第71回 債権の法律上の保障と債権回収

  今回は債権の権利としての①法律上の保障と、②債権回収とその手段について解説します。今回も債権全体をつかんでいただくためのお話です。

 

Ⅰ.債権は法律により強い保障がなされている

  債権は権利として法律上どのような保障がなされているのでしょうか? 

まず第一に、債権とは債権者が債務者に対して一定の行為を請求できる権利である以上、債権者は裁判に頼らなくても当然に債務者に対して債務履行の請求を行え、債務者がその債務を任意に履行すれば、その給付内容が正当なものとして法律上保障されます。

  では、債務者が任意に債務の履行を行わないときはどうなるのでしょう?

そのような場合、債権者は強制的に債権の内容を実現するように国家機関に働きかけることができます。法律では、自力救済を禁じて国家機関を通した債権内容の強制的実現を保障しています。この国家機関を通した債権内容の強制的実現を、任意の履行と比較する意味で民事執行法上の強制履行と呼んでいます。
そして、強制履行には次の3つがあります。

①直接強制

②代替強制

③間接強制

民法71-1

  以上はいずれも、債権の債務者の給付を求める権利としての性質上、当然に導かれるものと言えますが、これ以外の債権に対して法が与えている効力に妨害排除請求があります。権利の不可侵性から物権と同様に債権にも妨害を排除する効力が認められているわけですが、侵害はある程度継続してなされている必要があり、実際には物の利用を目的とする賃借権などを巡る問題の場合に妨害請求権が登場します。

  また、第三者が債権を侵害した場合にはそれを不法行為として損害賠償請求することが可能です。以前は、債権は対債務者に対する権利にすぎないとして第三者への損害賠償を否定する見方もありましたが、現代では、

①債権も法的な保護を受ける必要があること

②債権の相対性は直接的な効力を問題する場合の性質にすぎないこと――などから、債権侵害の不法行為性が認められています。

  このほか、民法上認められている債権の効力の一つに受領遅滞があります。受領遅滞とは、債務の履行に当たって、受領その他債権者の協力を必要とする場合に債務者が債務の本旨に沿った提供をしていたにもかかわらず、債権者が債務の履行を受領することを拒んだり、債務の履行を受領することができないため、履行が遅延している状態になることです。この場合は、債務者が不利益を免れるために消極的な保護が受けられますが、法律で、債務者に解除権や損害賠償請求権を認められているわけではありません。

 

Ⅱ.債権回収とその手段

  債権はそもそも債務者の給付を目的とする権利なので、債務者が任意の給付を行わない場合、債権者は、債権を回収するという問題に直面することになります。債権回収には次のような手段があります。

①交渉による回収
   ↓
②内容証明郵便の発送
   ↓
③法的手続による回収Ⅰ(簡易裁判所による調停・支払督促・少額訴訟手続)
   ↓
④法定手続による回収Ⅱ(強制執行)

民法71-2

1)交渉による回収

  まず、債務者に対する履行の督促を行います。債務者が給付しない場合としては、単に忘れているだけという場合もありますので、いきなり裁判沙汰にするのは穏当ではありません。履行回収は債権者自ら行わなくても、他人に依頼することも可能です。平成10年に成立した「サービサー法」では、従来弁護士にしか許されていなかった債権回収が、民間業者でも行えるようになり、手軽に適正な債権回収が図れるような措置が講じられています。

 

2)内容証明郵便

  直接、債務者に履行の督促を行っても依然債務を果たしてくれない場合には、次の手段は債務者に内容証明郵便を送ることです。
内容証明郵便とは、郵送した文書の内容と発信した日付を郵便局が証明してくれる郵便です。通常は、配達証明も付けて発送し、文書が確かに相手方に送達されたことも証明しておきます。

  内容証明郵便は、訴訟提起の準備として利用されることが多いため、債務者に訴訟提起を意識させることで、債務の履行を間接的に促すことにつながります。発信者を弁護士名義などにすれば、なおさら効果が期待できます。

 

3)法的手続による回収Ⅰ

  上記の手段で解決しない場合は、債権者は法的手続を取ることになり、民法ではいくつかの方法を用意しています。

  簡易裁判所で行う手続には、

①調停

②支払督促

③少額訴訟手続――があります。

  調停とは、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が中間に入って、当事者双方の譲歩を引出して解決を図る手続きです。調停が調い、調停調書が作成されると訴訟の確定判決と同様の効果を生じます。

  次に支払督促とは、申立人の申立てにより、書類審査だけで発布される命令です。相手方の異議がなければ仮執行宣言を得て強制執行することも可能です。

  また、少額訴訟手続とは、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えを、原則1回の期日で審理を済ませて直ちに判決を言い渡す手続きです。

 

4)法的手続きによる回収Ⅱ

  簡易裁判所での法的手続きでも解決に至らない場合は、訴訟を起こすことになります。訴訟は判決という形で公権的な判断が下される最も厳格な手続きです。この判決により強制執行も可能となります。

  ただし、訴訟による場合は、勝訴判決まで相当程度の期間を要するため、債務者が資産を処分してしまうこともあり得ます。このような事態への対策として、一定の保証金を納めて簡易・迅速な命令を得る仮差押えなどの保全処分も用意されています。

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