第73回 債権者代位権・詐害行為取消権の仕組みと多数当時者間の債権・債務

  民法では、一定の場合に債権者が債務者の財産に介入する権利を認めています。その一つが債権者代位権、もう一つが詐害行為取消権です。
今回はこの二つの債権者の権利と、多数の債権者や債務者がいる多数当事者の債権と債務について解説します。

  債務者が債務を自発的に履行してくれない場合、債権者は民事手続きによって債務者の財産を強制的に換価し、債務を果たしてもらえるかを判断します。つまり、究極的には債務者の財産が債権者の債権の引当となるわけです。ということは、債権者にとっては、債務者の財産(責任財産)が確保されていることが重大な関心事と言えます。

  債権者と債務者の財産との関係から、民法では、一定の場合に債権者に対して、債務者の財産管理に介入することを認めています。これを責任財産保全制度といい、

①債務者が財産減少を放置している場合に介入する債権者代位権、

②債務者が積極的に財産減少を企図している場合に介入する詐害行為取消権――が認められています。

民法73-1

 

Ⅰ.債権者代位権

  次の例を見てみましょう。

XさんはYさんに対して2000万円の貸金債権を有していますが、YさんはZさんに対する2000万円の債権のほか、めぼしい財産は持っていません。YさんのZさんに対する債権が時効消滅してしまいそうな場合、XさんはYさんに代わってZさんに対する債権を行使し、時効を中断することで、Yさんの財産減少を防ぐことができます。

  この場合のXさんの権利が債権者代位権です。この債権者代位権は債権者が他人である債務者の財産管理に介入するものなので、責任財産維持としての厳格な要件が必要です。

①被保全債権が弁済期にある金銭債権あること

②無資力の債務者が未だ権利行使をしていないこと

③その権利が一身専属でないこと――などがその要件です。

  債権者代位権は本来、責任財産保全のための制度なので、被保全債権は金銭債権であることが必要です。しかし、判例は、必要かつ有効である場合、金銭債権以外の特定債権保全のために債権者代位権の転用を認めています。

例えば、不動産がXさん→Yさん→Zさんと移転しましたが、登記上は未だXさんとなっているとき、Zさんは一定の場合に、Yさんの持つ移転登記請求をYさんに代わってXさんに対して行えます。

 

Ⅱ.詐害行為取消権

  次の例を見てみましょう。

XさんがYさんに対する2000万円の債権を有しているとき、Yさんが唯一の財産である2000万円相当の土地をZさんに贈与してしまったような場合、Xさんはその贈与を取消してYさんの下にその土地を戻させることができます。

  この場合のXさんの権利が詐害行為取消権です。
これも債権者代位権と同様、責任財産保全のための制度なので、

①被保全債権が金銭債権であること

②債務者が無資力であること

③債務者に債権者を詐害する意思のあること

④債務者の相手方も債権者を害することを知っていたこと(悪意)――などの厳格な要件が必要です。

 

Ⅲ.多数当事者の債権・債務

  多数当事者の債権・債務とは、1個の同一の給付を目的とする債権または債務が多数の者に帰属しているような関係のことです。

  民法上認められているものとして4つ、解釈上認められるものに1つ、次の合計5つの種類があります。

①分割債権・債務関係

②不可分債権・債務関係

③連帯債務

④保証債務

⑤不真正連帯債務

民法73-2

1)分割債権・債務

  債権者に対し、300万円の債務を負っている者に相続が開始し、相続人が債務者の3人の子である場合、債権者は各相続人に対して100万円ずつしか請求できません。300万円の債権が独立の100万円の債権に分割されてしまったからです。このとき、相続人の1人が無資力の場合、債権者は他の2人から200万円の弁済を受けられるだけになり、債権者にとっては予想外の損害が生じてしまいます。
 

2)不可分債権・債務

  上記の例の場合に、債権者と3人の相続人の話し合いで、300万円の債務を不可分債務としたら、債権者はどの者に対しても全額の300万円を請求することができます。すると、仮に相続人の1人が無資力であっても他の者から300万円の弁済を受けることができるので、債権者にとっては分割債務よりも有利です。

  合意による不可分債権の例をお話ししましたが、共同賃借人の賃料債務のように債権の目的が性質上、当然に不可分債権とされるものもあります。
 

3)連帯債務

  連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付について、各々独立に全部の給付義務を負い、そのうちの1人の給付があれば、他の債務者の債務もすべて消滅する債務のことです。
 

4)保証債務

  保証債務は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その債務を履行する債務で、保証人と債務者の間の保証契約によって成立します。


5)不真正連帯債務

  不真正連帯債務とは、連帯債務のうちでも各債務者間に緊密な関係がないため、一債務者について生じた事由が他の債務者に影響を及ぼさず、また、負担部分も存在しないため、求償関係も当然には生じないとされる債務です。

  不真正連帯債務において絶対効が生じるのは、弁済、相殺等の債権者が満足する事由だけで、その他は他の債権者・債務者に影響を及ぼさない相対効しか認めないことで、債権者の保護を図っています。

  共同不法行為の被害者に対する損害賠償請求権がこの代表例です。

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