第110回 行政行為の意義

  今回は、行政作用法のうち最も基本的でかつ試験頻出の行政行為について勉強します。

まず、最初に勉強するのは、①行政行為の定義です。そして、最後に②行政行為の分類をします。個々の行為については、次回から解説します。

 

Ⅰ.行政行為の定義

  行政行為とは一文で表すと、行政庁が、

①法律の定めるところにより、

②その一方的判断に基づいて、

③国民の

④権利義務その他の法的地位を

⑤具体的に決定する行為――ということができます。

でも、この分を読んだだけでは行政行為というものが見えてきませんね。そこで、細かく見ていくことにしますが、定義としては、文字面どおりに覚えてくださいね。

  定義のポイントの1つは、②のその一方的判断に基づくという点で、すなわち、相手の同意がなくても法律行為を変動できるということです。相手の同意がなくても法律関係を変動させることができるということは、当然、法律の根拠が必要です。

  また、次のポイントは、④の権利変動の原因となって法的な規制を伴うという点で、行政行為は、行政指導や即時強制(後に解説)とは異なると言えます。即時強制は国民に強度な不利益を与え、行政指導も事実上の不利益を与えることはありますが、国民に法的な義務を発生させるものではありません。

  ところで、判例を読んでいくとしばしば、「処分」や「行政処分」等の用語が使われることがあります。処分は、判例によると「国または地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」とされています。つまり、判例でいう処分は行政行為と言えることがお分かりかと思います。

 

Ⅱ.行政行為の分類

  ここでは、皆さんに行政行為にはどのようなものがあるかを把握してほしいと考えています。行政行為と一口に言っても、様々なものがあります。行政行為の分類の方法には、まず、国民に利益を与えるものかどうかという視点で、

①侵害的行政行為

②授益的行政行為――に分ける方法があります。

  例えば、国民に義務を発生させる下命(かめい)禁止行為は不利益を与える侵害的行為に、許可特許認可行為は国民に利益を与える授益行政行為に分類されます。個々の行為については次回から解説しますので、ここでは名前だけ憶えてください。

  国民に不利益を与える侵害的行政行為は、国民の同意がなければ行えないと考えるべきですし、権力の濫用を防ぐ必要も生じます。
これに対して、国民に利益を発生させる授益的行政行為はそれほど慎重にならなくても大丈夫です。

つまり、この分類は、このような判断をする目安と言えるのですが、侵害的か授益的かの分類は絶対的ではありません。

例えば、建築確認などで建築許可を与えた場合、建築主にとっては授益的であっても、その建築で日照や景観が害される人がいたとしたら、その人にとっては不利益が発生するわけです。ある人にとっては授益的な行政行為が、ある人にとっては侵害的であることがあり得るのです。

  ですから、この侵害的か授益的かで分ける分類は相対的なものであると言えます。

  次に一般的に言われている、行政庁の意思表示を要素とする分類をお話しします。この点に着目した分類が、

①法律行為的行政行為

②準法律行為的行政行為――に分ける方法です。

  ①の法律行為的行政行為は行政庁の意思に基づく効果が発生し、準法律行為的行政行為は効果が法定されているものです。

行政法110-1

  法律行為的行政行為には、①下命、②禁止、③許可、④免除、⑤特許、⑥認可、⑦代理――があり、
準法律行為的行政行為には、⑧確認、⑨公証、⑩通知、⑪受理――があります。

  この分類は、行政裁量のあり方に影響します。つまり、法律行為的行政行為では、意思に基づく効果が発生する以上、意思形成の自由に対応して行政裁量が認められるのに対して、準法律行為的行政行為では効果が法定されている以上、自由な効果の発生は認められず、すなわち行政裁量も認められないことになるわけです。

行政裁量が認められるほど、行政行為の適法性も認められやすく、逆に行政裁量がなければ違法と判断されやすいと言えます。

  また、法律行為的行政行為は、さらに

①命令的行為

②形成的行為――に分けることができます。

  命令的行為とは、義務を命じ、またこれを発する行為のことです。この結果、国民は自由が制限されたり、制限が解かれたりします。
例えば、下命は国民に義務を発生させ、免除はそれを解く行政行為です。禁止と許可も国民に義務を発生させたり、解いたりするものですから、命令的行為に当たります。

  一方、形成的行為とは、その行為が行われると法律上の効力が発生・変更・消滅するもの(法律関係が変動するもの)です。その結果、権利や能力、包括的な権利が設定されます。
この例としては特許が挙げられます。また、第三者の行為を補充して効力を完成させたり、第三者に代わって行う行為として許可や代理があります。

  つまり、形成的行為には、

①行政庁が主体的に行う行為

②他人の行為に加えて行政庁が行為をすることで行為が完成する――2つの場合があるということです。

  命令的行為と形成的行為の分類は、行為に瑕疵がある場合の処理に相違が生じます。
具体的には、命令的行為は、本来私人の自由に任されるところに制限を加えるものですので、みだりに行えません。このために、法の解釈の範囲内でしか裁量が認められず、行政による自由な判断に任せられる部分はありません。このことを覊束(きそく)裁量行為といいます。もちろん、裁判所による審査の対象となります。

また、命令的行為に反して私人がある行為を行っても、本来私人ができる行為であるので、その私人の行為の効力は無効となりません。

  一方、形成的行為は、行政行為によって初めて法律関係が設定されるもので、本来私人が持っている自由を制限するものではありません。ですから、行政庁に自由裁量が認められ、形成的行為に反する私人の行為は無効となります。

  ただし、命令的行為と形成的行為の区別もどのような場合にも当てはまるものではありませんし、覊束裁量行為か自由裁量行為かという区別も決定的にできるものではありません。

  判例では、自由裁量行為でも裁量の逸脱・濫用がある場合、司法審査の対象となると解釈しています。

行政法110-2

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