第140回 地方自治法総説

  行政法も最後の地方自治法になりました。地方自治については、憲法が特に一つの章を設けて保障していて、それを受けて地方自治法が、地方公共団体の区分、組織、運営等について定めています。憲法の中でも、地方自治について勉強しましたが、地方自治法は条文も多いので、ポイントを押さえた学習が必要です。そこで、重複する部分もあるとは思いますが、地方自治法に基づいた地方自治を確認も含めて学習していきます。

  では、地方自治法1回目は、①地方公共団体の種類、②地方公共団体の権能――についてお話しします。

 

Ⅰ.地方公共団体の種類

  地方自治とは、もともと国が持っていた権力をそれぞれの地方に分け与え、その地方の住民たちに自主的に運営させる行政のシステムです。憲法は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを決めると規定しています(92条)。これは、言い換えると、地方自治法等の法律によっても地方自治の本旨を侵すことはできないと言うことです。

  地方自治の本旨には、

①地方政治がその地方の住民によって行われるべき住民自治

②地方自治が国から独立した機関によって行われるべき団体自治――の2つの要素があります。

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  また、地方公共団体には、

①普通地方公共団体

②特別地方公共団体――があります。

  ①の普通地方公共団体には、都道府県と市町村があります(1条の3第2項)。

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  さらに、市には、地方分権を推進するという目的から、大都市を対象として

a政令指定都市

b中核都市

c特例市――という3種類の特例が定められています。

  aの政令指定都市は、政令で指定する人口50万人以上の都市に、都道府県に近い権限を与えるものです(252条19以下)。また、b中核市は、政令で指定する人口30万人以上の市に、政令指定都市に準ずる権限を与えるものです(252条22以下)。c特例市は、人口20万人以上の市を政令により指定して、都道府県事務のうちで政令に定める一定数の事務を移管するものです(252条26の3以下)。

  ②の特別地方公共団体には、

a特別区

b地方公共団体の組合

c財産区――の3つがあり、bの地方公共団体の組合は、さらに

ァ一部事務組合

ィ広域連合――に分かれます。

  aの特別区とは、東京都の区のことです(281条1項)。特別区は、法律または法律に基づく政令により、都が処理することとされているものを除いて、地域における事務ならびにその他の事務のうち市が処理することとされている事務などを処理します(281条2項)。

  bの地方公共団体の組合は、2つ以上の地方公共団体が事務を共同で処理するために設置されたものです。このうちァの一部事務組合は、普通地方公共団体や特別区の事務の一部を共同で処理するために設置されています。設置には、都道府県が加入する組合は総理大臣、その他は都道府県知事の許可が必要です。一部事務組合の設置で組合に加入している地方公共団体の執行機関の権限に属する事項がなくなったときは、当該執行機関は、一部事務組合の設立と同時に消滅します(284条2項)。

また、市町村と特別区は、共同処理しようとする事務が、他の市町村などの共同処理しようとする事務と同一の種類でなくても、相互に関連するものを共同処理するための複合的一部事務組合を設立することも可能です(285条)。

  一方、ィの広域連合は、普通地方公共団体および特別区の広域的な事務を共同処理するために設けられる組合です(284条3項前段)。設置の許可などは一部事務組合の規定に準じます。

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  cの財産区とは、市町村や特別区が、当該一部の地区に山林、用水池、宅地などの財産を有し、または公の施設などを設置している場合に、これらの管理、処分のみを行う権限を有する特別地方公共団体です(294条)。

  ところで、地方公共団体の区域の変更には、

①配置分合

②境界変更――の2つの場合があります(6、7条)。

  ①の配置分合とは、地方公共団体の法人格の変動を伴う変更のことで、a合体、b編入、c分割、d分立――の4種類があります。
これに対し、②の境界変更は、地方公共団体の法人格の変動を伴わない区域の変更です。なお、都道府県の境界にまたがって市町村の設置または境界変更があったときは、都道府県の境界も当然変更されます(6条2項前段)。

 

Ⅱ.地方自治体の権能

  地方公共団体には、

①自主財政権

②自主行政権

③自主立法権――が憲法で保障されていて、その事務を処理します。

そこで、地方自治法2条2項では、普通地方公共団体が処理する事務として、a地域における事務、bその他の事務で法律または法律に基づく政令により処理することとされるもの――を定めています。

第2条(地方公共団体の法人格、事務、地方自治行政の基本原則)
1 地方公共団体は、法人とする。
2 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。

  市町村は、住民に身近な基礎的な地方公共団体として、都道府県が処理するものを除き、一般的に地域の事務およびその他の事務で法律または法律に基づく政令により処理することとされるものを処理します。

  一方、都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、2条2項に定められた事務のうち、広域にわたるもの、市町村の連絡調整に関するもの、規模または性質上、一般の市町村が処理することが適当でないと認められるもの――を処理します。
また、市町村と都道府県の間に上下の関係はありません。

  地方公共団体が処理する事務には、

①自治事務

②法定受託事務――があります。

  ①の自治事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものです。

  ②の法定受託事務とは、地方公共団体の事務のうち、国などが本来果たすべき役割に入るものを、法律または法律に基づく政令により、国などから地方公共団体に委託する事務で、国から都道府県、市町村または特別区に委託するa第一号法定受託事務(2条9項1号)と、都道府県から市町村または特別区に委託するb第二号法定受託事務(2条9項2号)があります。

  法定受託事務の管理・執行が法令の規定等に違反する場合や、管理・執行を怠った場合は、国の行政機関は、一定の手続きを経て代執行をすることが可能です(245条の8の8項)。同じく、市町村の法定受託事務についても、都道府県知事が代執行することが可能です。

 b地方公共団体が事務処理に当たっては次の3つの基本原則を遵守しなければなりません。

①住民福祉の原則

②行政効率の原則

③法令遵守の原則

  ①の住民福祉の原則とは、地方公共団体は事務を処理するに当たって、住民の福祉の増進に努めなければならないということです(2条14項前段)。

  ②の行政効率の原則とは、地方公共団体は、その事務処理をするに当たり、最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならず(2条14項後段)、そのために、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めて、その規模の適正化を図らなければならない(2条15項)ということです。

  ③の法令遵守の法則とは、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならず(2条16項)、法令に違反した行為は無効とされる(2条17項)ということです。

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