第90回 特別法による不法行為の類型

  債権最後の今回は、損害賠償請求の仕組みを図解し、民法を基本とした特別法で規制されている特殊の不法行為について補足し、最後に、行政書士試験に向けたマメ知識の紹介をします。

民法90-1

1)失火責任法による損害賠償

  失火による火災の場合の帰責要件は重過失です。民法709条を基本法とした特別法である失火責任法で規制され、木造の多い我が国の住宅事情を考慮した規定と言えます。
 

2)国家賠償法による損害賠償

  使用者責任の特則として、国などの公権力の行使に当たる公務員の不法行為について国家賠償法の規定があります。使用者である国などに無過失責任を認め、公務員本人に対しては損害賠償請求が認められないなどの使用者責任が修正された内容です。

 

3)自動車損害賠償保障法

  特別法である自動車損害賠償保障法には、運転供用者は、人身損害が発生した場合に、自己および運転者の無過失等を立証しなければ免責されないことが規定されています。分かりやすく言い換えると、実際の運転者ではなく、自動車の保有者等に無過失責任に近い厳しい責任を課しているのです。この責任に対するために損害賠償責任保険(俗に言う自賠責)の強制加入が定められています。
 

4)公害・生活妨害に対する特別法

  騒音、ばい煙、排水などによる生活への悪影響や人身侵害が争われることも少なくありません。こうした紛争では、不法行為に当たるか否かを、社会生活上で通常我慢するのが相当であると考えられる範囲を超えているかどうかを判断の基準としています。
 

5)製造物責任法による損害賠償

  消費者が被害者となる不法行為もいろいろありますが、消費者に販売された製造物が欠陥商品で消費者が損害を被ったときに、製造者等の責任を規定したものに製造物責任法があります。

被害者は、製造業者の過失を立証しなくても製造物の欠陥の立証だけで、製造者に対する責任の追及が行えます。

 

6)男女間の問題

  男女関係における慰謝料請求も、従来からの離婚、内縁関係の不当破棄、婚約破棄、不貞などのほか、セクシュアルハラスメント、ストーカー行為と新しい問題も発生してきました。

  男女関係の典型とも言える離婚の慰謝料は、厳密には離婚原因の個別的有責行為という、例えば暴力などに対する慰謝料と、離婚による配偶者としての地位の喪失に対する慰謝料の2つに分けられますが、実務としては、有責配偶者の有責行為が原因で離婚することになったという一連の経過を1つの不法行為として離婚慰謝料として処理されることが一般的です。
 

7)名誉毀損

  名誉毀損の不法行為は、表現の自由との調整に考慮する必要があります。また、特徴的なのは、被害者救済としての方法に新聞などを利用する謝罪広告等の原状回復手段です。

いずれにしても、その場合の名誉とは、その人の客観的な社会的評価を意味します。
 

8)医療事故

  最近の傾向として、医療過誤訴訟が増えていると言えます。原告である患者側の勝訴率はその他の訴訟に比べて低いと言えます。その原因は、裁判官などの専門的知識の欠如、証拠が被告である医師側の手中にある――ことなどで、医師の過失の立証が困難なことです。

  しかし、近年の判例では、医師に厳しい注意義務の設定を言い渡しているものもあり、今後の動向に注意が必要です。

民法90-2

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