第125回 行政手続きと行政手続法

  適正な行政運営をしていくための手段には、行政手続と情報公開があります。まず、今日は①行政手続きの趣旨、②行政手続法の目的――を解説します。

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Ⅰ.行政手続きの趣旨

  行政手続という場合、広い意味では行政上の不服申立手続も含みますが、不服申立手続は行政救済法で扱うこととして、ここでは、行政の事前手続についてお話しします。

  事前手続は適正な行政運営を支えるものです。
例えば、利害関係人への聴聞手続、審議会への諮問や公聴会の開催、パブリックコメントの募集などをしたとしましょう。すると、どのような行政活動をするかの決定に当たり、利害関係人や専門家の様々な意見を反映させることができます。これが、行政活動の事前手続の狙いです。

  この結果、行政庁の独断を防止し、行政決定における民主的正当性が確保できると言えます。様々な意見を考慮することで、万が一の間違いや、細かな問題を見逃さない慎重さを確保し、適切な行政決定が期待できます。

  もちろん、違法な行政活動が行われることを避けることにもつながりますから、私人の権利侵害や望ましくない既成事実が発生することの予防にもつながります。

  また、行政手続は憲法でも要請されていることです。根拠として分かりやすいのは憲法31条の法定手続を要求した条文ですが、このほか、13条、41条などの法治主義の原理からも導くことができます。

  判例でも、31条の法定手続の保障が行政活動一般に及ぶことを肯定していますが、31条は刑事手続に関する定めです。行政活動には目的や国民に対する権利や制約の内容・程度などに応じて多種多様のものがありますので、すべての行政手続に刑事手続と同様の厳格なものを要求する必要はなく、無駄が多いばかりか、行政を円滑に遂行することが難しくなり、目的達成が危うくなることも考えられます。

  そこで、行政活動には必ずしも刑事手続同様の手続きを採る必要はなく、例えば、行政行為の相手に事前の告知、弁解、防禦(ぼうぎょ)の機会を与えるかは、複数の事情の総合判断で決するとした判例もあります。

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Ⅱ.行政手続法の目的

  行政決定に当たり、まずは、必要な手続きとはどういうものかを説明します。
行政手続を経る目的は、

①行政の透明性

②公正さ

③民主的正当性――を確保することですから、行政手続はこの目的が達成できるものでなくてはなりません。具体的な内容は行政手続法にありますが、実は法律が制定されるまでに判例によって形成されたものです。

  なお、行政手続法は地方公共団体の活動には適用がないのが原則です。

行政手続法の目的は1条1項に規定されているので、まず、1条1項を紹介します。

(目的等)

第1条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等※1を定める手続きに関し、共通する事項を定める※2ことによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り※3、もって国民の権利利益の保護に資することを目的※4とする。(1項)

  まず、※1を見てください。行政手続法の適用対象は、処分、つまり行政行為、行政指導、届出などに限られ、すべての行政活動ではありません。その理由は、※2にある行政手続法の性質から導かれます。つまり、行政手続法は、手続きに関し、共通する事項を定めるもの(行政法の一般法)です。しかし、行政活動には多種多様のものがあり、一口に一括りにできません。

  そこで、行政手続法の適用の対象は限られますが、権力的な行政活動の形式の代表である行政行為と、非権力的な行政形式の代表である行政指導は適用対象に含まれています。つまり、※4の国民の権利利益を守るためには十分、役割を果たせます。特に行政指導は、前回解説したように法律による規制が必要ないので、行政手続法で、これに規制をするという意義は大きいと言えます。

  次に、行政手続法の目的です。それは直接には、※3の公正の確保、透明性の向上を図ることです。
後で説明しますが、行政手続法は、

①不利益処分をしたり

②申請に対して、許可をする基準を定めること

③意見聴取手続を実施すること

④行政指導に当たって責任の所在を明らかにすること

⑤指針を定めること――を要求しています。これらの手続きを踏めば、不公平な対応であるとか、理由が分からない圧力が行政からかけられることを防ぎ、適正な内容の行政活動が行われることが期待できます。

  また、1条1項は丁寧に、その目指す目的である透明性の意味まで説明していて、意思決定に至る過程や内容が、国民にとって明らかであることと明記しています。これを端的に言えば、行政活動の不透明さをなくすことを行政手続法は目的としているということです。

  ある処分をある日突然された! 理由も分からない……というのでは、何かの間違いではないか? 不当な扱いをされたのではないか?と、国民が納得できないことになってしまいます。この点、理由も明確に述べ、その結論に至る過程では、間違いが起きないよう十分な検討をする手続きが踏まれているとなれば、多少の不利益も仕方がない、公共の福祉のためには仕方がない――と、国民の納得が得られることになります。

  しかも、手続きが踏まれ十分な説明があると、国民が納得できない場合には、不服申立てもしやすく、万が一行政側に間違いがあった場合には、権利救済を受けやすいとも言えます。

  以上のような結果、※4国民の権利利益の保護につながることになり、これが、行政手続法の大きな目的です。

  行政手続法は適用される行政活動の範囲が決まっているとお話ししましたが、行政手続法3、4条に規定され、適用範囲は次のように限定されています。

①処分(申請に対する処分および不利益処分)

②行政指導

③届出に関する手続と命令等を定める手続き

  ①処分とは、行政庁の処分、その他公権力の行為に当たる行為のことです。

  ③命令等とは、内閣または行政機関が定める次に挙げるものをいいます。

a法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む)または規則

b審査基準(5条)

c処分基準(12条)

d行政指導指針(36条)

  また、処分、行政指導の内容・性質等は多種多様であり、その中には一般的・共通的な手続き規定の対象とすることが適当でないものもあります。そこで、行政手続法3条1項に、16の適用除外事項を設けています。16は大きく分けて次の4つに分類されます。

①当該分野に慎重な手続きがあるもの(国会・議会により行われる処分、裁判所・裁判官の裁判により行われる処分――など)

②刑事手続等の一環として処理されるもの(検察官が行う処分――など)

③当該分野における相手方の権利・利益の性質上、特別の手続きをとるべきもの(刑務所等において収容の目的を達成するために行われている処分、外国人の出入国、帰化に関する処分――など)

④性質上行政手続法の適用になじまないもの(もっぱら人の学識技能に関する試験・検定の結果についての処分、審査請求、異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分――など)

  このほか、3条2項では、命令等に関する適用除外、4条1項では国の機関等に対する処分の適用除外を規定していますが、適用除外されるものとしてぜひとも覚えておきたいのが、3条3項で規定されている地方公共団体が行う手続きです。その理由は、地方公共団体が独自に条例などで必要な手続きを定めている例が多く、その定めを尊重するためです。

  しかし、46条では地方公共団体に、行政運営における公正の確保、透明性の向上を図るための必要な措置を講ずる義務を規定しているので、まったく規制をしていないわけではありません。

  このほか、地方公共団体が行う処分でも法律に基づくもの、例えば、生活扶助や健康保険に関する処分などは行政手続法が適用されます。この理由は、国が地方公共団体の行う処分について、きちんと目的を達成できるよう、国の判断による規制が必要だ…という関心を持っていると言えるでしょう。

 また、行政手続について、個別法に特別の定めがある場合は、当然それに従います。

行政法125-1

行政法125-2

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