第82回 売買契約の特別法と特殊な契約

  第81回で売買契約の性質や効力についてお話しましたが、今回は①売買に関する特別法、②買戻特約と交換契約――について解説します。

 

Ⅰ.売買に関してはいろいろな特別法がある

  現在の発展した社会の中では、一口に売買と言ってもその内容は様々なのは、皆さんもご承知のとおりで、民法のみで、取引により生じた問題の解決を図ることは難しいと言えます。また、契約自由の原則に従って、売買契約の内容を当事者間に任せることは、消費者や生産者などの社会的弱者に不利な事態が発生しやすいとも言えます。

  そこで、売買に関しては、多数の特別法を制定して、社会的弱者を保護する措置がとられています。これからお話しする内容は民法そのものではありませんが、民法と一体化して売買契約にとって重要な決まり事なので、しっかり身に付けてください。

  では、特に消費者保護の立場から重要なものを見ていきます。

民法82-1

1)宅地建物取引業法

  宅地建物取引業法の規定は不動産の売買のみの規定ではありませんが、ここでは、民法と絡む不動産の売買に関する点に焦点を絞ります。

  不動産の売買を仲介するいわゆる不動産業者は、購入者等の利益の保護と宅地建物の流通の円滑化を図るために、免許制を採用しています。また、営業所には必ず宅地建物取引主任という国家資格を有した人を置く必要があります。
 

2)特定商取引に関する法律(旧訪問販売法)

  特定商取引法では、特定の分野の取引については、消費者を保護するために契約時に条件を明示した契約書の作成と交付が業者に義務付けられています。

  また、通常民法では、契約を結んだ以上は、正当な解除理由がないまま契約を一方的に破棄することは禁止されていますが、特定商取引法のクーリング・オフの制度では、契約内容を明らかにした書面が交付されてから8日以内であれば、買主は書面により一方的解除(申込みの撤回)が可能です。
 

3)割賦販売法

  特定商取引法と同様の規制は、割賦(かっぷ)販売の場合にも行われ、割賦販売法が制定されています。なお、割賦販売法には抗弁権の接続という制度に特徴があります。

  消費者が信販会社を介して販売業者から商品を購入した場合は、通常、商品の代金は信販会社が販売業者に立替払いを行って、消費者は信販会社に割賦弁済します。このとき、もし目的物である商品に瑕疵があって購入者が代金支払いを拒みたくても、民法の規定によれば、第三者である信販会社からの請求には応じなくてはなりません。

  でも、これではあまりにも消費者がかわいそう…、ということから、政令で指定された一定の割賦販売では、買主は販売業者に対して持っている抗弁権で信販会社に対して対抗できることを定めています。
 

4)消費者契約法

  消費者契約法は、消費者、事業者間の不当な商品、サービスの売買、供給契約、悪質な販売方法の規制を目的としている法律です。

  この法は、民法の詐欺、強迫の要件を類型化して緩和し、次のような場合などによって締結した契約は取消しが行えると規定しています。

①重要事項に虚偽の説明を受けた

②不確実な事項について断定的な説明を受けた

③自宅に居座られた

④営業所から返してもらえなかった

 

Ⅱ.売買についての特殊な契約もある

  民法は、特殊な売買という形で買戻しに関する規定を設けています。また、同様の機能を持つ再売買の予約も形式的には売買の形をとっています。しかし、これらの制度の性質は、実際には売買を離れた債権の担保手段(売渡担保)となっていることに注意が必要です。
 

1)買戻し

  買戻しとは、売買契約の際の特約で、売主が代金および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことです。

  買戻しの目的物は不動産に限定されます。また、特約は売買契約と同時に行われる必要があるとともに、買戻しができる期間は10年までとされ、更新することはできません。

  買戻しは、買戻義務者に対する意思表示で行えます。目的不動産が第三者に譲渡された後でも、買戻しの特約を登記しておけば、登記を備えた第三者にも対抗できます。

  また、買戻権を譲渡することも可能です。買戻権の譲渡は、買戻特約の登記がなされている場合にはその付記登記によって、なされていない場合には債権譲渡の規定に準じて、相手方である買主への通知と承諾によって対抗できることになります。

  買戻特約はどんな場面で有効かというと、買主が売買代金を支払わないような場合に、これを行使して不動産を取戻すことが可能になるという点で、債権担保の手段として利用されます。しかし、買戻しには種々の厳格な制約が付されますので、今日にはこの制度の利用はあまり見られません。

民法82-2

2)再売買の予約

  再売買の予約について、例を挙げて説明します。

例えば、土地を担保に融資を受ける際に、その土地を相手方に売却して、その代金という形で相手方から融資を受け、その時に将来再び自分がそれを取戻せるように逆方向の売買契約を予約しておくことがあります。将来、その予約完結権を行使して、目的物を取返す時に、再売買の代金支払いという形で融資金の返済を行います。こういう担保の形を再売買の予約と言います。

  再売買の予約の目的物は不動産とは限らず、また、予約を売買契約と同時に行う必要も、最初の売買と再売買の売買代金が同じである必要もありません。さらに、仮登記によって公示することも可能なので、買戻しに比べて債権担保の手段としてはよく利用されています。

民法82-3

3)交換契約

  交換契約とは、当事者が互いに財産権を移転する契約のことです。当事者双方が相手方に対して財産権の移転義務を負う、双務・有償・諾成契約で、貨幣制度が発達している今日では、交換契約が社会生活の場面で登場することは極めて少なくなっています。

民法82-4

 

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