第84回 賃貸借契約と問題点

  賃貸借契約とは、貸主が自分の物を借主に使用・収益させ、借主が賃料を支払う契約で、目的物が不動産である場合には、賃借人が生活基盤としていることが多く、通常の民法の規定では残酷な結果をもたらすことも多いので、借地借家法という特別法を定めて、その保護を図っています。

  今回は、①賃貸借契約、②土地の賃貸借契約、③建物の賃貸借契約――について解説します。

民法84-1

 

Ⅰ.賃貸借契約

  賃貸借契約とは、賃貸人である当事者の一方が賃借人である相手方に目的物の使用・収益をさせ、相手方はその対価として賃料を支払うことを約束することで成立する契約です。使用貸借と異なり賃料の支払いが契約の要件の一つです。

  民法では、賃貸借の目的物は物に限定されていますが、実社会では権利の賃貸借も考えられます。そこで、権利の賃貸借は、非典型契約として有効とされ、民法の賃貸借に関する規定が準用されます。

民法84-2

1)賃貸借契約の性質

  賃貸借契約は、賃借人の賃料の支払いという義務による有償契約であり、賃貸人の使用・収益させる債務と賃借人の賃料支払義務とが対価的に発生する双務契約です。また、当事者間の合意のみで契約が成立する諾成契約でもあります。

  賃貸借においては、上記の本体的な義務のほか、賃貸人には

①目的物の修繕義務

②賃借人が目的物を維持などするために費用を負担した場合の費用償還義務――があります。

一方、賃借人には、

①目的物の保管義務

②賃貸借終了時の目的物返還義務――が発生します。
 

2)賃貸借契約の終了

 賃貸借契約特有の終了原因には、

①存続期間の満了

②解約申入れ

③賃貸借についての特別規定による解除――があります。

  賃貸借の存続期間は、期間を定めた場合は当然その期間ですが、民法の規定では、20年を超えることはできないとされ、期間を定めなかった場合は、期間の定めのない賃貸借契約として、当事者はいつでも解約の申入れが行えます。

  このほか、賃貸借の存続期間をまとめると次のようになります。

①一般の賃貸借の場合⇒賃貸借の期間は20年を超えることはできず、これを超える期間を定めても20年に短縮される。

②被保佐人、不在者の財産管理人など財産を管理する能力はあるが処分能力や権限のない人が賃貸あるいは賃借する場合⇒短期賃貸借となり下記が法定されている。

 ・樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃貸借⇒10年

 ・その他の土地の賃貸借⇒5年

 ・建物の賃宅借⇒3年

 ・動産の賃貸借⇒6カ月

なお、期間が終わる前は、土地1年内、建物3カ月内、動産1カ月内に通知が必要です。

  また、賃貸借に特有の契約の解除原因として、

①賃貸人に無断で賃借人が目的物を転貸すること

②賃貸人に無断で賃借人が賃借権を譲渡すること――があります。

  転貸の法律関係は、次のようになっています。

①貸主の承諾がなければ、賃借権の譲渡や転貸は許されない。無断で転貸した場合は貸主は契約解除できる。ただし、背信行為と認められない場合は解除できない。

②貸主の承諾がある場合、転借人は貸主に対して直接義務を負う。また、貸主は借主(転貸人)に対して、賃料の請求権を失わない。

 

3)賃借権の性質からくる問題点

  民法では、賃借権は債権の一つとされていますので、物権と比較するととても弱い権利と言えます。

例えば、目的物が賃貸人から第三者に譲渡された場合は、新所有者に対抗できず、新所有者からの明渡請求に応じざるを得ません。民法605条では、一応、不動産の賃借権登記には対抗力を認めていますが、賃貸人が賃借権登記に協力するとは考えにくく、この登記が行われることはごく稀です。

  また、前述のように賃借権の無断譲渡・転貸は契約解除の事由ともなっているので、賃借権の処分にも大きな制限があります。

  特に不動産に関する賃借人保護のための特別法を以下で解説します。

 

Ⅱ.土地の賃貸借契約

  民法で賃借権が債権とされ物権に比べて弱い権利であることが問題となっている原因は次の3点です。

①存続期間が短すぎる

②第三者への対抗力がない

③譲渡、転貸の制限がある

  特に、目的物が不動産におけるこれらの問題に対処するために、いくつかの特別法を経て、平成4年、現行の借地借家法が制定されました。借地権には、①普通借地権、②定期借地権――の2つがありますが、ここでは普通借地権についてお話しします。

民法84-3

1)借地権の意義

  借地借家法による保護の対象は、建物所有を目的とする賃借権(地上権も含む)です。つまり、土地を借りて借地人が自分所有の建物を建てる場合などに限られています。ただし、建物所有と言っても、避暑のために立てる高原の別荘や、海の家のような一時使用の目的の場合は含まれません。

  普通借地権の存続期間は、期間を定めた場合はもちろんそれに従いますが、下限は30年となっています。存続期間の定めがない場合は、一律30年です。

  借地の場合、借地上に登記した建物を所有することが第三者対抗要件です。この場合に、判例では、所有者と登記名義人が同じ必要があるとしています。その理由は、所有者以外の登記名義では真の借地人の推察が困難になるからです。
 

2)借地権の処分と借地契約の終了

  賃借権は賃貸人の承諾なしに、譲渡・転貸できないことを前述しましたが、借地の場合、地主が不利益を被るおそれがないにもかかわらず承諾しない場合には、借地人は裁判所に賃貸人の承諾に代わる許可を求めることができます。

  借地契約の場合は、期間満了が一応、契約の終了期限となりますが、これには法定更新の制度があるため、賃貸人が正当事由を持って更新拒否をしない限り更新されて同一内容の賃借権が成立したものと見なされます。

  賃貸人の正当事由とは、通常、

①自己使用の必要性

②立退料の提供――などを考慮して総合的に判断されます。

借地上の建物に建物賃借人がいる場合には、原則としてその建物賃借人の事情は正当事由の判断の範囲外です。

  借地権が期間満了によって終了するとき、賃借人は賃貸人に対して時価で地上建物などの買取りを請求できます。

また、定期借地権の場合は、法定更新はなく期間の満了により契約は終了します。

 

Ⅲ.建物の賃貸借契約

  借地借家法が適用される借家の概念については、規定されていませんが、いわゆる間借りや公営公団住宅なども適用の範囲であることは間違いないようです。ただし、一時使用の場合は、借地同様、借地借家法の適用とはなりません。

民法84-4

1)借家権の存続期間と対抗要件

  普通借家契約の場合、当事者が借家契約の期間を定めた場合は、もちろんその期間が存続期間です。平成12年3月1日以降の新たな契約では、民法上の20年という上限は撤廃され、1年未満を定めた場合は期間の定めがなかったことと見なされます。

  期間を定めてない借家の場合、借地の場合のような一律○年と見なされるような規定はなく、期間の定めのない借地契約として成立します。

  また、定期借家契約の場合は、賃貸期間は無期限です。また、1年未満の契約も有効とされています。

  借家には、引渡しで対抗力が付与されます。つまり、居住していれば家主が建物を売っても、新家主に対抗できるわけです。
 

2)借家権の終了

  期間の定めのある借家契約は、借地同様、法定更新の制度が存在します。家主は、期間満了の1年前から6カ月前の間に正当事由を具備した更新拒絶の通知をしなければ、従前と同様の内容で契約は法定更新されます。

  期間の定めのない借家契約は、原則的な終了事由は解約申入れですが、解約申入れにはやはり正当事由が必要で、猶予期間も6カ月あります。さらに、正当事由がある場合でも、借家人の使用継続に対して家主が遅滞なく異議を申述べない場合は、やはり法定更新されます。

  法定更新後の借家契約は、更新前の契約が期間の定めある契約であった場合も、期間の定めない契約に統一されます。

  また、正当事由の判断は、借地同様、

①借家人または転貸人である当事者の建物使用の必要性――を重点に、

②従前の経過

③建物利用状況

④立退料――などから総合的に判断されます。

なお、借地の場合は、

⑤建物の現況――も判断材料となり得ます。

  なお、定期借家契約の場合は、更新はなく、期間の満了により契約は終了します。
 

3)造作買取請求権

  借地契約終了時、借家人は分離が物理的にも経済的にも容易で、建物の使用に客観的に便宜を与える造作を買取請求できます。これを造作買取請求権と言いますが、特約で造作を排除することが認められていればこの限りではありません。

  以上に述べたような借地・借家関係に認められる賃借権の物権のような強い効力を賃借権の物権化現象と呼ぶことがあります。

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