第75回 債権譲渡と債務引受

  私たちが売買契約で物を買ったり売ったりできるように、債権や債務も売買などの法律行為で移転させることができます。債権をその同一性を保ちながら、契約によって移転させることを債権譲渡と言いますが、今回は①債権譲渡と、逆に債務を移転する②債券引受についてお話しします。

 

Ⅰ.債権は契約により移転することができる

  債権譲渡は、債権を、同一性を保ちながら契約により移転することです。同一性を保つとは、譲渡の前後でその債権が別の新たな債権とはならない、ということです。また、相続や会社の合併などで生じる債権の移転は、民法でいう債権譲渡には当たりません。あくまで、契約による移転が必要です。

  債権譲渡は、今日の取引社会では、有価証券制度と並んで極めて重要な作用を果たしています。

民法75-1

1)譲渡性の制限

  債権譲渡にも、次の3つの場合に制限がかかります。

①債権の性質

②法律

③譲渡禁止特約

  ①の債権の性質とは、債権者が変わることによって給付の内容が変質してしまう場合です。例えば、ある有名な画家に「肖像画を描いてもらう」という債権の場合、その画家以外が描いたのでは、債務を果たしたとは言えないからです。

  ②の法律とは、法律が生活保障の見地から、本来の債権者に対してのみ給付させようとしている債権については、譲渡が禁止されています。例えば、扶養を受ける権利がこれに該当します。

  ③の譲渡禁止特約とは、譲渡契約の際に当事者が反対の意思を表示した場合には債権譲渡ができないという特約を付けることです。ただし、譲渡禁止特約は善意の第三者には対抗できません。

  また、譲渡禁止特約のある指名債権を譲受人が特約の存在を知って譲受けた場合、債務者がその譲渡について承諾しているときは、債権譲渡の時に遡って有効となります。その理由は、譲渡禁止特約は債務者の利益のためにある特約なので、債務者が承諾していれば、問題が発生しないはずだからです。

  その場合でも、第三者の権利を害することはできず、債務者の承諾が第三者が現れる後だった場合は、債権譲渡は無効となります。
 

2)指名債権譲渡の対抗要件

  債権譲渡は、ある権利における権利者の変動を生じる点では、物権変動と同じです。債権の譲渡自体は、当事者の合意のみによって成立しますが、当事者以外の第三者に対抗する場合は、対抗要件が必要です。

  債権者が特定されていて債権の成立・譲渡のために証書の作成・交付を要しない債権を指名債権と言いますが、指名債権の対抗要件は、第三者が債務者である場合は、譲渡人の債務者に対する通知あるいは債務者の承諾です。この場合に、債務者を要件の基本に置いた理由は、債務者が債務を誰に対して負うべきかを分かっていなければならないからです。

  債務者以外の第三者に対抗する場合には、通知や承諾が確定日付のある証書によって成されていなければなりません。それは、通知や承諾は、それだけでは優劣関係がはっきりしないまま、複数存在することが予想されるため、証拠力ある方法による対抗要件が必要だからです。

  なお、一定の場合、特例法により対抗要件具備の簡素化が認められています。
例えば、小口の多数債権の一括処分の便宜として「特定債権法」、法人の債権譲渡について「債権譲渡特例法」は、①日刊新聞への広告、②法務局のコンピューターへの譲渡データの登記――を行うことで、確定日付のある通知とみなすなどの規定を設けています。

 

Ⅱ.債務引受

  債務引受とは、債務の同一性を保ちながら、契約により債務を引受人に移転することです。
債務引受には、

①免責的債務引受

②重畳的債務引受――の2種類があります。

  免責的債務引受は、移転により旧債務者は債務を免れます。一方、重畳的債務引受は、従来の債務もそのまま存続しながら、旧債務者と並んで新債務者も同一内容の債務を負担します。

民法75-2

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