第81回 売買契約と効力

  今回から2回は、契約の中心・売買契約について解説します。今回は、①売買契約と手付、②売買契約の効力――の解説です。

民法81-1

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Ⅰ.売買契約と手付

  売買契約とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約束して、相手方がその対価として代金を支払うことを約束することによって成り立つ契約です。

  売買契約の当事者は、売主と買主です。売主の本体的債務は財産権を買主に移転すること、買主の本体的債務は対価として代金を支払うことです。

  売買契約は売主・買主の双方が対価的な債務を負担する双務契約であり、また、売主・買主双方が得る利益に応じた代償を必要とする有償契約で、契約は当事者間の契約のみで成立するので諾成契約とも言えます。

民法81-2

  売買は当事者間の合意のみで成立する諾成契約ですが、現実の取引の場面では、売買契約の成立の際に、当事者の一方の買主が売主に対して金銭などを渡すことがしばしば見受けられます。これを手付と言い、契約締結の際に当事者の一方が相手方に交付する金銭その他の有価物の総称です。

  一般に手付は、

①証約手付

②違約手付

③解約手付――の3種類に分類されます。

  ①の証約手付とは、契約の成立を明らかにするための手付で、手付交付の本来の目的が以下の違約手付や解約手付の場合でも、同時に契約成立の時に契約成立を明らかにする面も有しているので、違約手付や解約手付も同様の性質を併有しています。

  ②の違約手付とは、手付を交付した人が契約で定められた債務を履行しない場合に、受領者が目的物を没収できるという趣旨で交付される手付です。主として、手付の交付者の違約に備える目的ですが、公平を保つために、受領者側の違約の場合には、交付された手付の倍額の償還が定められているのが通常です。

  ③の解約手付とは、契約の解除権を留保する趣旨で交付される手付です。交付者は、解約手付が交付されていれば、手付を放棄することで契約を解除することができます。一方、受領者は倍額償還することで契約を解除することができます。ただし、この解除権行使には、債務履行の着手にかかった相手方の保護のために、債務の履行に着手するまでという時間的制限があります。

  実際に交付された手付が3種類のどれに当たるかは、当事者の意思の解釈の仕方で定まりますが、民法では、手付として解約手付を推定しています。この場合、契約解除による損害賠償はできません。

  また、解約手付は代金の一部の前払い(内金)としての性質を持ち合せる場合が通常です。解除権が行使されずに後日契約が履行された場合には、代金の一部に充当されます。

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Ⅱ.売買契約の効力

  売買契約の本体的効力は、売主の財産権の移転義務と買主の代金支払義務であることは、前述のとおりですが、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

1)売主の目的物引渡義務と買主の代金支払義務

  当然ですが、売主は財産権移転義務として、買主に対して目的物を引渡して目的物の占有を移転する義務を負います。

  さらに、売主には目的物の占有移転だけでなく、移転した権利についての第三者対抗要件を具備させるように協力する義務もあると理解されています。その理由は、第三者対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないので、ここまでの義務を売主に求めないと、買主は目的を達成できないからです。

  一方、買主には代金を支払う金銭債務があるのは、言うまでもありません。
 

2)売主の担保責任

  中古車を購入した人が、乗り出してみたら伝えられていない不具合を見つけた場合を考えてみましょう。

この例のように、売買の目的について、数量、性能、品質などで不完全な点があるために、買主が予定していた目的を得ることができなかった場合に、買主を保護するために、売主に対して課した責任を売主の担保責任と言います。売主の損害賠償義務、買主の解除権等が規定されています。
 

3)他人物の売買

  売買契約は、本来は売主の有する財産権を目的としますが、他人の財産権を売買の目的としても無効とはなりません。

  もちろん、権利者が承諾しないで権利が買主に移転してしまうわけではなく、売主は権利者から権利を取得して買主に移転する義務を買主に対して負うことになります。

  売主が買主に権利の移転をすることができない場合は、買主は契約解除できます。

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