反し許されない。

  続いて、長が制定する規則について、少しお話しします。長は、法令に違反しない限りで、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができることになっていますが、権限に属する事務とは、具体的には、

①条例に委任のある場合

②条例の実施に必要な特例を定める場合

③法定受託事務の処理に必要な場合――です。

  さらに、長は、法令に特別の定めがある場合を除いて、規則違反者に対して5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができますが、原則として刑罰を設けることはできません。

  また、規則の公布は条例の公布に準じます。

 

Ⅲ.地方公共団体の財務
 

1.会計年度

  国と同じく、普通地方公共団体にも収入支出の区切りとなる会計年度があります。普通地方公共団体の会計年度は毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります。
原則として各会計年度における歳出(支出)は、その年度の歳入(収入)で賄わなければならないという会計年度独立の原則を採用しています。ただし、例外として、継続費、繰越明許費などが認められています。

  また、会計は、一般会計と特別会計に区分され、特別会計は、普通地方公共団体が特定の事業を行う場合などに、条例で設置することができます。

  一会計年度における一切の収入および支出は、すべて歳入歳出予算に編入しなければなりません。また、予算外の支出または予算超過の支出に備え、予備費の計上も義務付けられています。

  また、債務負担行為をする場合には、原則として予算で債務負担行為として定めなければなりません。
 

2.予算

  普通地方公共団体の収入には、①地方税、②分担金、③使用料、④地方債――などがあります。②~③は条例で定めなければなりません。
また、④地方債を起こす場合は、a記載の目的、b限度額、c起債の方法、d起債の利率、e償還の方法――を予算で定めなければなりません。

  また、普通地方公共団体は、事務を処理するために必要な経費等を義務的に予算から支出(支弁)しなければなりません。公益上必要がある場合には、寄付または補助をすることもできます。ただし、会計管理者の支出は、長の政令で定める命令がなければ、行えません。
 

3.決算

  会計管理者は、毎会計年度ごとに政令の定めにより、決算を調整し出納の閉鎖後3カ月以内に、証書その他の書類と合わせて、長に提出しなければなりません。
決算とは、一会計年度の歳入歳出予算の執行の結果の実績を表示した計算書です。
また、出納の閉鎖とは、会計年度は4月~翌年3月までとなっていますが、通常、3月31日までに購入した物や完了した工事などの支払いは翌月以降になってしまいます。また収入でも、事業に対する補助金など、4月以降に入ってくる場合があります。会計年度独立の原則がありますから、これを4月だからといって翌年度会計にはできません。そこで、翌年5月31日までの期間を「出納整理期間」として、旧年度の支払いや収入を処理する整理期間とします。そして、最終的に年度の会計を締める時期5月31日にし、これを出納閉鎖と言います。

  長に提出された決算は、所定の書類と合わせて監査委員の審査に付します。

  次に、監視委員の審査に付された決算は、監査委員の意見を付けて、次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付されます。最後に、議会の認定に付された決算は、住民に公表されます。
 

4.契約

  普通地方公共団体も、物品の購入や工事の請負等、契約を締結します。

契約の方法には、

①一般競争入札

②指名競争入札

③随意契約

④せり売り――があります。

  ①の一般競争入札は、入札の公告をし、不特定多数の入札参加者を求め、その地方公共団体にもっとも有利な価格で申し込みをした者と締結する契約です。

  ②の指名競争入札は、契約履行能力等について信用のおける特定多数の者を競わせ、その中で最も有利な価格で入札した者と締結する契約です。

  ③の随意契約とは、入札を行わずに適当と認める者を相手方に選定する契約です。

  ④のせり売りとは、入札の方法によらないで、不特定多数の者を口頭または挙手によって競争させる方法です。遺失物の売り払いなどの場合に用いられます。

通常は、①の一般競争入札で締結され、それ以外は、政令で定める場合に該当するときに限って用いられます。

  また、工事等の請負契約などの一定の契約を締結した場合、普通地方公共団体の職員は、契約の適正な履行を確保するためや給付の完了を確認するために必要な監督や検査をしなければなりません。

  このほか、普通地方公共団体は、214条で定める債務負担行為の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガスもしくは水の供給や電気通信役務の提供を受ける契約(例えば、OA機器のリースなど)や、不動産を借りる契約その他政令で定める長期継続契約を締結することができます。ただし、各年度の予算の範囲内で給付を受けることは当然です。
 

5.支払い等

  都道府県は、金融機関を指定して公金の収納や支払いの事務を取り扱わせなければなりません。市町村は、金融機関を指定して収納や支払いの事務を行わせることができます。

  なお、普通地方公共団体の長は、歳出予算を支出するために、一時借入金を借り入れることができますが、借り入れの最高額は予算で定めなければなりません。また、償還には、その会計年度の歳入をあてなければなりません。つまり、会計年度内(出納閉鎖までに)ですべての支払いを済ませるということです。

  また、普通地方公共団体の金銭債権は、原則5年間権利行使しないと時効消滅します。
 

6.財務の公正さの確保

  財務は、公正さの確保のため、監査委員により財務監査を受けます。財務監査には、①定例(定期)監査、②随意監査――などがあります。

  監査委員は、監査のために必要があるときは、関係人の出頭を求めたり関係人を調査し、帳簿・書類その他の記録の提出を求めて、必要があれば学識経験者などの意見も参考に監査します。

  また、馴れ合い等による監査制度の機能不全を解消するため、都道府県と政令で定める指定都市や中核市には、包括外部監査を義務づけています。
包括外部監査は、外部監査人が独自に監査をする事件を選択して監査を実施するものです。

  このほか、政令で定める指定都市以外の市町村で採用できる、議会や長からの請求に基づき個別の案件ごとに監査を実施する個別外部監査もあります。なお、政令で定める都市以外でも、条例により包括外部監査を導入することができます。

行政法142-3

  地方公共団体が違法または不当な公金支払い等をした場合に、住民が争い、是正する手段には、

①住民参加請求

②住民訴訟――があります。

  ①の住民監査請求とは、住民が財務会計上の行為について違法または不当な行為、あるいは違法または不当に必要な行為を怠る事実があると考えた時に、証する書面を添えて、監査委員に対しで監査を求め、当該行為の防止・是正その他の必要な措置を講じることを請求するものです。一方、地方公共団体の業務について監査を請求するものを事務監査請求と言いますので、下表で違いを確認してください。

行政法142-4

  住民監査請求の対象となる行為は、違法または不当と思われるa公金の支出、b財産の取得・管理・処分、c契約の締結・履行、d債務その他の義務の負担、e公金の賦課・徴収、f財産の管理――です。

  住民監査請求があり、一定の要件をみたしている場合は、監査委員は、執行機関に対して監査の手続きが終了するまでの間、当該行為を停止すべきと勧告することができます。暫定的な停止勧告制度は、財務会計行為の停止という重大な影響があるので、違法と明らかな場合に適用される制度です。

  また、監査の際には、請求人に証拠の提出と陳述の機会を与えなければなりません。さらに、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関等の陳述の聴取に、請求人を立ち合わせることもできます。

  また、監査委員が監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付しその旨を書面により請求人に通知するとともに、公表もします。請求に理由があると認めるときは、議会、長その他の執行機関または職員に対し期間を示して必要な措置をとるよう勧告するとともに勧告の内容を請求人に対し通知し、かつ公表もしなければなりません。

  住民監査請求に関する判例を一つ紹介します。

☆正当な理由の有無の判断に関する判例(最判平14.9.12)
 
 正当な理由の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て当該行為を知ることができたかどうか、また、これを知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断される。このことは、当該行為が秘密裡にされた場合に限らず、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求するに足りる程度に当該行為の存在または内容を知ることができなかった場合も同様である。

  住民監査請求に応じた監査委員の勧告や、これに対する執行機関の措置に不服がある場合、住民は行為の差止め、行政処分の取消し、無効確認等を栽培遺書に請求する②住民訴訟を提起することができます。

住民提起をすることができるのは、違法な行為または違法な怠る事実であって、不当な場合では住民訴訟はできません。また、住民訴訟を提起するには、当該住民による住民監査請求の手続きを経なければならないという住民監査請求前置主義が採られています。

  住民訴訟の請求内容は4つに分かれています。

1号訴訟:執行機関または職員に対する行為の全部または一部の差止めの請求

2号訴訟:行政処分である当該行為の取消しまたは無効確認の請求

3号訴訟:執行機関または職員に対する怠る事実の違法確認の請求

4号訴訟:職員または当該行為もしくは怠る事実に係る相手方に損害賠償請求または不当利得返還請求をすることを普通地方公共団体の執行機関または職員に対して求める請求

  ただし、1号訴訟に基づく差止めは、差止めによって人の生命または身体に対する重大な危害の発生の防止やその他の公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは行えません。

  また、4号訴訟が提起されたときは、当該職員または当該行為もしくは怠る事実の相手方に対して、執行機関は、遅滞なく当該訴訟の告知をしなければなりません。そして、損害賠償または不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合は、普通地方公共団体の長は、判決が確定した日から60日以内に、損害賠償または不当利得の返還金の支払いを請求する義務を負います。そして、60日以内に支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償請求または不当利得返還請求を目的とする訴訟を提起しなければなりません。

  住民訴訟の出訴期間は、a監査委員の監査の結果、勧告に不服がある場合は、監査の結果または勧告の内容の通知があった日から30日以内、b監査委員の勧告を受けた機関・職員の措置に不服がある場合は、当該措置に係る監査委員の通知があった日から30日以内、c監査委員が監査請求のあった日から60日以内に監査・勧告を行わない場合は、当該60日を経過した日から30日以内、d監査委員の勧告を受けた機関・職員が勧告に示された期間内に必要な措置を講じない場合は、当該勧告に示された期間を経過した日から30日以内――と決まっています。

  住民訴訟の対象は財務会計行為に限られています。しかし、何が財務会計行為に当たるかは、はっきりしているわけではなく、この点で争われることも少なくありません。

例えば、土地区画整理法に基づく換地処分により、市が土地を取得したことは財務行為に当たらないとした判例(最判昭51.3.30)がある一方、土地区画整理事業において保留地を随意契約で売却する行為は財務会計行為に当たるという判例(最判平10.11.12)があります。

  また、判例は、先行行為が違法である場合、これに基づきなされた後続の財務会計行為も違法として住民訴訟で争うことを認めています(最判昭60.9.12)。しかし、両行為の主体が異なり、かつ先行行為が長から独立性を有する機関によって行われた事案では、先行行為自体の違法を住民訴訟で争うことを認めなかった判例も存在します(最判平4.12.15)。

  ここの部分は、一つひとつの判例を覚えることが必要です。

行政法142-5

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