第76回 債権の消滅原因

  債権にはさまざまな種類があったり、譲渡も可能だったりすることはお話ししたとおりですが、債権の効力はどのくらい継続するのでしょう? 消滅することもあるのでしょうか?

債権も権利なので、時効、取消などの権利一般の消滅原因によって消滅します。しかし、権利特有の消滅原因もあります。
今回は、債権特有の消滅原因である、①弁済、②代物弁済と供託、③履行不能の場合――に分けてお話します。

 

Ⅰ.弁済

  弁済は、債務の内容を実現する債務者または第三者の行為です。債務の履行と同じ意味ですが、履行は実現の過程に重点を置いた捉え方であるのに対して、弁済は債権の消滅という結果に重点を置いた捉え方です。

  弁済は、債務の内容どおりに行う必要があります。具体的内容について、当事者間で取り決めをしていない場合には民法による規定で弁済します。

例えば、

①弁済の内容:特定物債権は引渡しをすべき時の現状で、種類債権の場合には中等の品質を有する物

②弁済の場所:特定物債権は債権発生の時その物があった場所で、その他の債権は債権者の現住所

③弁済の費用:債務者の負担――などです。

民法76-1

1)弁済の提供

  弁済は、多くは債権者と債務者の協力によって可能となります。金銭支払い、物の引渡しなどの与える債務は、債権者の受領が必要で、債権者の協力がないと実現できません。

  このような場合に、債務者が不利益を被らないように、債務者としてできるだけの債務内容実現の行為を行うことを弁済の提供と言います。
 

2)弁済の充当

  債務者が同じ債権者に対して、同じ種類の目的がある複数の債務を負担する場合に、弁済として提供された給付が全債務を消滅させるのには足りないときは、複数あるうちのどの債務の弁済に充てるかを決めなければなりません。このことを弁済の充当と言い、民法では、弁済期の到来しているものから先に充当することを定めています。
 

3)弁済による代位

  債務者以外の人が弁済した場合(第三者弁済)は、弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するため、弁済によって本来ならば消滅するはずの債権者の債務者に対する債権とその担保権を行使することを認める制度があります。

  この制度を弁済による代位制度と言い、弁済によって消滅した債権者の権利が、求償権の範囲で弁済者に移転します。

  正当な利益のある人、例えば保証人などの第三者弁済の場合は、法定代位として当然に債権者に代位しますが、そうでない任意代位の場合は、債権者の同意がなければ弁済による代位を行うことができないとされています。任意代位に債権者の同意を必要とした結果、現在ほとんど任意代位は見られません。

 

Ⅱ.代物弁済と供託

  債権の消滅原因の中心は前述の弁済ですが、このほか、厳密には債権の目的自体が実現するわけではないのですが、目的実現に準じると捉えることができることから、債権の消滅原因とされているものに、

①代物弁済

②供託――があります。
 

1)代物弁済

  代物弁済とは、本来の債務の弁済に代えて、弁済者の所有する他の物の給付を行うことで、債権を消滅させる契約です。代物弁済は契約なので、債権者と弁済者間の合意が必要です。

  また、代物弁済契約は異なる給付が行われて初めて本来の債権が消滅する、要物契約です。つまり、債権はあくまで本来の目的である給付を行うのが原則なので、合意だけでは本来の債権は消滅できないということになります。

  代物弁済は、しばしば予約されることで債権担保に利用されます。
例えば、XさんがYさんに1000万円貸すとき、期限に返済しないときはYさん所有の家屋の所有権をXさんに移転するという予約をしておくような場合です。

民法76-2

2)供託

  供託とは、弁済者が弁済の目的物を債権者のために供託所に預けることを言い、有効に供託が行われた時点で本来の債務は消滅します。
例えば、家賃や地代を賃貸人が受領しない場合に行われ、実際の紛争の解決の場面では、供託物の処理が問題となる場合がとても多くみられます。ですから、供託は、実務に直結した制度と言えます。

  供託ができる場合は次の3つのような場合です。

①受領拒否:債権者が弁済の受領を拒む場合

②受領不能:債権者が弁済を受領できない場合

③債権者不確知:弁済者の過失なくして債権者を確知することができない場合

  債権者は、供託物から弁済を受けようとすれば、所定の手続きにしたがって、供託所から交付を受けることができます。この債権者の権利を供託物請求権と言います。なお、供託物が金銭の場合、特に還付請求権という表現が使われます。

  供託者の方は、債権者が供託を受諾せず、あるいは供託を有効と宣言した判決が確定していない間は、一旦行った供託を撤回して、いつでも供託物を取戻すことができます。これを供託物取戻請求権と言います。

  金銭や有価証券の供託の場合は法務局など、物品供託の場合は法務大臣指定の倉庫業者か銀行が供託所となります。

民法76-3

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