第131回 行政不服審査法~行政不服申立ての目的と種類

  今回からは、行政救済法の一つ行政不服審査法について勉強していきます。

行政不服審査法の1回目の今回は、行政不服審査法の概要について①目的、②種類、③異議申立てと審査請求の関係――を解説します。

  行政不服申立てとは、行政庁の処分または不作為に関する私人の不服の申立てに対し、行政庁が審査し、解決するための制度をいい、それについてのルールが行政不服審査法です。

  なお、行政不服申立てと行政事件訴訟では、共通する制度があります。勉強するに当たっては、できる限りサポートしますので、共通点と相違点を意識しながら勉強していってください。

  まず、行政不服申立てのメリットは主に3つです。

書面審理なので簡易迅速な救済が得られる。

②行政処分が違法か否かのみならず、行政裁量の行使が不当ではないかについても審理できる
 (裁判所では、適法・違法の審査のみ)。

③行政機関の専門的知識を活用することができる。

  一方、デメリットも3つ上げてみましょう。

①行政側が審理・裁断を行うため、中立性が損なわれる可能性がある。

②簡易迅速な救済であるため、慎重さの欠如につながる可能性がある。

③裁判のように偽証すれば偽証罪による制裁がされるというような供述の真実性に対する担保がない。

 

Ⅰ.目的

  次に、行政不服審査法の目的は第1条第1項に規定されています。

第1条(この法律の趣旨)
1 この法律は、行政庁の違法または不当な処分その他の公権力の行使に当たる行為※1に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による※2国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保すること※3を目的とする。

  まず、※1を見てください。
行政不服申立ての対象は、違法な行政活動だけでなく、不当な行政活動も含まれます。これは、行政活動をする権限がある行政庁自身が審査の主体であることから導かれるものです。司法裁判所は、法を扱うことしかできないので行政裁量に関する部分の審査についてはその権限に含まれません。つまり、司法裁判所は違法な行政活動に対する是正しか行えませんが、行政庁なら不当な行政活動の是正も可能なところに注目してください。

  次に、対象になる行政活動は、処分その他の公権力の行使に当たる行為です。処分とは、行政行為とほぼ同義です。その他の公権力の行使に当たる行為とは、権力的な行為、つまり、一方的に国民の権利義務を変動させたり、重大な影響を及ぼしたりする行為です。
例えば、強制的な行政調査や行政上の強制手段を思い浮かべてください。

  結局、行政不服申立ての対象は、国民に及ぶ不利益が大きい公権力の行使ということになります。

なお、第2条では、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するものとされています。例として、人の収容の場合、出入国管理及び難民認定法52条5項の不法入国者を強制退去させる前に収容する場合、物の留置の場合、関税法86条1項の旅客等の携帯品の留置――が挙げられます。

  次に※2の迅速な手続についてですが、これは特に行政事件訴訟と違う点です。行政事件訴訟によるよりも、簡単な手続きで素早く、柔軟な処理が行えます。また、不当な行政行為も不服申立ての対象となるのですから、行政事件訴訟によるよりも広く国民の救済に役立つとも言えます。

  以上のことから、行政不服申立ては行政事件訴訟より勝るのかと言えば、そうとも言えません。判断の公平さでは、行政事件訴訟に軍配が上がります。

  そこで、行政争訟の制度は、行政不服申立てと行政事件訴訟の二本立てになっています。

行政不服申立ての結果、下された裁決が公平さを欠く、誤りであると考えた国民には、中立な機関による慎重な審理が行われることを期待して行政事件訴訟を起こすことが可能です。

  つまり、行政不服申立てと行政事件訴訟とは、どちらにもメリット・デメリットあり、甲乙つけられないので、どちらを選択するかは国民の自由である(両方でもよい)という、自由選択主義が採られています。

行政法131-1

  最後に※3は行政不服申立制度の目的です。国民の権利利益の救済にあるというだけでなく、行政の適正な運営を確保することも目的に含まれます。

 

Ⅱ.種類

  行政不服申立てには、

①異議申立て

②審査請求

③再審査請求――の3種類があります。

  ①の異議申立てとは、行政庁の処分または不作為につき、当該処分庁または不作為庁に対して行う不服申立てを指します。

各省大臣の処分または不作為に対して各省大臣に不服申立てをするとする場合を、具体例として見てみましょう。
経済産業大臣に対して原子炉設置許可申請の認可申請が不許可になった点について不服があるとか、許可する・しないの応答がない場合に、経済産業大臣あてに異議申立てをする――などが、異議申し立てです。

  一方、②の審査請求は、行政の処分庁や不作為庁以外の行政庁に対して行う不服申立てです。処分庁など自身による不服の審査では、中立性の問題がありますから、不服申立てをそれ以外の機関に託すものです。

なお、それ以外の機関と言えば、上級庁・監督庁が思い浮かびますが、実際には第三者的立場にある行政庁に対して行う場合もあります。

  ③の再審査請求とは、行政庁の処分について審査請求の裁決を経たのち、さらにこの裁決に対して不服がある場合に行う審査請求のことで、再審査請求は次の2つの場合にのみ、行うことができます。

a法律等に定めがあるとき(8条1項1号)

b原権限庁が権限を委任したとき(8条1項2号)

  aの法律等に定めがあるときとは、法律や条例に再審査請求をすることができる旨の定めがあるときです。審査請求の裁決になお不服があれば、重ねて行政庁の不服申立てをするよりも、裁判所に救済を求める方が適切との考えからです。

  bの原権限庁が権限を委任したときとは、審査請求をすることができる処分について、その処分をする権限を有する行政庁(原権限庁)が、権限を他に委任した場合に、委任を受けた行政庁がその委任に基づいてした処分について、原権限庁が審査庁として裁決をする場合です。

この場合、原権限庁が自ら当該処分をしたものとし、審査請求をする審査庁に対して再審査請求をします。また、再審査請求ができる場合、原権限庁が権限を委任するとすると同様の問題が生じかねないので、本来であれば再審査請求をすることが可能である行政庁に再再審査請求することができます。

行政法131-2

Ⅲ.異議申立てと審査請求の関係

  異議申し立てに対して不服があるときに、さらに審査請求できる場合があります。法律に根拠がある場合に限られるのですが、審査請求の対象は原処分に対してです。つまり、法律に根拠がある場合には、異議申立てと審査請求の両方ができるということです。なんだか、混乱してきそうなので、異議申立てと審査請求の関係をここでもう一度まとめてみたいと思います。

  まず、原則としては、ある処分に対する不服申立ては、異議申し立てと審査請求のどちらか一方によるという相互独立主義が採られています。

  さらに、いずれを選択するかについては、①処分を対象とする場合と②不作為を対象とする場合――で異なります。

  ①の処分を対象とする場合は、審査請求をするのが原則です。これは、公平・中立性が重んじられているからです。なお、審査請求を担当するのは原則として直近の上級行政庁です(上図参照)。不服の対象になる処分について専門知識があり、審査は処分庁に対する監督にも当たるからです。

上級行政庁がない場合は、例外として異議申立てを行うことになっていますが、法律に審査請求のできる旨の定めがあるときは、当該法律・条令で定める行政庁に対して審査請求を行います。

  例外的に異議申立てによるべき場合は、

a上級行政庁がない場合(6条1号)

b処分庁が主任の大臣、宮内庁長官、外局もしくはこれに置かれる庁の場合(6条2号)

c法律で異議申立てによることができるとされている場合(6条3号)――です。

  bの主任の大臣、宮内庁長官は、処分庁の職務上の独立性を尊重したものです。また、外局には、公正取引委員会、国家公安委員会、中央労働委員会、文化庁、金融庁、国税庁――など多数の例がありますが、いずれも専門性が高く、その外局の判断を尊重することが望ましいと考えられます。

  cの法律で異議申立てができるとされている場合に当たるかどうかは、法律に定めがあるかないか――ということですからはっきりしています。ただし、原則として異議申立てについての決定を経てからでなければ、審査請求をすることはできません。これを異議申立前置主義と言います。これにも次の例外があります。

ア 処分庁が当該処分につき異議申立てをする旨を教示しなかったとき

イ 当該処分につき異議申立てをした日の翌日から起算して3カ月を経過しても、処分庁が決定しないとき

ウ その他異議申立てについての決定を経ないことにつき正当な理由があるとき

  一方、②の不作為についての不服申立ては、異議申立てと直近上級行政庁に対する審査請求のどちらを選択してもかまいわないという自由選択主義が採られています。不作為とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分またはその他の公権力の行使に当たる行為をすべきなのに、しないことです。

  不作為についての不服申立ては、事務処理の促進を目的とするので、不作為庁に対する異議申立ても合理的な救済方法であると考えられるからです。

例外は、不作為庁が主任の大臣、宮内庁長官、外局もしくはこれに置かれる庁の場合――です。
この場合は、処分庁の独立性を尊重し、異議申立てのみを行えることができることになっています。

行政法131-3

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