第126回 処分に関する行政手続

  前回は、行政手続法1条に規定されている、行政手続法の目的などを勉強しましたが、今日は、第2条3項の規定を見ていきましょう。①申請前の手続き、②標準処理期間、③申請後の手続き――と順に解説します。

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  行政行為の説明でも出てきましたが、許可、特許、認可を得るには、申請が必要です。申請にまつわる行政行為が問題になる場面では、国民は利益を与えてほしいことから言いたいことが言えない、行政主体としては、それをいいことに不公正な態度をとってしまう――ということがないとは言えません。

 そこで、行政手続法では、申請に対する処分についての規制を定めています。まず、申請とは何であるかをはっきりさせておきましょう。申請とは法令に基づき、自己に対する何らかの利益を付与する処分を求める行為のことです。つまり、私人が授益的行政行為をするよう行政側に求めることです。

このうち、当該行為に対して行政庁が諾成の応答をすべきこととされているものが、行政手続法の適用の対象になります。行政手続法2条3項には、申請の定義が定められています。

第2条(定義)
三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾成の応答をすべきこととされているものをいう。

  ここでいう許可、認可、免許は例示であり、自己に対して何らかの利益を付与する処分(承認、認定、決定、検査、登録等)も申請に含まれます。また、本条の定義に当てはまるものであれば、届出という名称であっても申請に当たります。

  一方、単なる請願や申入れは行政庁に応答義務がないので、申請には当たりません。その理由は、応答の必要性もあまりなく、国民に与える不利益も小さいからです。

 

Ⅰ.申請前の手続き

  申請前の手続きは5条に規定されています。

第5条(審査基準)
1 行政庁は、審査基準を定める※1ものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なもの※2としなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかねばならない※3

  この法律の立法趣旨は、申請の公正な処理を確保することの重要性にかんがみ、行政庁に対し、許認可等をするかどうかを判断するために必要とされている基準をできる限り具体的に定めておき、原則としてこれを公にしておくことを義務付けるものです。

  申請前に採るべき手続きとして、まず、申請の対象になる行政庁は※1申請に対する審査基準、つまり、許認可などをするかどうかを判断するために必要な基準を定める義務があり、※2その審査基準は、できるだけ具体的である必要があります。

  さらに定めた基準は、※3公にしておく必要があります。これらの義務は法的義務なので、行政庁がこの義務を果たさないことは違法と評価されます。すると、行政の義務違反によって不利益を受けた国民は、裁判所による救済を受けられる可能性が出てきます。

例えば、申請が却下された者が抗告訴訟で却下の処分を取消すことの根拠として、基準の設定がないとか、公表がなかったことを主張するという手段が採れるわけです。

  このように基準を定めることは行政の公正・透明性の確保に役立ちます。申請をする国民側からは、自分の申請の結果がどうなるかをある程度予測できるので、申請をするかしないか、さらにどの程度の準備をすればよいかが分かるようになり便利と言えます。

  また、合理的な基準を設定すれば、申請個々の判断に当たって、恣意的で不合理な判断をすることが防げます。裁判所が抗告訴訟などを行うに当たっても、判断基準が合理的であるかどうかの判断をする手がかりにもなります。

  行政手続法に定められているわけではありませんが、基準の変更に当たっても、行政庁は国民に一定の期間を設けて周知しなければなりません。その理由は、基準が知らない間に代わっていたいうことが日常茶飯事では、国民に混乱が生じるからです。

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Ⅱ.標準処理期間

  次に行政手続法6条は、申請に対する標準処理時間を行政庁に対して求めています。

第6条(標準処理期間)
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をなすまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努める※1とともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適用な方法により公にしておかなければならない※2

  第6条の立法趣旨は、申請の迅速かつ適正な処理を確保するとともに、申請者にも益となるべき期間を知らせるためです。ただし、これは※1努力義務ですから、設定がないことが違法になるわけではありません。その理由は、案件ごとに許可・特許を与えてよいかなど意思決定に必要な時間が大きく違ってきて、標準処理期間の設定が難しい場合があるからです。

  しかし、※2標準処理期間を設定した場合は、行政庁に公にする法的義務が発生します。せっかく処理期間を定めても公表しないというのでは、標準処理期間を定めた意味がなくなるからです。

  なお、標準処理期間は、あくまで「標準」のものですから、適法な申請がなされた場合の処理に必要な期間が定められています。

行政法126-1

Ⅲ.申請後の手続き

行政法126-2

  申請を受けた後には、その手続きにおいて行政庁は、行政手続法7条に定められた義務を負います。

第7条(申請に対する審査、応答)
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始※1しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請による求められた許認可等を拒否しなければならない※2

  7条の立法趣旨は、行政運営の透明性の向上と迅速で公正な対応を図ること、及び国民の権利利益の保護を目的としています。

  申請を受けた行政庁は、手続きにおいて※1申請が到達したら、遅滞なく審査を開始し、応答しなければなりません。応答するとは、申請に正当な理由があった場合は許可し、理由がなかったり、不備だった場合には私人を不安定な状況におかないようできるだけ早く不許可とすることです。

  なお、形式不備の申請に対しては、速やかに申請者に補正を求めるか、申請を拒否するか、いずれかの手続きを採る必要があります。※2の部分です。ここで時間がかかってしまえば、標準処理時間が定められている意味がなくなってしまいます。

  また、行政手続法は、法律上、届出をする義務がある場合にも適法な届出が到達したときに届け出の義務が履行されてとする到達主義を規定しています。これは、不受理の扱いを排除する趣旨があると言えます。

  さらに、申請に対して拒否する処分を採る場合は、行政庁は原則として処分と同時にその理由を示す義務があり、これは8条に規定されています。

第8条(理由の提示)
1 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない※1。(以下略)
2 前本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない※2

  8条の立法趣旨は、行政庁の判断の慎重性と公正・妥当性を担保して恣意を抑制するとともに、拒否理由を申請者に明らかにすることによって透明性の向上を図り不服申立てに便宜を与えるものです。言うまでもなく、申請の拒否は申請者に対して不利益を与えるものですから、拒否は慎重に間違いないように行わなければなりません。

  理由を示すとなるといい加減な処分をすることはできませんし、理由を記す過程で、行政庁が処分の間違いに気づくことも期待できます。つまり、理由を示すことは、慎重な判断を実現するとともに、判断の公平さや妥当性を確保することができることに意味があります。また、申請者が不服申立てをするにも、理由を参考にすることで効果的な主張をすることが可能になります。

  なお、※2のように理由を示すに当たっては、処分を書面でする場合には、理由を示すのも書面によらなければならないと形式的な規制を定めているだけで、どの程度の理由を述べる必要があるかについては、明確に定められていません。

  しかし、仮に理由について、具体的な記載をしなくてよい――というのなら、不合理な理由によるいい加減な申請拒否を行政庁が行えることになってしまいますし、間違いに気づく可能性も低くなってしまいます。不服申立てに当たっても、申請拒否の理由があまり参考にならなくなってしまいます。

  そこで、判例では、理由付記の趣旨を満たす必要から、理由付記には、単に申請に対する拒否の根拠となる法律の根拠を示すだけでは足りず、どのような事実関係を認定したうえで、申請に対する拒否という判断に至ったかについて具体的に記載することが必要としています。

  そして、審査の中途には、行政庁には情報を提供する義務もあります(9条)。具体的には、審査の進行状況や、申請に対する処分がいつ頃なされるかという時期の見直しを示すことを努力する義務や、申請書の記載や添付書類に関する事項などの申請に必要な情報の提供に努める義務があります。その趣旨は、申請者は申請が通るかどうかの不安な地位に置かれるので、進行状況や時期の見通しが分かることで、申請者の不安を和らげることにあります。

  ただし、理由を記すことも情報を提供することも努力義務です。どちらも申請者の求めに応じてすれば足ります。また、公聴会の開催など、申請者以外の者の意見を聞く機会を設ける義務(10条)も努力義務です。 

  この公聴会などの開催に当たっては、申請者をはじめとした利害関係人、専門家などの意見を広く採りいれることが望ましいと言えます。特に許可不許可の与える影響が、国民の自由に対して大きく影響するとか、微妙で高度な認定が必要とされる場合は、行政庁の恣意、独断が疑われることがないよう慎重な手続きを採らなければなりません。

  また、申請に対する審査において、諮問機関への諮問という手続きが要求されることがあります。諮問とは、意見を参考にするという意味で、判断に専門的な知識を要する場合に、間違いがないかより慎重な判断をするために行われます。しかし、行政庁は、法的に諮問に対する答申(諮問機関が行政庁に対して具申した意見)に拘束されるわけではありません。あくまで、参考にするだけです。

  答申と行政庁の処分は独立したものであることから、諮問の過程や諮問に対する答申に瑕疵があっても、処分に影響しないのが原則です。しかし、申請に対する許可不許可の処分が公益に影響する程度が高かったり、判断に専門的な知識が求められる場合、行政庁が、答申をできる限り尊重することが必要と言えます。

  そこで、このような事情がある場合には、答申に瑕疵がある場合にも、これに基づいてなされた処分にも違法事由があると、判例は認めています。ここでいう瑕疵とは、諮問そのものが欠けるとか、答申が諮問の要求する趣旨に反すると認められる場合です。

行政法126-3

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