第68回 根抵当権と抵当権の実行

  今回は前回の続き、①根抵当権と②抵当権の実行についてお話します。

 

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Ⅰ.根抵当権はどういう権利か

  抵当権が被担保債権を担保するものであるのに対し、一定の範囲に属する不特定の債権を、一定の極度額の限度において担保する抵当権根抵当権と呼んでいます。

  分かりやすく例えると、ある会社を経営している人が、銀行から事業資金を借入れる場合に、返済や新たな借金をするたびに抵当権を消滅させたり、再度設定したりするのでは手間がかかるので、銀行との継続的な取引きで生じる増減する債権を被担保債権として資金を借入れる方法で、これが根抵当権に当たります。

  根抵当権の性質は、一定の範囲の不特定の債権の担保ということから、個々の債権と根抵当権との結びつきは抵当権より弱く、附従性や随伴性も緩和されていると言えます。もっとも、根抵当権も抵当権のように換価競売によって優先弁済権を実施するものなので、当然に、遅くても換価の時までには被担保債権を特定する必要があります。

  この被担保債権特定の期日は元本確定期日と呼ばれ、平成15年改正(16年4月1日施行)により、根抵当権者はいつでも確定請求ができることになりました。なお、設定者も、3年経過すれば請求ができます。

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1)根抵当権の設定

  根抵当権も約定担保物権なので、当然成立のためには契約が必要です。
根抵当権の3つの本質的要素は、

①被担保債権の範囲

②債務者

③極度額――であるため、この3つは契約の内容に必ず入れなければなりません。

確定期日は設定契約の際に決まっている必要はないため、設定契約に必ず入れなければならない要件ではありませんが、実務上は設定契約の段階で同時に定めることが多いです。

 

2)根抵当権の変更と処分

  根抵当権の変更には、

①極度額の変更

②被担保債権の範囲の変更

③債務者の変更

④確定期日の変更――の4つの場合があります。

このうち、被担保債権、債務者、確定期日の変更は元本確定前に限り、利害関係人の承諾なく自由に行えますが、元本確定後は行えません。

  これに対して、極度額の変更は元本確定の前後を問わず行えますが、極度額は後順位抵当権者や転根抵当権者などの地位に重大な影響を及ぼすので、利害関係人の承諾が必要です。

  根抵当権の処分は、普通抵当権と異なり、

①転根抵当

②全部譲渡

③分割譲渡

④一部譲渡――のみが、元本確定前にのみ認められています。

③の分割譲渡と④の一部譲渡は、分割譲渡が行われると元の根抵当権が分割されて2つの根抵当となる点で同じですが、一部譲渡では、元の根抵当権はそのままで、複数人で1つの根抵当権を共有する形になる点で異なります。

 

Ⅱ.抵当権の実行

  抵当権の実行とは、抵当権が持っている優先弁済権を具体化する手続きのことで、民事執行法で規定されています。

  抵当権を実行するためには、まず、抵当権の目的物の所在地を管轄する地方裁判所に抵当権実行の申立てを行います。すると、裁判所ではこれに基づき競売開始決定の送達を行い、差押えの効力が発生します。

  この後、競売が開始、買受人が現れて売買許可決定が行われると、買受人は代金を納付して目的物の所有権を取得し、抵当権は消滅します。

  そして、競売で得られた代金の配当手続きが行われ、ここで、抵当権者は、他の債権者に先立って配当が受けられることになります。この流れについては下の図でよく確認してください。

民法68-1

1)抵当権実行と土地建物

  更地の抵当権者は抵当権設定後、その土地上に建物が建てられた場合には、土地と建物を一括して競売することができます。ただし、優先権は土地部分の対価にのみ働きます。平成15年の改正で、建物を誰が建てたかは問われないことになりました。つまり、債務者以外が建てた建物でも、一括競売の対象となります。

  一方、抵当権設定時にすでに土地建物が同一所有者の下に存在し、競売によって所有権が移転した場合には法定地上権が発生します。

  次の2例を見てみましょう。

まず、土地・建物を所有するXさんが建物だけに抵当権を設定した場合、抵当権が実行されると、買受人Yさんは建物の所有権を取得しても土地の利用権はなく、建物収去・土地明渡しの請求を受けてしまいます。

逆に、土地のみが抵当に入っている場合は、競売により建物所有者Xさんが土地の買受人Yさんからの建物収去・土地明渡しの請求を受けることになります。

  こうした不都合を回避するために、建物所有者に認められた権利が法定地上権(土地の利用権)です。

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2)抵当権と賃借人

  抵当権と賃借人との関係にも対抗関係があり、その優劣は対抗要件具備の先後関係で決まってきます。ただし、抵当権登記に劣後する賃貸借登記しかない賃借人でも、自己に優先する抵当権者の同意や同意の登記を備えれば、抵当権者に対抗できます。
もし、対抗できない場合でも、建物が抵当権実行で競売され、買受人が現れても買受から6カ月は明渡しの猶予が認められています。

 

3)共同抵当の場合の配当

  同一債権の担保として、複数の不動産等に抵当権を設定する共同抵当権者が、任意の不動産から優先弁済を受けられるとすると、後順位抵当権者に思いもよらぬ損害を与えてしまうことがあります。

  そこで、民法は後順位抵当権者を保護して公平を図るために、各不動産の価格に応じて共同抵当権の被担保債権の負担を分けるなどの規定を設けています。

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