第100回 相続の開始と法定相続人

  さて、民法の勉強もいよいよ大詰めです。今回から、相続法について、6回に分けて解説します。

相続法1回目の今回は、①相続の開始、②法定相続人――についてです。

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Ⅰ.相続の開始

  自然人が死亡すれば、その人が持っていた権利能力を当然失うので、その権利や義務は持ち主のいない権利義務となってしまいます。ところが民法では、それを認めず、生前に有していた権利義務は一定の範囲の親族に承継することとしました。

  この制度が相続制度で、亡くなった人を被相続人、一定の範囲の親族を相続人と呼んでいます。この相続の制度は、旧来より慣習的に行われていたものを是認して法制度として整えたものです。

  相続とは狭い意味では、人が死亡した場合にその死者と一定の親族関係にある人が財産上の法律関係を、当然にかつ包括的に承継することを指しますが、遺言による財産の処分を含めて、人が死亡した場合にその人の財産上の法律関係が他の人に移転することを指した広い意味の相続として用いられることもあります。遺言による財産の処分を遺贈と言われることは覚えていますか?

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1)相続の開始

  民法では、相続は死亡によって開始するとの規定がなされています。この規定は、死亡により相続が開始するという文字通りの意味のほか、「死亡以外に相続の開始原因はない」ということも意味します。ただし、失踪宣告による死亡と見なされる場合も含まれます。

  この規定は、相続開始は人が死亡したその瞬間で、被相続人の財産はその死亡と同時に相続人に移転し、権利や財産に持ち主が存在しない状態は、存在しないことになります。

つまり、相続人が被相続人の死亡を知らなかった場合でも、本人の知らないうちに権利義務を承継していることになります。

  また、この死亡と同時に権利義務が継承されることは、その時に生存している人だけが相続人になれるということであり、代襲相続などで重要なポイントとなりますので、しっかり覚えておいてください。

  相続開始の場所は、被相続人の住所です。被相続人の住所が相続に関する訴訟の管轄裁判所の基準となります。
 

2)相続回復請求権

  相続回復請求権とは、真正相続人と呼ばれる本当の相続人が、表見相続人と呼ばれる権利のないのに相続人のふりをしている人の侵害を排除して相続権の回復を請求する権利です。

  真正相続人は、表見相続人に対して個別の相続財産一つひとつに権利行使することもできますが、一括して相続財産の回復請求を行うことも可能です。

 

Ⅱ.法定相続人

  相続においては最低限3つを決める必要があります。その3つとは、

①誰が(相続人)

②何を(相続財産)

③どのように(相続分や遺産分割)――承継するかです。

ここでは、相続人について詳しく見ていくことにします。

  民法では、一定範囲内の親族を法定相続人として、当然に相続人となることが予定されている人と定めています。

具体的には、

①子

②直系尊属

③兄弟姉妹および配偶者――です。配偶者を除いた①~③の人を血族相続人と呼びます。

  血族相続人には、相続の順位が付けられていて、第1順位は子、第2順位は直系尊属、第3順位が兄弟姉妹――です。先順位の人が生存している場合は、後順位の人は相続人にはなれません。つまり、第1順位の子が1人でも生存している場合は、第2順位の直系尊属も第3順位の兄弟姉妹も相続人にはなれません。第3順位の兄弟姉妹が相続人となるためには、子と直系尊属がまったくいない場合に限られるということです。

  血族相続人以外の法定相続人である被相続人の配偶者は、常に相続人となります。つまり、血族相続人が存在しているときはその人と配偶者が相続人となり、血族相続人がいない場合は、配偶者のみが相続人となります。

  これらを総合すると、

①第1順位者と配偶者への相続

②第2順位者と配偶者への相続

③第3順位者と配偶者への相続

④配偶者の単独相続――の4パターンがあることになります。

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1)代襲相続

  代襲相続とは、相続人となるべき人が、相続開始時に死亡その他の事由で、相続権を失っている場合に、その人の直系卑属が、その人と同一順位で相続人となることです。

例えば、被相続人の唯一の子がすでに死亡している場合に、すぐに第2順位の直系尊属が相続人となるわけではなく、被相続人の孫に当たる、子の直系卑属がいれば、その子が第1順位の相続人として相続を代襲します。
 

2)相続欠格、廃除

  相続欠格とは、本来なら相続人となれるはずの人が、相続させるには一般人の法感情に反するような場合、法律上当然に、相続人の資格を失わせる制度です。

例えば、被相続人の子が被相続人を殺害した場合、この子は相続欠格者として、相続資格を失います。

  一方、相続の廃除とは、被相続人が推定相続人に相続させたくないとき、家庭裁判所に請求してその人の相続権を奪う制度です。この排除請求が認められるのは、推定相続人が被相続人に酷い虐待を行ったり、推定相続人に著しい非行があった場合など、一定の場合に限られます。

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