第94回 嫡出子と非嫡出子

  私たちの生活で夫婦関係と並んで重要な関係が親子関係です。法律上の親子関係には①自然血族としての実親子関係と、②法定血族関係の養親子関係があります。そして実親子関係は、さらに父母が法律上の夫婦である嫡出親子関係と、法律上では夫婦でない場合の非嫡出親子関係に区別されます。

  今回は、①嫡出子とその認否、②認知と準正、③子の氏――についてお話しします。

民法94-1

 

Ⅰ.嫡出子とその認否

民法94-2

1)嫡出子と嫡出性の推定

  嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子のことです。父母が婚姻関係にあるか否かは、懐胎のときが基準で、その時に父母が婚姻していれば、たとえ子の出生の際に離婚していても、父母の両方と嫡出親子関係が生じます。

  しかし、実際には懐胎の時期や子の父親を厳密に立証することには困難を伴うことも少なくありません。そこで、民法は、婚姻成立の日から200日後、または婚姻解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したと推定し、さらに妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定するものとしています。

つまり、この2段階の推定により、婚姻成立の200日以降、婚姻の解消または取消しの日から300日以内に生まれた子は、母の夫の子であると推定されることになります。

  ただし、この推定は過去の経験的な通常の夫婦に基づいた推定なので、当然、当てはまらない場合も存在します。例えば、夫婦が2年以上事実上の離婚状態の場合などで、このような状況で出生した子は推定の及ばない子と呼ばれます。

  なお、離婚後300日以内の再婚相手との間の子の妊娠が明らかな場合は、再婚相手の子として出生届が受理されることも可能です。
 

2)嫡出否認の訴え

  前述の嫡出性の推定は非常に強い効力を持ちます。妻の産んだ子が自分の子ではないと主張したい夫は、とても厳格な要件が必要な、嫡出否認の訴えを家庭裁判所に提起して親子関係を争うことになります。

  夫が、嫡出否認の訴えの提起権を失えば、その子の実の父親がほかに存在しても、子は夫の嫡出子としての地位が法律上確定します。

  一方、嫡出子の推定を受けなければ、親子関係不存在確認訴訟で、いつでも争うことが可能です。
 

3)推定を受けない嫡出子

  推定を受けない嫡出子とは、婚姻成立後200日以内に生まれた子を指します。この場合は嫡出の推定を受けられませんが、婚姻に先だって内縁関係が存在することが多いので、非嫡出子となってしまうのは現状に一致しません。そこで、判例や戸籍事務の場面では、このような場合も嫡出子として扱っています。

 

Ⅱ.認知と準正

  非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女を父母として生まれた子です。非嫡出子は、相続の場面で、嫡出子に比べて相続分が2分の1になるなどの不利益な扱いが行われる場面があります。

民法94-3

1)認知

  婚姻関係にない男女間の子は、母との関係は当然に嫡出子としての親子関係が成立しますが、父とは嫡出子としての親子関係が生じるためには、認知という手続きが必要です。

  認知とは、非嫡出子について父との間に意思表示または裁判で子の出生まで遡って親子関係を発生させる制度です。
認知には2つの種類があり、

①父の意思表示でなされる認知が任意認知

②裁判によってなされる認知が強制認知――です。

  認知任意では、父が未成年者や成年後見人でも、親権者や後見人の同意がなくても、父の意思表示は身分上の法律行為として認められ、認知できます。子の承諾は原始的には不要ですが、子が成年の場合は子の意思を尊重して子の承諾も必要です。また、子が胎児であるときは、母の名誉を尊重して母の承諾が必要です。

  強制認知は、訴訟という手段で強制的に父子関係を確定する制度です。父が死亡した後でも3年以内なら、検察官を被告として訴訟を提起することが可能です。これを死後認知と言いますが、これらの認知訴訟も調停前置主義の適用を受けますので、まずは家庭裁判所での話合いが行われます。
 

2)父子関係の証明

  認知訴訟での最大の争点は、父子関係の証明です。戦前では、この証明として母親に他の男性との性交渉のなかったことまで証明する要求をした不貞の抗弁が認められていましたが、原告側に負担がかかりすぎるとの考えから、戦後はさまざまな事実を総合的に考慮して判断することになっています。特に現在では、遺伝子レベルでのDNA鑑定が取り入れられ、証明が確実になりました。
 

3)準正

  準正とは、非嫡出子について、父の認知や母との婚姻を要件として、嫡出子の地位を生じさせる制度です。準正による嫡出子を準正嫡出子と呼び、生来嫡出子と区別することもあります。

  準正による嫡出子は、父の認知と父母の婚姻との前後関係により

①婚姻準正

②認知準正――に分かれます。

  嫡出子の身分取得は、認知後に婚姻がなされる婚姻準正の場合は婚姻時です。婚姻後に認知がなされる認知準正の場合も、認知により効果が遡り、婚姻時が身分取得のときとなります。

 

Ⅲ.子の氏

  人の姓名は、社会生活においては、個人を特定する手段や、呼称として機能していますが、法律上ではどんな効果があるのでしょう?

民法94-4

1)氏の取得と変動

  親子同性の原則が適用されることから、嫡出子は父または母の氏を称し、非嫡出子は母の氏を称します。

  また、養子縁組を行った場合は、養子は養親の氏を称しますが、婚姻によってすでに氏が変更された人が養子になった場合は、養親の氏を名乗る必要はありません。

  両親の離婚により、父または母が氏を元の氏に戻し、子が父または母と氏を異にすることになった場合、子は、父母が婚姻中に限り届出によって父母の元の氏を称することができます。
 

2)氏と戸籍

  出生から死亡に至るまでの人の重要な身分関係の変動は戸籍に記載されます。戸籍制度は夫婦と親子で構成される家族単位で作成され、通常、その家族は同じ氏を称する人のみが入ることになります。これを同一戸籍同一氏の原則と言います。

  また、出生した子の名は命名により定まります。命名は子のために行う親権の一つですが、以前、親が子に悪魔という命名しようと届出を出した際に、命名権の濫用として、戸籍事務管掌者が届出受理を拒否した事件がありました。判例では、戸籍事務管掌者の届出拒否を認めました。

戸籍法は正当な事由があれば、家庭裁判所の許可で名の変更ができると規定していますが、名は氏に比べて社会的影響が少ないと言えるので、ここでいう正当な事由は氏の変更の事由に比べ、緩い内容になっています。

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