第96回 親権と効力

 親権とは、子の利益のために未成年の子を監護教育したり、その財産の管理を内容とする親の権利義務の総称です。

 今回は、①親権制度について、②親権の効力と終了をお話します。

民法96-1

 

Ⅰ.親権制度について

 親権とは、子が成長するまで、子の利益見地から子を監護・保護・教育し、またこの財産を管理する父母の権利のことですが、当然、親権に復するのは未成年の子です。未成年であれば実子、養子を問いません。また、子が成年に達すれば親権は消滅します。なお、未成年でも、婚姻すれば成年に達したと見なされるので、親権に復する必要はなくなります。

1)誰が親権者となるのか

 親権者は、通常は実父母がなりますが、未成年者が養子縁組を行った場合は、実父母の親権が消滅し、養父母が親権者となります。転縁組がなされれば、最初の養父母の親権は消滅し、次の養父母が親権者となります。

 また、親権は通常父母が共同して行い、これを夫婦親権共同行使の原則と言います。父母が離婚したときや、子が非嫡出子の場合は、父母の一方の単独親権となりますが、子の利益に必要と家庭裁判所が認めた場合は、審判で親権者の変更が命じられる場合もあります。

 養子の親権者である養父母の両方とも死亡した場合の親権はどうなるのでしょう?

 この場合、実親の親権が復活するのではなく、後見が開始します。養父母双方と離縁したときは、死亡と違い実父母の親権が復活しますが、養父母一方が死亡したり、養父母の離婚によって単独親権となってから、単独親権者と離縁した場合には、実親の親権は復活せず、後見が開始します。

ここで、親権者になる人をまとめてみましょう。

①両親が婚姻している場合⇒父母が共同で親権者となり、共同で1個の親権を持ちます。

②親権者の一方が死亡した場合⇒残った者が単独で親権者となります。一方が親権を失った場合も同様です。

③親権者が離婚した場合⇒原則として父母いずれか一方が親権者となりますが、親権のうちの監護、養育を切離して、監護者を決めることも可能です。

④非嫡出子⇒母が親権者となります。ただし、認知した父がいる場合は、父母の合意で父を親権者とすることも可能です。

⑤養子⇒養親が親権者となります。

 また、親権が制限される場合は、次のとおりです。

①第三者が子に財産を贈与するに当たり、親権者にこの財産を管理させないよう指示した場合

②利益相反となる場合⇒家庭裁判所に申立て特別代理人の選任をしてもらい取引きを行います。数人の子の親権者となっている場合で、その子間の取引については、親権者は一人の代理人にしかなれず、他の子については特別代理人の選任が必要。ただし、親権者が子に財産を贈与するなど子の利益に反しない場合は特別代理人の選任は不要

2)子を巡る紛争

 父母が未成年の子を残して離婚する場合の親権の帰属について、もう少し詳しく解説することにします。

 父母が離婚すると父母のどちらか一方が親権を持つことになるのですが、話合いが付かない場合は、家庭裁判所に調停あるいは審判の申立てを行います。家庭裁判所では調査官による調査などを実施しながら子の福祉の観点から判断して解決を図ることになります。この解決で親権者に選ばれなかった親には面接交渉と呼ばれる、定期的に子と会ったり、文通などをする方法が認められるのが通常です。

 では、父母が離婚はしないものの、長期間別居しているような場合にも子の引渡しについて争われることもよくあります。以前は、人身保護法の手続等による民事訴訟として解決されることが多くありましたが、現在では、夫婦間の協力扶助に関する処分、子の監護に関する処分として、家庭裁判所の審判手続きのよることが増えてきています。

 少し余談になりますが、最近の傾向として、親による子の虐待が社会問題ともなっています。従来では児童福祉法で対応していましたが、それでは不十分として平成12年「児童虐待防止法」が制定されて、虐待のおそれがある場合には、都道府県知事に住居などへの立入り検査の権限を与えたり、児童相談所長などに保護した児童に対する親の面会制限の権限を与えたりの権限も与えられています。

民法96-2

 

Ⅱ.親権の効力と終了

 親権の内容は大きく①子の身上に関する権利義務である身上監護権と②この財産に関する権利義務である財産管理権に分けることができます。

1)身上監護権

 身上監護権に含まれるのは、①居所指定権、②懲戒権、③職業許可権――です。

 居所指定権とは、親が監護教育の任務を果たすために、子がどこに住むかを指定できる権利です。ただし、この権利が実際に効果を発揮する場面はほとんどありません。

 懲戒権とは、親の子に対しての監護教育上必要な範囲での実力行使のことです。必要な範囲であれば、民事や刑事上の責任を問われることはありませんが、必要な範囲を超えれば、親権の濫用として、親権喪失原因になるとともに暴行罪の適用にもなります。

 職業許可権とは、親の子が職業を営むことについての許可権です。職業とは、他人に雇われることも含みます。

2)財産管理権

 財産管理権に含まれるのは、①狭義の財産管理権、②代表権、③同意権――です。

 狭義の財産管理権とは、事実上の財産管理から処分等の法律行為まで広く含みます。

 代表権は、財産管理の中で最も重要で、夫婦共同親権の原則から、この場合の代理は共同代理で行うべきことになり、単独名義で代理行為を行ったときは、無権代理に該当します。

 親権者の代理行為が子の利益と相反する場合はどうなるのでしょう。例えば、子の財産を親権者に売る行為などです。この場合、このために特別代理人の選定を家庭裁判所に請求しなければなりません。特別代理人の選定を行わないで自らが子の代理を行った場合は、無権代理行為として追認がない限り有効とはなりません。

3)親権の終了・停止

 親権が消滅するのは4つの場合、①死亡、②子が成年に達した、③親権喪失、④辞任――です。

 親権者はまたは子が死亡した場合、子が成年に達した場合、子が婚姻による成年擬制を受けた場合、子が他人の養子になった場合、離縁した場合の親権消滅は、当然ですね。

 親権者の親権行為が困難あるいは不適当になった場合はどうでしょう。この場合、家庭裁判所は、子や親族、後見人、検察官のなどの請求により親権喪失や停止の審判をすることができ、これにより親権が終了あるいは停止することがあります。この親権停止の審判は平成23年民法改正で新設された、できたてホヤホヤの制度です。なお、子の審判には、親権のうちの財産管理権だけを喪失させる管理権喪失の形態もあります。

 親権を行う父や母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権または管理権を辞任することが可能です。これによっても当然、親権は終了します。

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