第87回 民法で定められたその他の契約

  前回までに、民法で定められた契約について、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託――と10種類見てきました。今回は、契約の最後として、①組合契約、 ②終身定期金契約、③和解契約――についてお話しします。

民法87-1

 

Ⅰ.組合契約

  組合と言えば、協同組合や労働組合がよく知られていますが、これは社団法人の一種で、この講義でいう組合とは、共同事業をするための組織です。そして、組合契約とは、数人の当事者がそれぞれ出資して、共同の事業を営むことを約束する契約です。

例えば、Xさん、Yさん、Zさんの3人で、Xさんは土地と建物を提供し、Yさんは2000万円の資金を提供し、Zさんは以前からの自分の事業の顧客関係を提供するという合意の下に、共同で商品販売事業を行うような場合です。

  組合では、当事者全員が出資の義務を負担する必要がありますが、その出資の内容は、財産的価値のあるものであれば、現金でなくてもOKです。事業の内容は、一時的or継続的?、営利目的or公益目的? ――いずれも問いません。

  組合契約は一応は、有償、双務、諾成契約とされますが、複数人が集合して事業を起こすという点では、社団の設立に類似した面が強く、同時履行の抗弁権や危険負担などの規定は適用されません。

民法87-2

1)組合契約の業務執行

  組合が事業を営むことを目的とするものである以上、その事業についての業務執行に関して定めが必要です。また、事業を行えば、当然、積極・消極の財産が生じるので、これについての規制も必要です。

  組合の業務執行について、民法は組合の常務は各組合員がそれぞれ業務執行権を有することを原則として、常務以外については組合員の過半数で決定することと定めています。組合の業務執行によって生じる責任は、各組合員が負担するのですから、各組合員が事業執行に関与するのは当然と言えます。

  ただし、組合契約締結の時に、業務執行を特定の人に委任することは可能です。その場合は、その人に対外的な代理権も授与されることになります。
 

2)組合の財産関係

  組合の財産は、民法では団体の財産ではなく、組合員の共有とありますが、一般的には、各組合人の持分処分が制限されたり、分割請求権が存在しないため、合有財産と考えられています。つまり、組合員は持分権の処分が制限され、各組合員は清算に入るまでは組合財産の分割を請求できないことになっているのです。

  また、持分権を譲渡しても組合員は、組合の債務から逃れることはできないし、買った人も持分の取得を主張することができません。

  利益の配分は、契約で損益の分配を決めなかった時には、出資額に応じて分配します。

  組合の債務者は、組合員個人に対する債権で組合に対する債務を相殺することはできません。なぜなら、相殺を認めると、他の組合員が不足の損害を被ることになるからです。
 

3)組合員の脱退

  組合員は、存続期間の定めがないときは、原則としていつでも脱退できます。ただし、脱退前に生じた組合の債務は脱退後も責任を負わなくてはなりません。それは、組合の都合で債権者に不利益を及ぼすのは妥当でないからです。

  存続期間の定めがあるときの脱退は、やむを得ない事由のあるときに限られます。

  一方、組合は次の場合に解散します。

①目的事業の成功

②目的事業の不能

③やむを得ない事情

民法87-3

 

Ⅱ.終身定期金契約

  終身定期金契約は、債務者である人が自己、相手方または第三者の死亡するまで、債権者である相手方または第三者に定期的に金銭その他の代替物を給付する契約のことです。

例えば、死亡するまで生活費を送り続けるような場合です。

  終身定期金契約は諾成、片務契約ですが、必ずしも無償とは限らず、債務者が元本を授受して、定期給付を開始するという有償契約も見られます。

  現在では、年金制度が整備されてきているため、実際にこの契約がなされていることは稀であると言われています。

民法87-4

 

Ⅲ.和解契約

  和解契約とは、当事者が互いに譲歩して、その間に存在する争いをやめることによって成立する契約です。

例えば、XさんがYさんに50万円の請求をしたのに対して、Yさんが50万円払う債務はないと言い張り、結局25万円払うことで決着をつけるというように、当事者が互いに譲り合ってその間にある争いをやめることです。

  合意のみで成立する諾成契約であり、互いに譲り合うことが必要とされていることから、有償・双務契約と理解されています。

  和解契約の効果には、和解内容が真実の法律関係とはたとえ異なっていても、和解が成立した以上は当事者は和解の内容に拘束されるという創設的効力が挙げられます。

  この創設的効力を巡っては、和解と錯誤の問題をはらんでいます。先ほどの例では、支払義務がいくらだったのかということが争点であった以上、真実の支払義務が30万円だったとしても、25万円で合意したことに創設的効力が生じ、錯誤として和解の無効を主張することはできません。

  ただし、元の50万円を5万円と勘違いしていたような場合は、合意するに当たっての前提となる事実に関する錯誤として、錯誤無効の主張ができます。

  もうひとつ、交通事故などの場合に早期に和解が成立し、示談金が支払われた後、その時点では予期できない後遺症が発生するなどの問題が生じることがしばしばあります。

  これについて判例では、当事者の合意的意思に合致するか否かという観点から判断すべきとし、「和解当時予期できなかった不測の後遺症が生じたような場合には、その損害についてまで和解当時に放棄した趣旨とするのは、当事者の合理的意思に合致するものとは言えない」として、後遺障害の部分の損害賠償請求権を新たに認めました。

ページ上部へ戻る