第78回 契約とは何か

  契約とは、通常二人以上の当事者が合意することによって、権利義務関係を作り出すことで、私たちの社会生活の中の法律行為の中でも最も重要なものです。

 今回からは、この契約についていろいろお話ししていくわけですが、初回は、①契約の分類や②契約の成立について解説します。

民法78-1

 

Ⅰ.契約により権利義務関係が発生する

  契約は、例えば、「売ろう」という意思表示と「買おう」という意思表示が合致した時に成立します。そして、契約は、最も重要で一般的な債権の発生原因なので、民法では、他の債権の発生原因である事務管理や不当利得、不法行為に先立って、多くを割いて規定しています。

民法78-2

1)契約自由の原則

  民法の目的が社会生活のルール作りで、個人の意思を尊重して意思表示実現のための手助けという私的自治の原則については、以前お話ししましたが、契約の行為においては、このことを尊重し、当事者間の合意で自由な権利義務関係を作れるという契約自由の原則をとっています。

  しかし、現代社会でこの原則をそのまま認めると、社会的強者が社会的弱者に対して、不公平な契約を強制することになりかねません。そこで、今日では、借地借家法や労働基準法などの特別法によって、契約自由の原則に制限を設けています。
 

2)契約の分類

  契約は効果や態様などの観点からさまざまに分類できます。

  まず、最初に効果に着目して分類すると、

双務契約

②片務契約――に分類できます。

双務契約とは、契約の効果として当事者双方が契約の本体的な、つまり対価的な意味がある債務を負う契約で、売買契約、賃貸借契約がその例です。

一方、片務契約とは、贈与や無償寄託のように、当事者一方のみが本体的債務を負担する契約です。後に解説する同時履行の抗弁権、危険負担の有無で重要になる分類です。

  次に、契約により負担する本体的債務が相互に対価的に有償であるか無償であるかによる分類が、

①有償契約

②無償契約――です。

「双務契約であれば有償契約である」と言えますが、その逆に「有償契約であれば双務契約である」とは言えません。例えば、利息付消費貸借契約は有償・片務契約です。有償契約の場合は、売買の規定が準用されます。

  さらに、契約成立の要件に着目した分類に

①諾成契約

②要物契約――があります。

諾成契約とは、意思表示の合致のみで成立する契約、要物契約は、意思表示のほかに物の引渡しその他の給付が必要です。売買、賃貸借、贈与は諾成契約で、消費貸借、使用貸借、寄託は要物契約です。

  ほかに、民法の規定のされ方による分類として

①典型契約

②非典型契約――に分けることもできます。

典型契約は有名契約とも言い、民法に規定する贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用(雇傭)、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解――の13種の契約のことです。

無名契約とも言われる非典型契約は、13種以外の契約のことで、リース契約、クレジット契約のように実務では重要な位置を占めている契約もあります。

 

Ⅱ.契約の成立

  契約は、例えば「売ろう」と「買おう」の意思表示の合致で成立することは先ほどお話ししたとおりですが、正式には申込みの意思表示と承諾の意思表示の合致があって成立することになります。
例で言えば、「売ろう」が申込みの意思表示、「買おう」が承諾の意思表示になります。

民法78-3

1)申込み

  申込みは、相手方とある特定の内容の契約を締結しようという意思を持って行う一方当事者の申し出と言えます。

  申込みに似ていて非なるものに申込みの誘因があります。
例えば、「急募! アルバイト店員求む」の貼り紙があったときに、これを申込みとみなした誰かが「私が働きます」と申出ると、これが承諾の意思表示になり、試験もなしに契約は成立してしまうのでしょうか? この場合の貼り紙は申込みの誘因、つまり、相手方に申込みさせようとする意思の通知と考えなければなりません。

  申込みは、その意思表示が相手に到達したときに効力を発生します。申込みの発信後、到達前に申込者が死亡したような場合、その申込到達時の効力には影響がないのが意思表示をする場合の原則ですが、契約では、相手方が到達前に申込者死亡の事実を知っていた時には申込みの効力は発生しません。申込みの効力を否定しても、相手方に不測の損害を与えることはないからです。

  申込みも意思表示である以上、いったん効力が発生すれば、撤回できないのが原則ですが、申込みに承諾期間が定められていない場合は、永遠に申込みに効力を認めるのは申込者にとって不利なので、承諾の意思表示が到達するのに必要な期間経過後は撤回できると定められています。
 

2)承諾

  承諾は、契約を成立させることを目的として特定の申込みに対して行われる意思表示です。契約は、承諾の意思表示を発信したときに成立すると民法では規定しています。この規定を見ますと、承諾の意思表示に限っては例外的に発信主義をとり、発信の時に効力を生じるように見えます。

しかし、承諾期間を設けた申込みに対しては、その承諾期間内に承諾が到達しない場合、申込みはその効力を失うという規定もあります。

  この規定には矛盾を感じるので、学説では前提の一部を修正して合理的な説明を試みていますが、まだ、はっきりとした多数意見は出てきていません。

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