第70回 債権とは何か

  民法の学習も今回からいよいよ債権です。債権とは相手に一定行為を請求できる権利のことですが、学習範囲も広く、内容も複雑で厄介と言えます。一つひとつ確認しながら、以前勉強したことでも疑問を感じたら、その都度戻って確認しながら勉強を進めてください。

民法70-1

  債権第1回目は、債権の概念をおよそ掴んでいただけるように①債権とは何か、債権の中でも一番多い②金銭債権について解説します。

 

Ⅰ.債権は請求権だ

  民法は、私人間の関係を権利・義務の関係として考えていくのでしたね。そうすると、その中に現れる権利が、一つは物権、そして物権と並んで重要なのが債権です。

  債権とは、他人(債務者)に一定の行為を請求する権利です。
例えば、物を買ったときに代金を支払え――という権利、お金を貸したときにお金を返せ――という権利です。

 

1)債権の目的

  物権は物を直接的に支配する権利で、目的物は「物」であったのに対して、債権は債務者に一定の行為を請求する権利ですから、債権の目的は債務者の一定の行為(給付)ということになります。

  物権には1つの物権と相反する物権は成立し得ないという排他性がありましたが、債権には、債務者という人格が介在する以上、債権の目的を支配することは考えられず、排他性はないと言えます。つまり、相反する債権も成立し得ると言うことです。

例えば、行政書士受験対策講座を開講しているA校に、ある有名な講師Xが●月●日に特別講座を開くという契約を結ぶと、A校は●月●日に講座を開講せよという債権を持つことになります。しかし、Xさんが日を間違えて記憶し、B校に対しても同じ●月●日に特別講座を開くという契約を結ぶことは可能です。B校もA校と同じ●月●日に講座を開講せよという債権を持つことになります。もちろん、Xさんはどちらか一方の義務しか果たせません。しかし、A校の債権があるから、B校の債権は成立しないということにはなりません。このことが債権には排他性がないということです。
なお、実際に、この場合に解決を図るには、Xさんは、義務を果たさなかった学校に対して損害賠償をして、公平を保つことになります。

 

2)債権の分類

  債権は、何度も言っているように債務者の給付を目的としているので、その給付の種類によって分類することができます。

  まず、給付内容を

①債務者の物の引渡しとする与える債務

②それ以外のなす債務――に分類することができます。

与える債務は、その与える物が特定か不特定化によって、さらに

①特定物債権

②不特定物債権――に分類でき、債務不履行(後の回で解説)の際にこの分類が重要になってきます。

なす債権は、債務者の物の引渡し以外の行為を内容としますが、例えば、土地に工作物を造らないのような消極的な内容のものも存在します。
このなす債務は、代わりの人が債務を行えるかどうかで、

①代替債務

②被代替債務――に分類でき、強制履行(後の回で解説)の際にこの分類が重要となってきます。

  また、債務の分類として、A債務あるいはB債務のどちらかを選択して履行するという選択債務の形態も存在します。

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Ⅱ.金銭債権

  与える債務の典型に金銭債務があります。金銭債務を反対から見た金銭債権は、一定の金銭の引渡しを目的とする債権です。

  金銭は、代替物の極限ともいうべきもので、後の回でお話しする債務不履行の場合の損害賠償では特則が定められているほどです。

その内容を少しのぞいてみると、金銭債務の損害賠償は実害とは無関係、債務者の故意・過失を要件としない――などです。

 

1)利息と法定利率

  金銭の賃借に当たっては、元金の返還とともに利息の支払いを求められることが少なくありません。利息は、元金を借りた期間に対応した一定の比率(利率)で計算されます。この利息は、契約の際の特約または法律の規定がなければ発生しませんが、利息が発生する場合は、契約に利息に関する取り決めがない場合は、民事は年5分(%)、商事は年6分の利率と決まっています。

  利率は、本来、当事者の合意によって自由に定められますが、貸主と借主の経済的な関係から不当に高利な利率が設定されることを防ぐため、利息制限法により、金銭消費貸借には、利息、遅延損害金(後述)の制限が行われます。

 

2)利息制限法による制限利率

  利息制限法による上限金利は、元本により異なります。

①元本が10万円未満→利率年20%まで

②元本が10万円以上100万円未満→利率年18%まで

③元本が100万円以上→利率年15%まで

  なお、出資法は、賃金業者についての上限利率を年20%とし、これを超える利率については刑事罰の対象としています。

  また、利息が支払期日までにかかるのに対し、支払期限が過ぎてから支払い済みまでにかかるのが遅延損害金です。利息制限法では、遅延損害金に対しても上限を定め、賠償額の予定は制限利率の上限の1.46倍とされています。

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