第103回 財産分離と相続人の不存在

  今回は①相続財産と相続人の固有の財産が混合することを防ぐための財産分離制度、②相続人がいなかったときの財産の行方についてお話しします。

民法103-1

Ⅰ.財産分離制度

  相続による財産の承継は、被相続人の債権者のみならず、相続人の債権者にも大きな影響を与えます。

例えば、被相続人AさんからXさんに単独相続が発生したとしましょう。Aさんの債権者Bさんにとっては、債務者がAさんからXさんに代わったことで、債権回収リスクに変動が生じます。また、XさんがAさんのマイナス財産を承継したことで、Xさんが無資力になったとしたら、Xさんの債権者YさんにもXさんに対する債権回収を図れなくなる可能性も出てくることになります。

  相続人が限定承認や相続放棄をしない限り、相続財産と相続人の固有の財産が混合し、そのすべてが相続債権者・受遺者と相続人の債権者の責任財産となるのが原則です。でも、このことは、相続人の固有財産が債務超過に陥っている場合には、相続債権者、受遺者にとって不利益であり、相続財産が債務超過に陥っている場合には相続人の債権者にとって不利益です。

  そこで、相続債権者や相続人の債権者を保護するために、相続財産と相続人の固有財産を分けて管理・清算する手続きを財産分離と言い、しばしばこの手続きがとられます。財産分離は、相続債権者・受遺者または相続人の債権者の請求によって認められます。そして、財産分離を請求する主体が相続債権者・受遺者である場合を第1種財産分離、相続人の債権者である場合を第2種財産分離と2つに分けられています。

民法103-2

1)第1種財産分離

  第1種財産分離とは、相続債権者または受遺者の請求によって行われる財産分離のことです。相続債権者・受遺者は、相続開始のときから3カ月以内に、家庭裁判所に第1種財産分離の請求を行い、審判によって相続財産の管理に必要な処分を行い、相続財産の清算手続きが行われます。

  また、第1種財産分離では、不動産については登記をしないと第三者に対抗することができません。つまり、財産分離の審判が行われると相続人は相続財産を処分することができないのですが、不動産については処分の制限を公示しておかないと、相続債権者・受遺者は相続人からの譲受人に対して、分離の効果を主張することができなくなるのです。
 

2)第2種財産分離

  第2種財産分離とは、相続人の債権者の請求によって行われる財産分離です。

  相続人の債権者は、相続人が限定承認をすることができる考慮期間、または相続財産と相続人の固有財産が混合しない間は、家庭裁判所に第2種財産分離の請求が行えます。その手続き・効果については第1種財産分離と同様です。

 

Ⅱ.相続人がいなかったときの財産の行方

  ある人が死亡した場合、その人に身寄りがまったくなく、相続人がいない場合もないとは言えません。このような場合、相続はどうなるのでしょうか?

  民法では、生前被相続人と生計を同じくしていた内縁関係の妻などのように、被相続人と特別の関係があった人があった場合、その人を特別縁故者と呼び、その請求により家庭裁判所の相続財産分与の審判により、相続財産は特別縁故者に帰属するものと規定しています。

  では、この特別縁故者もいなかったら、どうなるのでしょう? この場合も、民法は無主の財産が生じることを嫌い、財産は最終的に国庫に帰属するものとしています。

民法103-3

1)相続人の不存在の手続き

  相続人がいないと思われるような場合でも、もしかしたら、被相続人に隠し子がいたりする場合や、兄弟姉妹が内縁関係で子を設けているかもしれません。そこで、被相続人の財産を前述の特別縁故者や国庫に帰属させる場合は、慎重に手続きを進めなければなりません。つまり、民法は相続人のいることが明らかでない場合の手続きについて厳格に規定しています。

  相続人不存在の場合、一方では相続人を捜索する必要があります。また、他方ではそれと並行して相続債権者・受遺者などへの弁済を行う手続きをすることも必要です。そこで、相続財産を財団法人化し、家庭裁判所の選任する相続財産管理人を法人の代表者とし、相続人の捜索や相続債権者等への弁済の手続きを行うという仕組みにしています。

具体的な流れは、

①相続開始
  ↓
②相続財産法人の設立
  ↓
③相続財産管理人の選任
  ↓
④待機期間
  ↓
⑤相続債権者・受遺者に対しての権利の申出をなすべき旨の公告
  ↓
⑥相続債権者・受遺者への弁済
  ↓
⑦相続人捜索の公告
  ↓
⑧相続人の失権
  ↓
⑨特別縁故者への財産分与
  ↓
⑩相続財産の国庫帰属
――となります。

  待機期間、権利申出催告期間、相続人捜索公告期間のいずれかに相続人が現れたときは、相続財産法人は存立しなかったものと見なされます。しかし、取引の安全を保護するために、効力は遡及しないものとし、法人の代表だった相続財産管理人の権限は相続人が相続の承認をした時から将来に向かって消滅し、相続人が出てくるまでに行った行為の効力は妨げられません。

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