第108回 行政作用法の全体構造

  行政作用法は、行政と私人の法関係に関する法律の集まりです。

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  行政活動の適法・違法を決める基準がはっきりしていれば、行政の自主規制によって国民の権利が侵害されることを予防できるだけでなく、行政が国民の権利を違法に侵害したときに、国民が救済を求めることもできます。

  法律は、罪を犯した者に対して刑罰を科すことが目的ではなく、まず、事前に行ってはいけないことをはっきりさせて、法に反する行為を予防することが目的です。ですから、行政作用法は、国や公共団体が守るべきルールをはっきりさせている――と言えるのです。

また、行政法規は、人権の侵害がないようにするのは当然で、さらに、国民に必要な行政サービスの提供に便利になるようなものにしなければなりません。

★行政作用法の分類

  行政作用法は、さまざまな行政活動の内容に応じていくつかに分類されます。それぞれの詳細については、後の回で個々に解説していくことになりますが、ここではその名称とそれぞれの関係を覚えましょう。

行政法108-2

  行政活動を行う上では、まず、守るべき基準や方針を定めることが必要です。
そのために、行政は法を整備したり、計画を立てたりしますが、

①法を整備することを行政立法

②計画を立てることを行政計画――と呼びます。

  行政立法や行政計画によって基準設定が行われた場合に、これに従って必要な事業が執行されるわけですが、事業を執行した結果、国・公共団体と国民との間で、行政目的を達成するのに必要な、さらなる法律関係が発生したり、変更されたり、消滅したりします。

このうち、

③法律関係を一方的に決定するものを行政行為

④国民の同意の上で法律関係を決定するものを行政契約――と言います。

  行政行為は、行政活動の中で多用されるだけでなく、国民の権利義務に与える影響が大きいので、行政作用の中でも中心的なテーマです。

  一方、行政契約は、国民の同意が条件となる緩やかな方法です。このため、一般に国民の利益を害するおそれは小さいと言えますが、実際には行政活動の中で次第に多用されるようになってきて、権利侵害などの問題が生じています。

  また、行政活動の中には、法律の発生や変更が起きるわけではないけれど、

行政指導――と言って行政から国民に対して事実上の働きかけが行われることがあります。

例を挙げれば、高層マンションを建築する際に、国や地方公共団体から、近隣住民の承諾を求められたりすることです。

行政指導には、法律関係を変動させる効果はありませんが、これも多用されることでさまざまな弊害が生じるおそれがあります。そこで、行政指導は、行政手続法という法律で規制されています。

  また、適法に国民に義務が発生するのに、国民がこれを守らないこともあります。行政としても、迅速な公共の福祉の実現のためには、自発的な義務の履行を辛抱強く待てません。
そのような場合、やむを得ず強制的な手段によって、義務の履行を強制することがあります。

例えば、違法な建物が撤去されずに放置されたままになっていて、今にも倒壊しそうな場合、国民を危険にさらすことになりますので、国や公共団体は強制的に建物を撤去する必要があります。

このような建物の撤去などの義務を強制的に実現させる方法が⑥行政上の強制手段です。
強制手段がとられるのは、国民に義務が発生する場合のうち、特に強制をすることがやむを得ない場合のみです。この強制は私人間の強制とは異なり、裁判所の手を借りることなく行えることが特徴です。

  以上のように様々な行政活動が行われますが、それぞれの行政活動は一つひとつの行為でなりたっているわけではありません。行政立法や行政計画に基づき、行政行為が行われるという流れは、複数の行為でなりたっています。このような、行政行為の連なりを行政手続と言います。先ほど出てきた行政手続法は、この行政手続きの一般法で、行政作用の通則的な法律です。

行政法108-3

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