第67回 抵当権はどういう権利か

  約定担保物権の一つ抵当権は、お金を貸す際に、債権者が債務者から不動産の引渡しを受けないで不動産を担保としてお金を貸し、債務者が弁済しないときにはその不動産から優先的に弁済を受ける権利です。今回から2回に分けて、担保の王様でもある抵当権について解説します。

  では、まずは、①抵当権の効力、②抵当権の処分――です。

民法67-1

 

Ⅰ.抵当権の効力 

1)抵当権ってどんな権利 

  抵当権とは、債務者または第三者が占有を移さないで債務の担保に供した不動産について、債権者が他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受けることができる約定担保物権です。

  占有を設定者の下に留めたまま、目的物の交換価値を把握して優先弁済的効力を有していることが本質的特徴です。

  抵当権設定者にとっては目的物の使用・収益を継続できるので、自己の負担する債務の返済に支障を来さないというメリットがあります。また、抵当権者には、目的物には関心がなく、債務の弁済のみが興味の対象ということが多いため、最も重要で利用も多い担保物権となっています。

 

2)抵当権の成立と消滅

  抵当権の成立は約定担保物権であることから当然、債権者と設定者との抵当権設定契約で成立し、登記が対抗要件となります。したがって、登記がなければ第三者に抵当権を設定していることの主張ができません。

  抵当権も物権である以上、権利の消滅は、物権の一般的な消滅原因である

①目的物の滅失

②目的物の放棄

③混同――です。

また、担保物権に特有な消滅原因としての④被担保債権の消滅に附従することによっても消滅します。

  このほか、抵当権特有の消滅原因として、

⑤代価弁済

⑥抵当権消滅請求の制度――があります。

  代価弁済とは、抵当不動産につき所有権を買受けた第三者(取得者)が抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済した場合、抵当権をその第三者のために消滅させる制度です。

  抵当権消滅請求とは、第三取得者自身が代価を評価して抵当権者に対してその代価で抵当権を消滅させることを請求する制度です。

  どちらの制度も抵当権の負担付不動産を取得した第三者を抵当権の負担から解放して、その地位を安定させることが目的の制度ですが、代価弁済が抵当権者の主導、抵当権消滅請求が第三取得者の主導である点が異なります。

 

3)抵当権の及ぶ範囲

  抵当権の効力の中で最も重要なものは目的物を換価してその代金から配当を受けられるという優先弁済的効力です。物上弁済的効力があるということは当然、抵当権にも物上代位が認められています。

  抵当権により具体的に担保される債権の範囲は、元本は当然担保されますが、利息は満期となった最後の2年分のものに限定されていますから、ここは質権と異なります。
その理由は、抵当権の場合、目的物の占有が設定者の下に残り、設定者がさらに残余価値を抵当にして、後順位の抵当権者が出現することも多いので、それらの者を保護する必要があるからです。

  換価できる目的物の範囲は、目的物そのもの自体のほか、目的物に付加して一体をなしている物にも及びます。ただし、明らかに抵当権設定後に付属した従物には抵当権は及びません。

  また、果実は使用収益権の成果なので、被担保債権の不履行があるまでは、抵当権の効力が及びません。ちなみに平成15年の改正以前は差押えがあるまででした。被担保債権に不履行が生じると、その後の生じた果実には抵当権が及びます。

民法67-2

4)抵当権の順位

  抵当権の場合、後順位の抵当権者が生じることが多いと先ほどお話しましたが、各抵当権者が優先弁済を受ける順位は登記の前後により、順位に応じて、①第1抵当権、②第2抵当権……と呼ばれます。

  第1抵当権が弁済等で消滅した場合は、順次、順位が繰り上がる順位上昇の原則がとられています。つまり、第2抵当権が第1抵当権になるということです。

 

Ⅱ.抵当権の処分

  民法では、被担保債権を固定したまま、抵当権を操作する手段として、

①転抵当権

②抵当権の譲渡

③抵当権の放棄

④抵当権の順位の譲渡

⑤抵当権の順位の放棄

⑥抵当権の順位の変更――という6つの方法を規定しています。

 ①の転抵当とは、抵当権が持っている抵当権を担保にすることです。

②・③の抵当権の譲渡・放棄は、抵当権者が無担保債権者に対して自己の抵当権者としての地位を譲渡したり、主張しなかったりすることです。

④・⑤の抵当権の順位の譲渡・放棄は、抵当権者が後順位抵当権者に対して先順位の地位を譲渡したり主張しなかったりすることです。

⑥の抵当権の順位の変更は、被担保債権とは切り離された順位の絶対的な変更のことです。

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