第132回 行政不服審査法~不服申立ての要件と審理手続き

  行政不服審査法2回目の今回は、①不服申立ての要件と②不服申立ての審理手続き――です。

行政書士講座

Ⅰ.不服申立ての要件

  行政処分や不作為のついての不服申立ての要件は次の5つです。

①不服申立ての対象となる処分・不作為が存在すること

②不服申立ての方式に従うこと

③不服申立適格(当事者能力・当事者適格)を有すること

④不服申立期間内であること

⑤権限ある不服申立庁になされること
 

1.対象となる処分の存在

  ①の対象となる処分の存在については、他の法律または行政不服審査法で適用除外に当たるとされていないことが必要です。このため、処分されそうだから、差し止めてもらいたいというような不服申立ては受け付けてもらえません。

  このほか適用除外に当たるものが、行政不服審査法4条1項但し書に1~11号までに定められているもので、次の3つのグループに分けることができます。

a当該処分が、通常の行政庁と性格を異にする機関において独自の手続きまたは慎重な手続きで行われたものであるために、不服申立てを認めることが不適当であり、仮に不服申立てを認めても結局は同じ結果になると予想されるもの(1~4号)

b各法律により、審査法におけるものよりも慎重な手続きによることとされるもの(5~7号)

c処分の性質上、処分庁の高度の専門技術的・政策的な判断に基づく処分であるために、本法による不服申立てを求めるのが適当でないもの(8~11号)

  ただし、適用除外事項でも、その処分の性質に応じて特別の不服申立てが認められるべき場合は、別に法律で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることは可能です(4条2項)。

  なお、不作為については、すでにお話ししたように申請を経ない場合には不服申立てはできません。

 

2.不服申立ての方式

  次に②不服申立ての方式に関する要件として、書面(不服申立書)を提出して行う書面提出主義を採用しています(9条1項)。
この趣旨は、不服を書面に記させることで、論点を明確にしたり、手続きを慎重にしたりすることができるからです。不服申立書の提出は、異議申立ての場合を除き、正副2通の提出が必要です。異議申立ては、処分庁自らが審理するので1通で足ります。また、提出は通常郵送で行うことができます。

なお、判例では、提出されたある書面が行政上の不服申立ての趣旨があるのか、単なる陳述書(不服をまとめて述べただけのもの)なのかが明らかでない場合は、当事者の意思を解釈して決めるべきで、書面で申立てられた事項の内容に関わるものではないとされています。
 

3.不服申立適格

  ところで、行政処分や不作為について不服のある人は誰でも、不服申立てを行えるのでしょうか? 
主観的要件として、③では、不服申立てをできる資格についての要件を求めています。不服申立ての制度がおよそできるかどうかという一般的な資格(当事者能力)を、民事訴訟、行政事件訴訟と同じく、

a自然人

b法人

c代表者の定めがある法人格がない社団――に認めています(10条)。

  さらに、不服を申立てるには、処分や不作為ごとに当事者として争訟を追行することができる、当事者適格も認められる必要があります。当事者適格を認められる者とは、単に不服があるというだけではなく、違法または不当な行政処分によって、直接に自己の権利または利益を侵害された者のことです。

ここで、不服申立適格に関する判例を一つ紹介します。

☆主婦連ジュース訴訟(最判昭53.3.14)
景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、同法の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益であって、単に一般消費者であるだけでは、景表法10条6項による不服申立てをする法律上の利益があるとはいえない。
 

4.不服申立期間

  次に客観的要件である④不服申立期間についてお話しします。行政不服審査法では、行政を巡る法律関係を早期に安定させるために、不服申立てができる期間を定めています。
処分についての不服申立ては原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければなりません。これを主観的不服申立期間と言います。

  また、審査請求を経たうえで行う再審査請求や、異議申立てを経たうえで行う審査請求については、裁決または決定のあったことを知った日の翌日から起算して30日以内にしなければなりません。

ただし、天災などのやむを得ない事由があるときは、期間経過後でも不服申立てを行えます。

処分があったことを知らない場合は、処分があった日の翌日から起算して1年以内なら提起できます。これは客観的不服申立期間と言います。

ただし、正当な理由があるときは1年経過後でも不服申立てできます。

  なお、以上の期間制限は、処分に対する不服申立てに対するものです。不作為に対する不服申立ては、不作為が継続している限りいつでも不服申立てすることが可能です。

行政法132-1

  補足として、行政書士試験対策として、行政不服審査法と行政事件争訟法の提起できる期間の違いを比較して、しっかり把握しておきたいと思うので、下表にまとめます。行政事件訴訟法を学んだあとでも構いませんので、しっかり覚えておいてください。

行政法132-2

5.不服申立庁

  不服申立てを受け付ける行政庁は、審査請求か異議申立てかにより異なります。異議申立てなら、処分庁または不作為庁に対して申立てます(6・7条)。

  一方、審査請求は、処分庁または不作為庁以外、具体的には、原則として直近上級庁です。上級行政庁とは、当該行政事務に関して処分を指揮監督する権限のある行政庁のことで、直近とは、二重三重の上級行政庁がある場合、処分行政庁にいちばん近い上級行政庁のことです。
審査請求を受け付ける行政庁についての例外が、法律または条令に定めがある場合です。上級行政庁がない場合も適用します。

  なお、再審査請求ですが、これはもともと法律または条令に根拠がなければ請求できません。そこで、受け付ける行政庁も法律または条令に定められていると言えます。行政不服審査法にも、処分権限の委任があった場合に認められる再審査請求について、審査を受ける行政庁を定めています(8条2項、3項)。

 

Ⅱ.不服申立ての審理手続き 

  行政不服申立てをした後は、審査が開始されます。すでにお話しした審査請求書の提出を受けた行政庁は、要件審理に入ります。要件に不備があれば補正命令を出すか、却下という扱いをします。

  要件に不備がなかったり、必要な補正が行われたら、不服に理由があるかについての本案の審理に入ります。審理の原則は、書面審理主義が採られ、当事者の意見陳述や証拠調べは書面で行われます(25条1項)。
申立人が口頭で意見を述べる機会が保障されるのは、審理請求人または参加人の申立てがあったときに限られます。行政事件訴訟では審理は口頭で行われることが原則であるのとの違いがここにもあります。
 

1.書面審理主義

  口頭による事実の主張や証拠の提出は、時間がかかるし、記録の手間も必要です。供述の聞き違いなどがあるかもしれません。そこで、行政不服申立ては、書面審理主義が採用されています。書面による資料は確実で安定しているし、審理が簡易かつ迅速に行えるというのが、その理由です。

  しかし、書面から得られる情報は、間接的な印象で真相の把握には十分でなかったり、真実が正確に書面に記載されていない場合もあります。また、疑問がある場合にその場で質問したり、発言者に誤解があるときにアドバイスするなどの臨機応変な対応ができません。

そこで、書面審理による欠点を補うために、審査請求人または参加人には口頭で意見を述べる機会が与えられています(25条1項但し書、48条、52条2項、56条)。

 

2.職権主義

  また、行政不服申立ては、行政の自己統制の一環であるので、審理は職権主義が採られています。司法審理に比べ手続きの簡易迅速化が強く要求されるのも理由の一つです。

  職権主義の内容は次の4つです。

①適当と認める者に参考人として知っている事実を陳述させ、また、鑑定を求めることができる(27条、48条、52条2項、56条)

②書類その他の物件の所持人に対し、提出を求め、それを留め置くこともできる(28条、48条、52条2項、56条)

③必要な場所につき検証をすることができる(29条1項、48条、52条2項、56条)

④不服申立人または参考人を審問することができる(30条、48条、52条2項、56条)

  つまり、審査庁が判断に必要と考えられる資料を自分の判断で集めることができるわけです。この結果、迅速に必要な資料を収集し、審理の効率を高めて審査そのものを迅速に行うことができるのです。

  審理の資料には、証拠のほかに事実も含まれます。
判例では、事実の主張についても職権探知=不服申立人が主張しない事実についても職権で取り上げることが認められるとしています。後の行政事件訴訟法で取り上げますが、行政事件訴訟では職権証拠調べは認められるものの職権探知は認められていないので、違いとして覚えておきましょう。

  さらに、審査に当たり、審査庁は処分庁に弁明書の提出を求めることができます(22条)。不服申立てがあった場合、申立書に不服の内容が書かれているはずですが、この内容は不服申立人にとって都合の良いことばかり述べられていないとも限りません。これでは、処分の当不当、適法違法の判断が正確にできませんので、反対の意見、つまり処分庁の弁明を参考にして、十分な審理を行うためのものです。

  これに対して審査請求人には、弁明書に対する反論書の提出が認められています(23条)。不服申立人に、弁明書に対するさらなる不服を述べさせる機会が必要だからです。一般的に紛争が起きた場合、相手の出方を見て後から対応を決めた方が有利ということがあります。この場合でいえば、不服申立てに対して弁明書を提出する処分庁の方が言いたいことが言えて有利に審理が進んでしまうおそれがあるのです。それでは、不公平なので、不服申立人に反論書の提出を認めているのです。

  なお、裁決に至るまでどのくらいの期間がかけられるかですが、一般法で定められているわけではなく個別的な定めしかありません。
例えば、自作農創設特別措置法には20日との定めがあります。しかも、この定めも訓示規定にすぎないので、期間経過後になされた裁決であっても効力が認められるとの判例があります。

  審査請求における審理の進行を下図にまとめますので、確認してください。

行政法132-3

行政法132-4

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