第134回 行政事件訴訟法~行政事件訴訟の概要と種類

  今回から、行政救済のうちの行政事件訴訟法を勉強します。行政不服審査法の中でも、時々顔を出していた行政事件訴訟は、行政活動に関連する紛争についての訴えに対して、裁判所が解決を図るための制度です。ここで、しっかり内容を把握し、もう一度行政不服審査法を読み直し比較すると、いっそう理解が深まると思います。

  では、今日は①行政事件訴訟の概要、②行政事件訴訟の種類――を解説します。

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Ⅰ.行政事件訴訟の概要

  まず、行政事件訴訟の目的は、行政不服申立てと共通していて、

①私人の権利利益の保護

②行政運営における適法性の確保――です。

特に行政事件訴訟には、提訴者自身の権利利益と関わらない資格での訴えの提起が可能な、客観訴訟が存在することが大きな特徴です。提訴者自身の権利利益が侵害されたことを主張しなくても訴えが認められるので、目的は具体的・個人的な救済ではなく、一般的・客観的な行政に関わる法秩序の維持にあると言えます。

  この客観訴訟の存在から、行政事件訴訟の目的が、個人の権利救済だけではなく、行政運営の適法性を確保する点をしっかり覚えてください。

  法律による行政の原理を覚えていますか? 
法律による行政の原理は行政に事前の統制を加えるものですが、いわば行政事件訴訟はこの法的統制を徹底させるため、事後的な審理を行うものだということになります。

  また、行政作用法により行政主体はどう行動するかが規律されているのですが、これが守られない場合に適切な状態を回復させるのが行政争訟であるとも言えます。このことから、行政救済の場で主張が認められるのには、作用法のルールが破られていることが確認された場合と言えます。

  ところで、行政事件訴訟と行政不服申立ての大きな違いは、判断権者が行政事件訴訟は裁判所であるという点です。しかし、行政事件訴訟は、裁判所が判断審査するため、違法性の判断しかされず、不当性の判断は対象外です。当不当の判断は行政裁量の枠内にあり、裁判所が介入できないからです。一方、口頭審理主義が採用されており、行政庁による不服審査に対して、迅速かつ慎重な審理がなされるという利点があります。

  なお、行政事件訴訟法は、私人の権利救済の拡大という観点から、2004年に大幅に改正されました。改正のポイントは主に4つ、以下のとおりです。

①救済範囲の拡大:取消訴訟の原告適格の拡大、義務付け訴訟の法定、差止訴訟の決定、確認訴訟を当事者訴訟の一類型として明示

②審理の充実・促進:釈明処分の特則の制度の新設

③行政訴訟をより利用しやすく、分かりやすくするための仕組みの整備:抗告訴訟の被告適格の簡明化、抗告訴訟の管轄裁判所の拡大、出訴期間の延長、教示制度の新設

④本案裁決前における仮の救済制度の整備:執行停止の要件の緩和、仮の義務付け・仮の差止めの制度の新設

 

Ⅱ.行政事件訴訟の種類

  行政事件訴訟の提起に当たり選択できる種類としては、取消訴訟、無効等確認訴訟、選挙訴訟、住民訴訟――など様々な種類があります。ここでは、これらを一つひとつ暗記するよりも、訴訟類型の分類を理解したうえで、各類型を分類の中に位置づけた方が理解しやすく覚えやすいと言えます。そこで、まず、行政事件訴訟の分類を勉強しましょう。

行政法134-1

  行政事件訴訟は大きく

①主観訴訟

②客観訴訟――に分けることができます。
 

1.主観訴訟 

  主観訴訟とは国民の権利利益の保護を目的とする訴訟で、法律に定める場合にのみ提起することができます(42条)。
そして、主観訴訟には、

①抗告訴訟

②当事者訴訟――があります。

  このうち①の抗告訴訟は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟と定義されます(3条1項)。つまり、公権力の行使に対して不服を述べるためのものですから、行政活動によって権利利益を侵害された場合に私人が救済を求める手段としては、中心的なものになります。

  そして、抗告訴訟はさらに5つの形態に分かれます。その中心がa取消訴訟で、これはさらにァ処分の取消し訴え(3条2項)とィ裁決の取消しの訴え(3条3項)――に分かれます。
取消訴訟は、私人の権利救済のためには大変有効なものであり、古典的な訴訟類型です。このため次回からの各論では、取消訴訟に関しての勉強が中心になります。

  それ以外の抗告訴訟の形態としては、b無効等確認の訴え(3条4項)、c不作為の違法確認の訴え(3条5項)という古典的な形態のほか、d義務付けの訴え(3条6項)、e差止めの訴え(3条7項)――という改正で付け加えられた新しい形態があります。

b無効等確認の訴えは、処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟のことです。行政作用法の分野で、行政行為に重大かつ明白な違法が認められ、行政行為が無効になる場合を勉強しましたが、裁判で行政行為の無効を確かめるのが、無効等確認の訴えです。

c不作為の違法確認の訴えは、行政不服申立てのように申請に対する不作為が対象で、返答があった場合にはこの訴訟の対象とはなりません。ただ、不作為が違法であるか否かを確認するだけのものです。

   一方、不作為に対して作為を命じるのはd義務付けの訴えになります。これは処分や裁決をすべき旨を命じることを求める訴えです。義務付け判決は、申請に対する不作為に限らず、それ以外の不作為に対しても提起することができます。

また、e差止めの訴えは、一定の処分または裁決をすべきでないにも関わらず、これがなされようとしている場合に、行政庁に対してその処分または裁決をしてはならない旨を命じることを求めるものです。

  続いて②の当事者訴訟です。これは、当事者の法律関係を確認し、または形成する処分または裁決に関する訴訟と定義されます(4条)。抗告訴訟との決定的な違いは、先ほども説明したとおり、公権力の行使について争うか、自己の公法上の法律関係について争うかという点です。

当事者訴訟には、a形式的当事者訴訟b実質的当事者訴訟――があります。

a形式的当事者訴訟とは、行政庁の処分または効力を争うものでありながら、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものと定義づけられます。つまり、法律により形式的には当事者訴訟の形をとりますが、その実質は抗告訴訟であるもののことです。このような形式があるのは、実質は抗告訴訟であり、行政庁の処分などを争うものであっても、当事者間で争わせた方が妥当な場合があるからです。

例えば、土地収用法133条2項で定められている補償額についての訴えでは、補償額を起業者と被収用者の間で争わせることになります。この例は、補償額を争うものである限り処分の効力に影響がないし、補償額とは売買における代金に相当するものなので、その適切な金額は当事者である起業者と被収用者との間で争わせた方がいいからです。

  以上に対し、本来の当事者訴訟と言えるのが、b実質的当事者訴訟です。これは、まさに当事者の公法上の法律関係に関する訴訟のことで、例えば、公務員の地位確認訴訟、公法上の金銭債権の支払い請求訴訟、損失補償の請求訴訟がこれに当たります。
 

2.客観訴訟

  客観訴訟とは行政活動の適法性の確保と客観的な法秩序の維持とを目的とする訴訟です
客観訴訟には

①民衆訴訟

②機関訴訟――があります。

  ①の民衆訴訟は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益に関わらない資格で提起するもの(5条)のことで、a住民訴訟、b選挙訴訟、c当選訴訟――がその例になります。

民衆訴訟は、原告適格が広く認められているので、法律だけでなく憲法に反する国家行為の是正を求めるのに役立ち、実際、憲法の判例の中には民衆訴訟の中で下されたものが数多くあります。

  一方、②の機関訴訟とは国または公共団体の機関相互間における、権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟と定義づけられます(6条)。
例えば、重要な財産の処分には、議会の議決が必要との条例があるとして、今回の処分がそれに当たるか、それとも首長の判断だけでできるかの争いが起きることなどが挙げられます。この時にどちらが適切かを決するためには機関訴訟の判断を仰ぐことになります。このほか、国と地方公共団体の権限の行使についての争いとして、代執行訴訟があります。

  このような行政機関内部における紛争は、自立権の問題として本来は行政庁自らが決すべきものとも言えます。しかし、両者が争い、決着がつかない場合には、公平な第三者の判断を求めることが適切なことがあるので、法律上、裁判所への出訴が可能とされたものです。

行政法134-2

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