第92回 婚姻の成立と夫婦財産制

  親族関係の中でも、婚姻によって成立する夫婦は親子と並んで人々の生活の中心です。婚姻は両性の合意によって成立すると憲法24条に規定されていますが、細かい規定は民法で定められています。

今回は、①婚姻の要件、②婚姻の効力と夫婦財産制――についてお話しします。

民法92-1

 

Ⅰ.婚姻の要件

  婚姻の要件は大きく分けて

①積極的要件

②消極的要件――に分けることができます。

そして、積極的要件は、さらに

❶実質的要件

❷形式的要件――に分けることができます。

  ❶の実質的要件とは、婚姻の意思の合致です。婚姻の意思には、夫婦という実際の形を作ろうという実質的な意思と、戸籍の届け出をしようという形式的な意思があり、両方の意思が合致しなければなりません。

ですから、例えば、日本国籍を得たい外国人女性が、日本人男性と偽装結婚したような場合には、実質的意思が欠如しているので婚姻は無効となります。

  ❷の形式的要件は戸籍法上の届出、つまり婚姻届を出すことです。届出を行わないと、いくら夫婦として実際に一緒に生活を営んでいても、法律上の婚姻関係は不成立で、両者の関係は内縁関係にとどまります。

  また、②の婚姻の消極的要件とは、婚姻成立を拒む事由がないこと、つまり婚姻の障害となるものがないことです。婚姻の障害となるものは、次の5つです。

①婚姻年齢に達していない

②重婚である

③女子の再婚禁止期間である

④近親婚である

⑤未成年者の婚姻に対する父母の同意がない

  逆に、結婚成立の条件は、次のとおりです。

①男は18歳、女は16歳に達していること

②二重結婚でないこと

③女は夫と死別、離婚、結婚の取消し後6カ月過ぎること

④直系血族及び3親等以内の傍系血族でないこと

⑤直系姻族の間でないこと

⑥養親と養子の関係でないこと

⑦未成年者は親の同意があること

⑧婚姻届を提出していること

  ①~⑥がみたされていない場合は取消しです。

もし、①~⑥において婚姻届が受理されてしまった場合は一応有効となるので、取消すには、法定の取消権者から裁判所に取消しの請求を行わなければなりません。詐欺や強迫による婚姻についても同様です。
この婚姻の取消しは効果が遡及しないため、取消した場合は離婚に類似します。ただし、離婚には財産分与が伴いますが、取消しには財産分与はなく、婚姻により財産を得た場合は、返還しなければなりません。

  これらに対して、⑦の父母の同意のない未成年者の婚姻が誤って受理されてしまった場合は、その婚姻は有効と見なされ、取消しはできません。

  また、婚姻が実質的要件を欠き無効となる場合でも、仮装婚姻のようにその欠如した実質的要件が、婚姻の実質的意思である場合には、その無効は初めから何の効力も発生していなかったとして当然無効となりますが、一方が勝手に婚姻届を提出した場合のように、形式的意思の合致である場合には、他方当事者の追認により遡って有効とすることも可能です。

民法92-2

 

Ⅱ.婚姻の効力と夫婦財産制

  婚姻が成立して夫婦となった当事者間の法的な効果を、民法では①身分上の効力と②財産上の効力――に分けて規定しています。

民法92-3

1)身分上の効力

  婚姻の身分上の効力は5つあります。

①氏の変動

②同居・協力・扶養義務の発生

③貞操義務の発生

④夫婦間の契約取消権

⑤未成年者の婚姻に適用される成年擬制

  ①について、婚姻しようとする男女は、合意によりどちらか一方の氏を夫婦の氏として称さなければなりません。これを夫婦同氏の原則と言います。最近では、夫婦別姓や第三の氏を名乗ることなどが議論されていますが、現行法上ではまた認められていません。

  ②について、配偶者間には夫婦としての共同生活が要請されることから、同居と協力・扶助の義務が生じます。もし、これらを守らない場合、同居については強制できないとされていますが、協力・扶助は経済的要因による間接的な強制が可能とされています。

  ③の夫婦相互の貞操義務は明文規定されているわけではありませんが、不貞が離婚の原因と認められていることから、貞操義務も認めるとするのが通説です。

  ④の夫婦間の契約取消権は、夫婦間の契約の履行について法による強制を避ける趣旨によるものです。ですから、婚姻関係が実質的に破たんしている場合には、取消しできないとされています。

  ⑤について、未成年の人も婚姻することにより、成年と見なされ、制限能力者として付与されていた保護を失います。
 

2)経済上の効力

  婚姻の経済上の効力について、夫婦が婚姻届出以前に別段の契約を結んでいなければ、民法により、

①婚姻の費用の分担

②日常家事債務の連帯責任

③夫婦別産制

④帰属不明財産の共有推定――が定められています。

  ②の日常家事債務とは、日常家事から生じた生活の必需品の購入、近所との交際、子の教育、医療――など夫婦の共同生活に必要な一切の代金支払いなどの債務です。

また、夫婦財産契約を婚姻届の前に結べば民法の規定に従わないことも可能ですが、登記をしないと第三者への対抗力は発生しません。

民法92-4

3)内縁の効力

  内縁とは、婚姻意思をもって共同生活を営みながら、届出を欠くために法律上は夫婦と認められない事実上の夫婦関係です。

  内縁は婚姻に準ずる関係として認められ、婚姻に関する規定が可能な限り準用されます。準用される規定は、

①同居・協力・扶助義務

②婚姻費用分担義務

③日常家事債務の連帯責任

④帰属不明財産の共有推定

⑤財産分与――です。

  準用されない規定は、

①婚姻関係の発生

②夫婦同氏の原則

③成年擬制

④子の嫡出性

⑤相続権

⑥夫婦間の契約取消権――です。 

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