第137回 行政事件訴訟法~その他の抗告訴訟

  行政事件訴訟法の最終回です。行政事件訴訟には、取消訴訟以外にも、無効等確認の訴えや不作為の違法確認の訴えをはじめとする様々な類型があります。

今回は、①無効等確認の訴え、②不作為の違法確認の訴え、③義務付け訴訟、④差止め訴訟、⑤仮の救済制度――とお話ししていきます。

 

Ⅰ.無効等確認の訴え

  無効等確認の訴えは、行政庁の処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟です(3条4項)。無効等確認の訴えは審査請求を前置する必要がなく、また、出訴期間の定めもありません。そのほかの取消訴訟に関する規定は、ほとんど準用されます。

また、無効等確認の訴えの要件は、原告適格について独特の定めが置かれています。

第36条(無効等確認の訴えの原告適格)
  無効等確認の訴えは、当該処分または裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者※1その他当該処分または裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者※2に限り、提起することができる。

  判例によれば、無効等確認の訴えは、※1か※2のどちらかの条件が整えば提起できるとされています。※1を①予防的無効確認訴訟、※2を②補充的無効確認訴訟と言います。

  まず、①の予防的無効確認訴訟から説明します。無効な行政行為と判断されても、処分そのものが形式的に存在しているように見えることがあります。予防的無効確認訴訟の目的は、存在するように見える処分に基づいた後続処分や執行処分が行われることを予防することです。相続処分や執行処分がまだ存在していない時点で取消訴訟の形式をとることはできませんから、予防的確認訴訟の実益はここにあると言えます。

  一方、②の補充的無効確認訴訟は、現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限って、提訴が認められるものです。現在の法律関係に関する訴えとは、処分が無効であることを先決問題とする訴えのことで、例えば、懲戒免職が無効であることを前提として退職手当の支払いを求める訴えや、土地収用裁決が無効であることを前提として起業者の登記の抹消や土地の返還を求める訴え――などが挙げられます。

これらは、公務員関係は当事者訴訟、土地の返還は民事訴訟の形態で実施されます。なお、民事訴訟の中で行政処分の効力が争われる訴訟を争点訴訟(45条)と呼び、行政事件訴訟法の職権証拠調べや訴訟参加などの若干の定めが準用されます。

  以上の事例は、他に提訴の手段が存在しない場合でした。しかし、判例では、他の手段が存在しても、処分の無効確認の訴えの方が権利救済のために直接的で適切であると判断される場合には、提起が認められています。

例えば、土地区画整理による換地処分が無効という場合、処分を無効として土地所有権の存在確認の訴えという民事訴訟のよることも考えられます。しかし、換地処分は単に当事者間だけの問題ではなく、複数の当事者が連鎖して関連するものです。また、換地処分を無効とする理由が、自己が取得する土地が不利であるという場合には、土地の所有権を主張することでは意味を成しません。つまり、民事訴訟の形で所有権の確認をしても何ら救済にはならないのです。そこで、換地処分の無効を主張することこそが、原告の救済の手段として適切であると言えるのです。

このほか、原子炉設置許可処分について、別に原子炉の設置または運転の差止めを求める民事訴訟を現に提訴し、争っていても設置許可処分の無効を争うことは可能との判例も存在します。

なお、判例では、ある処分に重大かつ明白な違法があることの主張および証明の責任は原告が負うとされています。

 

Ⅱ.不作為の違法確認の訴え

  不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が相当の期間内に何らかの処分または裁決をすべきにもかかわらず、これをしない場合に提起するもので、処分または裁決をされないことが違法かどうかを確認することが目的です。

  ただし、すべての不作為についての違法の確認を求めることができるのではなく、行政不服申立てと同じく申請をしたことが必要です。しかも法律上、申請はこれをすることが認められている者に限られますから、法令に基づく申請をした者に限り提訴できるわけです。申請を伴わない場合(職権による行為についての不作為)は、次に解説する義務付けの訴えによって不服を主張します。

不作為の違法確認の訴えは、不作為が続く限り認められるので、出訴期間が存在しません。また、処分や裁決が存在しないので、執行停止の余地がなく、執行停止制度の適用もありません。

 

Ⅲ.義務付けの訴え

  不作為の違法の訴えは、行政庁が義務に違反してなすべきことをしない状態にあることを明らかにするものなので権利救済の実効性は弱いと言えます。かつては、行政活動をするかしないかという問題は行政裁量に属するから、裁判所が介入をすべきでないという考え方が根強くありましたが、行政が間違った行為をした場合に国民を救済する必要性から生まれたのが不作為の違法確認という訴訟形態です。法律上の義務に違反する行政庁に法律を遵守するよう命じることは当然司法権の及ぶ範囲と言えるのです。

そこで、従来からの行政の義務違反に対し、必要な行為をするよう命じることを立法化したものが、③の義務付けの訴え(3条6項)です。

義務付けの訴えには2つの類型があります。

a行政庁が一定の処分をすべきであるにも関わらずこれがされない場合(1号)

b行政庁に対し法令に基づく申請または審査請求がされた結果、求められた処分または裁決をするべきなのにこれがされない場合(2号)

  aの1号訴訟を直接型義務付け訴訟とよびます。非申請型義務付け訴訟と言ってもよいでしょう。
例えば、環境に悪影響を及ぼしている事業者に対して、改善命令を出すなどの行政規制権限の発動を求める訴えがこれに当たります。

また、義務付けの訴えは、訴訟要件と本案勝訴要件の両方に法の定めが必要なことも注目すべき点です。

まず、訴訟要件は、

ァ重大な損害を生じるおそれ(重大性)

ィ他に適当な方法がない(補充性)――の2つです。

  ァの重大性は、執行停止の要件と同じです。執行停止を認めるべきであるような限られた場合にのみ義務付けの訴えが提起できるということです。

  ィの補充性とは、行政過程に特別な救済の方法が設けられていないということです。

義務付け訴訟の要件で執行停止の要件と異なる点は、義務付け訴訟には緊急性が求められていない点です。

訴えに当たっては法律の利益が認められることも必要で、これは他の抗告訴訟と同様です。

  また、義務付けを命じる判決がくだされるにも、要件が必要です。

まず第一が、

①処分をすべきであることが根拠となる法令の規定が明らかなこと、つまり明白性の要件が満たされなければなりません。
または、

②処分をしないことが裁量権の範囲を超えたり、裁量権の濫用に当たる

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