第101回 相続の効力と相続人の相続分

  前回は、相続の①誰が、②何を、③どのように――の3つの要素のうちの、①誰が――についてお話ししましたが、今回は②の何を――と、③のどのように――について解説します。

民法101-1

 

Ⅰ.相続の一般的効力

  相続の②の要素、何を承継するかについて、民法では原則として、相続人は相続の開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものと定めています。

  財産に属したとあるので、非財産的な権利、例えば扶養請求権などは相続の対象とはなりません。また、被相続人の一身に専属したもの、例えば代理人の地位などは、当事者が死亡すると同時に主体性を失ってしまうことから、当然ですが、相続による継承とはなりません。

  次に相続の③の要素、どのように承継するかについてです。

まず、相続人が1人のみである場合を単独相続、2人以上いる場合を共同相続と言います。

単独相続である場合は1人の人が相続財産を包括的に単独で継承することで、何ら問題は発生しませんが、相続人が複数いる共同相続の場合は、少し複雑になってきます。

  共同相続の場合、具体的な個々の相続財産は、いったん、全部一括して相続人全員の共有の形をとります。その後、遺産分割の手続きを経て、最終的に各相続人の持分に応じて個々の財産が各人に帰属することになります。

民法101-2

1)権利・義務の承継の割合

  前項で各相続人の持分とお話ししましたが、持分とは各相続人の相続分の割合のことで、共同相続の場合、各相続人は持分に応じて被相続人の権利と義務を継承します。

  したがって可分債権の場合は、持分に応じて当然に分割されて承継されるのですが、不可分債権の場合は共同相続人全員に債権が帰属します。つまり、相続人は共同でも、一人ひとりでも総債権者(共同相続人全員)のために債務者に対して履行を請求できることになります。
 

2)相続分の意義

  共同相続の場合の各共同相続人の遺産を承継する割合である相続分は、被相続人の遺言による指定がない限り、法律の規定で決められています。これを法定相続分と言います。

  各共同相続人の法定相続分の割合は、同順位間では均等であるのが原則ですが、配偶者が同順位で血族相続人とともに相続人となる場合はちょっと複雑です。

  前回、相続のパターンを4つ紹介しました。①第1順位者と配偶者、②第2順位者と配偶者、③第3順位者と配偶者、④配偶者の単独相続――でしたね。

  まず、①の第1順位者と配偶者への相続の場合、子と配偶者の相続分は2分の1ずつです。配偶者がいない場合は、子が全部を相続します。子が複数いる場合は、2分の1(配偶者がいない場合は全部)を均等割りします。従来、非嫡出子は、嫡出子の持分の2分の1でしたが、平成25年12月に民法が改正され、子であれば、嫡出子・非嫡出子にかかわりなく均等の持分となりました。

  次に②の第2順位者と配偶者への相続の場合、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1の相続権を有します。

  ③の第3順位者と配偶者の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。異父母の兄弟姉妹は、通常の兄弟姉妹の相続分の2分の1とされます。

  なお、いずれの場合でも代襲相続が発生する場合、代襲相続人の相続分は、非代襲者の相続分と同じです。

 

相続

3)相続分の指定

  被相続人は、遺言で法定相続人と異なる相続分の割合を指定したり、第三者に指定の委託をしたりできます。この指定によって定まる相続分を指定相続分と言います。

  法定相続分や指定相続分をそのまま適用すると、共同相続人間に不公平が生じる場合があります。そういった不公平を調整するために決められているのが、

①特別受益者の相続分

②寄与分――です。

  ①の特別受益者とは、被相続人の生前に、生計の資本として贈与を受けたような人のことです。この人の相続分は、本来の相続分から受益分を控除して相続分が算定されます。

  ②の寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に寄与をした共同相続人がいるときは、その人の本来の相続分に一定の加算をして相続分を算定するもののことです。

  また、相続分は譲渡することもできます。この場合、譲受人は共同相続人の地位その物を取得することになります。

 

Ⅱ.遺産分割の方法

  遺産分割とは、共同相続の場合に遺産を構成する相続財産を分割して、各相続人の単独所有にすることです。

  相続財産は、いったん相続分に応じた遺産共有状態になることをお話ししましたが、民法は、遺産共有状態は過渡的な状態と見ていて、最終的には遺産分割手続きを経て、具体的に個々の財産が各相続人に分配されることで、最終的には相続による継承が終了することを予定しています。

  遺産分割は、遺産を構成する相続財産のすべてを一括して分割する手続きで、個々の財産の共有関係を解消する共有物分割ではありません。

1)遺産分割の効力

  遺産分割の効力は、相続開始のときに遡って生じます。つまり、各相続人が遺産分割によって取得した財産は、相続開始のときに相続人から直接承継したものとして取扱われるということです。通常の共有物分割は、分割時から将来に向かって持分移転の効力が生じますが、遺産分割の場合は効力が遡及します。
 

2)遺産分割と第三者

  遺産分割の遡及効を認めたことで、第三者との利害関係で調整が必要な場面が生じることがあります。民法では、遺産分割は第三者の権利を害することができないと規定し、遡及前に出現した第三者の保護を図っているのです。

  では、遡及後に出現した第三者はどうなるのでしょう? 

例えば、X、Yの2人の子が相続人であり、相続財産である建物Aを分割協議でXの単独所有に決まった後に、Yの持分2分の1の権利をZが譲り受けた場合です。Zの所有権は保護されるのでしょうか?

  遺産分割の遡及効により、Zは無権利者のYから譲受けたことになり、Aは登記なくしてZに対抗できるようにも考えられますが、判例では、遡及効と言って相続人がいったん取得した権利が分割時に新たな変更を生じたことと、実質的には異ならないので、分割後の第三者に権利取得を対抗するためには登記が必要としています。

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