第129回 情報公開

  情報公開の制度は、行政手続法で定められたものではありませんが、適正な行政運営を支える点で、行政手続と目的が共通するものです。そこで、今日は、①情報公開法総説、②情報公開制度の内容――について解説します。

 

Ⅰ.情報公開法総説

  情報公開制度の背景には国民主権の原理があります。民主国家においては政府保有の情報は国民の共有財産と言えますから、政府にはこの情報を開示する義務があります。さらに、政府には主権者である国民から権力の行使を委託されたものとして、行政運営に関わる事項について説明する責任もあります。
つまり、情報の公開により国民は主権者として適切に行政に参加でき、かつ行政への監視を行えるわけです。

  ですから、行政手続は国民の権利利益の確保のためのものという自由主義的な色彩が濃いのに対し、情報公開は民主主義的な色彩が濃いと言えるでしょう。もちろん、行政手続にも意見公募手続のように民主的な意味合いがあるし、情報公開にも知る権利の確保といった面があるように、区別は絶対的なものではありません。

  そこで、情報公開と知る権利との関係をお話しします。

情報公開法の目的規定には、知る権利の確保という趣旨は取り込まれていません。しかし、実際は、条項を見ると、情報公開に当たっては理由を問わないこととされており、かつ、情報公開の主体は日本国民に限定されていません。

  情報公開の目的が、民主主義的な意味合いしかないとしたら、情報公開はその目的に合致する場合に限るとか、日本国民に限るとかの措置が取られるのが通常ですから、情報公開法は、知る権利の確保にも配慮したものであると言うことができるでしょう。

  なお、地方公共団体の情報公開条例には、知る権利をうたったものが存在します。

  一方、情報の管理に関わる個人情報保護法との関係も気になるところです。個人情報保護法は、コンピュータなどで、膨大な個人情報を容易に処理することができるようになった反面、個人情報の流出などの危険が増したことから、情報の処理と保護に関わるルールを定めたものです。

  情報公開法も個人情報保護法も、どちらも行政機関による情報管理の在り方に法的制約を加えるものです。このため、どちらの法律にも、情報が公開できる場合とできない場合の定めがあります。

しかし、情報公開法の目的が行政過程の透明化を図ると同時に国民に行政参加の手段を与えることであるのに対し、個人情報保護法の目的は個人に自己の利益を防御させることです。つまり、確保すべき利益の所在や狙いがそれぞれの法律で異なるのです。

そこで、個人情報保護法の対象となる情報は個人情報に限ることとし、情報公開法の対象となる情報は行政文書――とはっきり区別されています。

 

Ⅱ.情報公開制度の内容

  それでは、具体的に情報公開法の内容を見ていくことにしましょう。

1.情報公開制度の対象

  まず、情報公開法の対象となる機関はほぼすべての行政機関です。

また、対象となるのは行政文書です。行政文書とは、

①行政機関の職員が職務上作成または取得したもの

②組織的に用いるもの

③当該行政機関が保有しているもの――です。

3つとも備えてなければなりません。情報の公開そのものは重要であるとしても、公開する必要があまりなく、または弊害が大きな場合まで情報公開の対象とすることは無意味という観点から、情報公開の対象には制限があります。

例えば、職員の個人的な検討段階のメモや、自己の執務の便宜のために保有している正式文書の写しは、②の組織的に用いるものに該当しないので、情報公開の対象に含まれません。

その理由は、情報公開の対象は、権限がある行政庁としての意思がある程度固まった後のもので十分ですし、逆に行政過程で作成される文書まで情報公開の対象にすることは、かえって国民に混乱を生じさせたり、行政庁の負担を大きくしたりするおそれがあるからです。

  また、文書は③の行政機関が保有しているものに限られますから、請求時点で存在しない文書も情報公開の対象になりません。

  一方、①~③の定義によれば、決裁(責任ある立場の人の確認をとること)のための起案文書は行政文書として情報公開の対象となります。決裁と供覧(関係職員に見せること)という事務手続を経て、正式文書に至るわけではないのです。

このような文書を開始の対象とするメリットは、政策形成過程において建設的な意見を提出することを可能にする点と言えます。また、決裁・供覧など事案処理手続きを要しない文書でも、事実の報告にかかる文書などは、説明責任の観点から開示が必要と言えるでしょう。
 

2.情報公開の請求権者

  次に情報公開の請求権者ですが、これは何人でも可能です。外国人もできます。先ほども言いましたが、情報公開請求が実質的に知る権利の具体化である点の現れと言えます。
 

3.情報公開の開示できる情報の選択

  さらに、開示できる情報の選択についてのルールを見ていきます。

原則として、情報は公開しなければなりません。ただし、次のような不開示事由があります。

①個人情報

②法人等事業情報

③国・公共の安全等に関する情報

④審議検討情報

⑤事務事業情報

  ①の個人情報は、原則不開示ですが、例外として、本人からの開示請求、どの個人の情報かが識別できる情報を除いたもの――があります。

  ②の法人等事業情報は、原則として開示の対象ですが、事業者の正当な利益を害するおそれのある場合や、行政と非公開にするとの約束がある場合には不開示となります。ただし、公にすることが必要であると認められた場合に開示されることもあります。

  ③の国・公共の安全等に関わる情報とは、例えば国防に関する情報です。国防施設の位置や詳細などは、敵対する者に知られては安全確保ができなくなるからです。

  ④の審議検討情報は、検討中の情報にすぎませんから、決定でもなく変更の可能性も十分あり得ます。そのような情報が開示されると、その情報が決定されたと勘違いして先走って行動をする国民が出たり、先取りした情報で行動することで、特定の者にとって利益・不利益が発生したりすることが考えられます。また、情報を元に圧力や批判が集まって意見の交換、意思決定の中立性が損なわれるおそれも出てきます。
そこで、不開示事由に含まれます。

なお、審議検討情報を非公開とする条例の定めについて、判例で合憲とされた事例があります。非開示事由は、常に情報公開の権利と矛盾するのですが、特に審議検討情報は、公開の要求が強い一方、公開の弊害も大きいので、事件として争われることが多いと言えます。

  ⑤の事務事業情報は、事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては公開できないとするものです。
例えば、入札価格や警察がいつどこで交通取り締まりをするなどの情報を公開しては、そのものの意味自体がなくなってしまうからです。
 

4.開示の手続き

行政法129-1

  続いて開示の手続きですが、まず、

①開示請求書を行政機関の長に提出します。

  開示請求書には、請求の理由や目的を記入する必要はありません。これは公開の利益を考慮しないからと言えますが、このことは、行政処分や行政行為などの行政庁からの行政手続と情報公開制度の違いの一つです。このとき、開示請求書に不備がある場合には、補正させる必要がありますが、その場合、行政側はどう補正すべきかの情報を提供する義務を負います。

  行政請求書の提出を受け、行政庁は

②開示不開示の決定をします。

  決定は原則として30日以内に書面で通知することになっており、拒否の場合は理由提示が要求されます。なお、拒否とは、行政文書の存否に関する情報まで明らかにしない場合のことです。これは、文書が存在するかどうかを回答しただけで、特定の個人や公の利益を害する場合です。具体的には、次の6項目が定められています。

①特定の個人の病歴に関する情報

②先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報

③情報交換の存在を明らかにしない約束で他国等との間で交換された情報

④犯罪の内偵捜査に関する情報

⑤買い占めを招くなど国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある特定の物質に関する政策決定の検討状況の情報

⑥特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報
 

5.開示実施の方法

  情報公開の開示の方法は、情報の閲覧または写しの交付によります。この際、開示請求した者は実費に限り手数料を負担する必要があります。
 

6.情報公開に対する救済制度

  最後に、情報公開に対する救済制度を紹介します。なお、これからの部分は、行政救済法を学んだうえで勉強してもらってもかまいません。少し、進めて、行政救済を先に学んだ方がいいと感じた方は、本日のまとめにスキップしてください。

 情報公開に対する救済制度には、大きく

①開示拒否決定に対する救済

②開示決定に対する救済――があります。

  まず、①の開示拒否決定に対しては、行政不服申立てをすることができます。その裁決に当たっては、情報公開・個人情報保護審査会への諮問・答申が必要だという特徴があります。

これは、審査に当たって、第三者的な視点を導入して、審査の公平を図るためのものです。この諮問に対する答申には裁決への拘束力はありません。しかし、裁決権者は、答申を尊重すべきものとされるほか、答申の内容が公表されることで、恣意的な裁決を事実上防止できる仕組みになっています。

  また、諮問に対する答申に当たり、情報公開・個人情報保護審査会は、請求された文書の見分等調査ができるものとされています(インカメラ審理と言います)。

  さらに、行政事件訴訟で、不開示決定を争うこともできます。情報公開訴訟と呼ばれますが、これは拒否決定の取消訴訟のことです。不服申立ての前置は不要なので、直ちに提訴できます。

①の開示拒否決定はともかく、②の開示決定に対する救済は何のためのものなのかと疑問に思う方もいるかもしれません。これは、情報を開示されることで、不利益を負うおそれがある者を救済するためのものです。

  まず、開示・不開示の決定をしようとするときは、その情報が第三者のものである場合には、その者への意見提出手続が採られます。ここで、反対の意思表示がなされた場合、開示決定後、開示までにこの第三者に開示決定をしたことを通知することになっています。この通知を受けて、第三者は開示に先立ち、行政不服申立てや行政事件訴訟を起こすことができます。このような余裕を第三者に与えるため、開示決定の日と開示を実施する日との間には少なくとも2週間を置く必要があるとも規定されています。

行政法129-2

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