第104回 遺言による相続と遺言の効力

  前回までは、法定相続を中心にお話ししてきましたが、法定相続より優先される遺言があり、遺言の有効性や、法定相続人であるのに遺言により相続人の地位を外されていた場合など、様々な問題を含んでいます。

  今回は、①遺言制度の仕組み、②遺言の種類、③遺言の効力――をお話しします。

民法104-1

Ⅰ.遺言制度の仕組み

  遺言とは、自分が死んだあとの法律関係をあらかじめ定めるために行っておく一定の様式を整えた法律行為のことで、遺言者の死亡によって効力を発生します。

  相続には、

①法定相続

②遺言相続――がありますが、遺言相続は、被相続人の意思を尊重して、ある範囲で相続財産の承継を被相続人にコントロールさせることができる制度です。
 

1)遺言できる人

  遺言という法律行為の特徴の一つとして、未成年者などの制限能力者であっても、法定代理人や保佐人・補助人などの同意なしに遺言できることが挙げられます。理由は、そもそも後見制度は、制限能力者の保護のためなので、死亡した制限能力者は保護する必要がないからです。
ただし、遺言も意思表示が必要な法律行為と言えるので、意思能力が備わったと思われる満15歳にならないと遺言はできません。つまり、遺言能力の取得時期は満15歳です。

  また、成年被後見人が遺言をするには、事理弁識能力が一時回復していなければなりません。そのため、遺言には医師2人以上の立会いが必要とされています。ですから、常に事理弁識能力が著しく不十分と考えられる成年被後見人は、遺言できません。

  なお、遺言の効力の発生は遺言者が死亡したときですが、遺言能力の有無の判定は、遺言の意思表示をした時点です。
 

2)遺言には一定の要式が必要

  遺言は厳格な要式行為です。それは、効力発生後に本人の気持ちを確認することは、死亡しているので当然行えず、しっかり管理しておかないと、他の人が勝手に変えてしまう可能性もないとは言えないことです。

  一般的な遺言には、次のような決まりがあります。

①複数で同一書面による遺言はできない

②自筆での遺言以外は法定の欠格事由のない証人、または立会人が必要

③いったん作成した遺言書の変更を行うときは、該当する箇所に直接変更後の文言を記入して、その部分に訂正印を押し、さらに、変更箇所近くの余白などにどの部分にどのような訂正をしたかを付記して署名が必要

民法104-2

Ⅱ.遺言の種類

  上記のように厳格な要式が必要な遺言の方式は、大きく、普通方式と特別方式――に分けられ、

普通方式はさらに、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言――に、特別方式はさらに、④危急時遺言、⑤隔絶地遺言――に、④はさらに、⑥一般危急時遺言、⑦船舶遭難者遺言に、⑤はさらに、⑧伝染病隔離者遺言、⑨在船者遺言――に分けられます。

いろいろ並んで分かりにくいので、次からゆっくり確認しましょう。
 

1)普通方式遺言

  普通方式遺言は、

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言――の3つです。

  ①の自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名ともに自筆で書き、これに押印して成立する遺言です。最も簡単な方法と言え、証人の立会いの必要ないため、秘密にしておくには一番有効な方法です。ただし、遺言書の保管等に難点があります。

  ②公正証書遺言とは、遺言者が口述した遺言内容を公証人が代筆する遺言で、公証役場で保管してくれます。2人以上の承認と一緒に公証役場に出向くか、公証人に出張を依頼して、公証人の面前で遺言内容を口述します。紛失や改変のおそれがないという長所がありますが、煩雑で費用がかかることや秘密保持に難点があります。

  ③秘密証書遺言とは、遺言者が自己または第三者の作成した遺言書に署名、押印し、市販の封筒などに入れて封をして、公証人と2人以上の承認の面前に出すと、公証人が日付と遺言者の申述を封紙に記載して、遺言者、証人、公証人の全員で署名・押印して成立する遺言です。公証役場で保管してくれないので、相続開始までの保管方法が難点です。
 

2)特別方式遺言

  特別方式遺言は、実際に用いられることは稀です。下記の表にまとめましたので確認してください。

民法104-3

 

Ⅲ.遺言の効力

  遺言ができる事項は、

①遺贈

②相続分の指定

③推定相続人の廃除――などです。
 

1)遺贈

  遺贈とは、遺言により無償で財産を与えることで、遺言事項の中でも重要な事項と言えます。遺贈を受ける人を受遺者といい、胎児も受遺者になり得ることは前述しましね。

  遺贈には、

①受贈者に特定の財産を与える特定遺贈

②遺残の全部または一部の分数的割合を与える包括遺贈――があります。

  特定遺贈とは、受遺者に特定の財産を与えることで、受遺者には遺贈の承認や放棄の自由が認められています。相続の承認・放棄のような考慮期間といった時間的制限や家庭裁判所に申出る必要もなく、遺贈者の相続人や相続財産管理人などの遺贈義務者に対する意思表示でことが足ります。

  また、特定遺贈は、遺言の効力発生と同時に所有権が移転します。

  一方、包括遺贈とは、受遺者が遺産の全部または一部を包括的に承継する点で相続に似ています。民法でも、包括受遺者は相続人と同一の権利義務があると規定しています。
つまり、

①承認・放棄には相続の承認・放棄の規定が適用される

②遺産分割手続きに参加する権利がある――ということです。
 

2)遺言の効力が発生する時期

  遺言は何度も言いますが、遺言者の死亡の時から効力が発生します。つまり、「●●をAに与える」という内容の遺言があったなら、遺言者が死亡したと同時に●●の所有権はAさんに移転します。

  ただし、遺言の効力が発生した後に、さらに一定の手続きが必要な例外もあります。例えば、推定相続人の廃除や取消しといった内容の遺言には、家庭裁判所の審判が必要です。この場合の効力の発生は、家庭裁判所の審判がなされた時です。

  また、「福祉施設を設立して市に寄付する」と遺言した場合、市などの主務官庁の許可が必要です。この場合の効力の発生は、主務官庁の許可後に設立登記が行われた時です。

  では、遺言が無効となるときはどんな時でしょうか? 3つの場合があります。

①遺言の方式に不備がある

②遺言の内容が公序良俗に反する

③遺言当時、遺言者に行為の是非・善悪を判断する能力がない

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