第99回 扶養と扶養義務

  親族編の最終回は、扶養と扶養義務です。扶養については扶養する人の順序や扶養の程度が規定されています。

今回は、扶養の仕組みを学ぶとともに、また、実務に役立つ豆情報も掲載します。

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民法99-1

  扶養とは、自分の資産や労力で、生活を維持できない人に対して援助を行う制度です。「生活を維持できない=生活保護」のように、まず社会保障制度としての公的扶助が思い浮かびますが、民法でいうところの扶助とは、東京で一人暮らしをしている大学生の息子への親からの仕送りのように、親族間の私的扶養を指します。

民法99-2

1)私的扶養と公的扶養の関係

  私的扶養と公的扶養の間には、公的扶養の補足性の原則、または親族扶養優先の原則――と呼ばれる原則があります。つまり、第一次的には私的扶養が行われるべきであり、公的扶養はこの私的扶養を補足するものとして機能しているということです。

  この原則について、私的扶養義務者が存在するにも関わらず、義務を果たさない場合に公的扶助を受けられるかが問題となります。(あるお笑いタレントが、一時期マスコミを賑わせていましたね…)

  扶養能力ある扶養義務者の存在は、生活保護法の保護の欠格事由になっているというのが実務の取扱いとなっていますので、某お笑いタレントさんでなくても、注意が必要です。
 

2)扶養の当事者と順序

  民法では扶養義務者を

①直系血族と兄弟姉妹

②直系血族と兄弟姉妹を除いた3親等内の親族間――の2つに分けて捉えています。

  ①の直系血族と兄弟姉妹は当然にお互いを扶養し合いますが、②のそれ以外の親族の場合は、特別の事情があるときに家庭裁判所の審判によって扶養義務が形成されると規定されています。

  同一の要扶養者に対して複数の扶養義務者が存在する場合の、扶養義務を負担する順序は画一的には規定されていません。

原則としては、当事者間の協議に委ねられていますが、協議が調わないときや協議ができないときに家庭裁判所の審判によるものとされています。扶養の程度や方法についても、第一次的には当事者の協議により、できない場合は家庭裁判所の審判です。

なお、こうした扶養の順位、程度、方法などが協議や審判でいったん決定されても、その後の事情で再び協議を行ったり家庭裁判所の審判を仰ぎ、変更することは可能です。

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3)扶養請求権

  扶養を請求する権利は、要扶養者の生活維持のための一身専属的な権利ですので、譲渡、質入れなどの処分はもちろん、相続や債権者代位権の対象にもなりません。また、扶養義務等にかかる定期金債権では、相手方の給与等の2分の1まで、それ以外では4分の1までを差押えることができます。なお、弁済期の到来で通常の金銭債権として処分等が可能になります。
 

4)生活保持義務と生活扶助義務

  扶養義務は、内容によって

①生活保持義務

②生活扶助義務――に分けることができます。

  生活保持義務とは、最後に残された一片の肉まで分け与えることによって、自己と同程度の生活を相手方にも保障すべき義務と言われています。

  一方の生活扶助義務は、己の腹を満たして後に余るものを分かつという、自己の生活水準を維持できる範囲で相手方が最低限度の生活を営める程度の援助を行う義務です。

  また、扶養の方法には、大きく

①金銭扶養

②引取扶養――があります。

  ①金銭扶養は毎月金額を決めて支払われ、②引取扶養は、文字通り扶養義務者が被扶養者を引取って扶養することで、引取った人のほかに扶養義務者がいれば生活費の一部を分担します。
 

5)夫婦間の扶養

  夫婦間は、同居・協力・扶養義務、婚姻費用分担義務が存在していることは以前の回でお話ししたとおりで、これらの扶養義務は前項①の生活保持義務に当たります。

  夫婦が離婚すれば、相互の扶養義務は負わなくてもよいことになりますが、離婚後に妻のみ困窮する場合が少なくないため、この場合には財産分与に、扶養的意味合いを含めて額を決定することで調整が図られています。
 

6)親の子に対する扶養

  親の未成熟である子に対する扶養の場合、子を手元に置いている場合には①の生活保持義務を負うことで問題ありませんが、両親が離婚した場合や、婚外子の場合には、親権との関係で養育費の問題が発生します。親権者でない親が負担する子の養育費の性質も①の生活保持義務とするのが、最近の裁判の傾向です。

  養育費の額は、扶養義務者の年収、監護する親の年収、子の人数・年齢を中心に総合的に判断されますが、通常の生活水準では、幼い子が1人の場合に月額5万円前後が、相場となっているようです。
 

7)子の親に対する扶養

  高齢化社会の中で、子の老親に対する扶養も深刻な問題となっています。高齢者についての社会保障制度も徐々に整備されてきていますが、公的扶助は子の親族扶養を補足するものであることには変わりありません。

  子の親に対する扶養義務は、②の生活扶助義務であるとされていますが、扶養義務者が複数の場合、原則として各人が全部義務を負うものとされ、例え子の1人が専業主婦であったとしても、扶養義務は負わなくていい、ということにはなりません。

  扶養義務者が複数の場合、扶養料を支払い続けてきた人から他の義務者へ求償することも判例では認められています。扶養料については、過去の扶養料請求を認めた審判例も数多くあります。

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