第66回 質権はどういう権利か

  担保物権には、前回までにお話しした留置権や先取特権の法定担保物権と、今回からお話する約定担保物権があります。今回のテーマ質権は、約定担保物権の一つで担保として物と手元に置き、返済がないときにその物を売却して優先的に債権回収ができる権利です。①質権の効力、②転質、③質権の種類――と解説していきます。

民法66-1

 

Ⅰ.質権の効力

  質権とはどういう権利かもう少し詳しくお話しすると、債権者が債権の担保として債務者または第三者である物上保証人から提供を受けた物を占有し、その物について他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受けることができる約定担保物権です。目的物の占有を債権者に移し、債権者は弁済があるまでこの目的物を留置して、間接的に弁済を強制することができます。もし弁済がない場合には、この目的物を競売し、その売却代金から他の債権者に優先して弁済を受けることもできます。

  したがって、質権の効力は、

①目的物を留置する留置的効力

②優先弁済を受ける優先弁済的効力――が主なものです。

また、優先弁済的効力が認められるので当然、物上代位権も認められています。

  質権の対抗要件は質権の種類によって異なるので、種類のところで確認してください。

  質権は、約定担保物権であることから債権者と質権設定者との質権設定契約によって成立します。そして、この質権設定契約は、質権は目的物の留置に特徴があることから、目的物の占有を質権者に移すことが必要な要物契約です。

  では、この質権設定契約の場合に、もし、質権者が目的物を設定者に任意に返還したときは質権は消滅するのでしょうか? 

留置的効力が質権の大きな効力なのだから、これを放棄するということは質権自体の放棄に当たり、質権が消滅するというのが通説となっています。

 

Ⅱ.転質

  転質とは、質権者がさらに質入れすることです。
例えば、YさんがXさんに対して、有している貸金債権の担保のために、Xさん所有の絵画を質入れしましたが、Yさんが借金するために、担保としてXさんから預かった絵画をさらにZさんに質入れしてしまうことです。 

  この転質には、YさんがXさんの承諾を得て行う承諾転質と、Xさんの承諾なく行う責任転質の2種類があります。

  以前、転質は法律上認められているものの、設定者の承諾が必要は否か問題とされていましたが、現在は不要とされています。 

 

Ⅲ.質権の種類

  質権は目的物によって

①動産質

②不動産質

③権利質――の3種類に分類されます。

民法66-2

1)動産質

  動産質とは、動産を目的とする質権のことです。質権設定契約では、目的たる動産を引渡すことが必要になります。動産質権にも即時取得の規定の適用があり、設定者が他人の物であるかのように偽って引渡した場合でも、即時取得によって質権が成立します。

  動産質の対抗要件は、占有の継続です。ですから、質権が第三者によって強奪された場合、質権者はその第三者に対しては質権を主張できませんので、質権による返還請求は認められません。このような場合は、占有回収の訴えを起こして問題の解決を図ることになります。占有については第56回を参照してください。

 

2)不動産質

  不動産質とは、不動産を目的とする質権のことを言います。不動産の引渡しを伴う質権設定契約によって成立し、対抗要件は登記です。

  不動産質権者は、動産質権と異なり、その目的である不動産を用法に従って使用・収益することが可能です。しかし、その反面、不動産質権者の被担保債権は、動産質のように元本の他にその元本から派生する利息には及びません。

  また、不動産質権には存続期間が10年を超えてはならないという制限があります。その理由は、過度に長期に渡り他人の不動産を使用収益することを回避するためです。

  不動産質権は、質権者にとっては管理が面倒、設定者にとってはその不動産を利用できないという不便さから、ほとんど利用されていないのが現状です。

 

3)権利質

  権利質とは、財産権を目的とする質権です 譲渡性を持つ財産権は、一般に権利質の目的とすることができ、債権・株式・無体財産権などがしばしば利用されます。

  権利質の場合、平成15年改正(平成16年4月1日施行)により、質権の成立に証書の交付が必要なのは手形等の証券的債権の場合のみとされ、要物性が一層緩和されることとなりました。

  貸金債権などの指名債権(後で解説します)を権利質の目的とした場合、第三債務者に対する通知か、第三債務者の承諾が対抗要件となります。無記名債権の場合は、動産と見なされるため、動産質と同様、証券の占有が対抗要件です。

  質権者は、被担保債権が弁済期を過ぎても債務の履行がない場合、権利者の実行として質物である債権を自らの名で取り立てることができます。

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