第61回 所有権はどういう権利か

  第60回で物権の中の占有権は毛色の違う権利と言いました。ここで、物権をその内容からもう一度分類してみます。
そして、今回はそのうちの所有権の意義や限界について解説します。

物権は、まず、占有という事実状態のみを根拠に認められる占有権と、事実状態とは無関係に、物の支配の権限を根拠に認められる本権とに分けられるのでしたね。

  次に本権は、物の全面的支配を内容とする所有権と、部分的支配のみしかできない制限物権に分けることができます。

民法61-1

  制限物権はさらに、支配する権能に着目して、物の使用収益権能を支配する用益物権(地上権、永小作権など)と、交換価値を支配する担保物権(質権、抵当権など)に分けることができます。

 

Ⅰ.所有権の意義

  所有権は、その物の使用・収益・処分という支配権能のすべてを有する全面的支配権です。ですから、物に対する支配という点では、制限物権は所有権が持ついろいろな権能の一部だけが抽出されてできたものと言えます。そこで、制限物権のある物を取得すると所有権が発生し、今までの制限物権は消滅します。

  また、物の全面支配には時間的限界がないので、所有権は消滅時効にかかることはありません。これも大事な性質です。消滅時効について曖昧な方は第54回を復習してください。

  ここで物権の最初(第55回)でお話しした物権的請求権について所有権を例に丁寧に解説したいと思います。物権的請求権は所有権に対する妨害の在り方によって、返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権に分類されるのでしたね。

  返還請求権は、所有者以外の者が目的物を占有している場合に、その物の返還を請求する権利です。他人が現に目的物を占有している場合に行使される権利で、請求先は現に本人の占有を妨げている人です。

  所有権の行使が占有剥奪以外の方法で妨害されている場合に、その妨害の排除を請求する権利が妨害排除請求権です。所有者に目的物の占有はあるのにそれが妨げられているわけですから、妨害排除請求権の相手方は当然妨害している人になります。

  また、判例では、土地所有者が地上建物の収去土地明渡請求という形で妨害排除を求める場合には、地上建物が譲渡されていても譲渡の登記が行われていなければ、名義人である譲渡人が請求の相手方になるとしています。

  妨害予防請求権は、将来、所有権の行使が妨害されるおそれがある場合に、その妨害の予防を請求できる権利です。現在は妨害が生じているわけではありませんが、将来の妨害の蓋然性(がいぜんせい:ある事柄が起こり得る確実性)から、妨害を未然に防ぐ権利です。

 

Ⅱ.所有権も絶対の権利でない

  物の絶対支配権である所有権も、相隣関係や用益物権・担保物権の設定などによって一定の範囲で制限を受けます。

  相隣関係とは、隣接する土地所有者相互の関係を調整する民法で定めた規定のことです。所有権というと、皆さんがまず思い浮かべる物に不動産があると思いますが、その不動産のうちの土地は、固定され互いが隣接し合うものです。所有権が物に対する絶対的支配権である以上、隣接する土地どうしの土地所有権を主張し合うと、その行使の際に互いの土地に何らかの影響を及ぼすことがあり、何らかの調整が必要となります。そのような場合に、隣接した土地所有者どうしで相手の土地を通行する関係や、相手の土地を利用する関係などを調整する規定が相隣関係なのです。

民法61-2

1)公道に至るための他の土地の通行権~その1~

  他の土地に囲まれて公道(誰でも通れる道路のことです)と、まったく面していない土地を袋地と言いますが、このような袋地などの所有者が、公道に出るために隣地(囲繞地:いにょうち)を通行できる権利を囲繞地通行権と言います。囲繞地通行権者は、所有の袋地などを利用するのに通路などを開設することも可能ですが、囲繞地にとって最も損害の少ない場所や方法で通行しなければなりません。

また、通行地の損害に対しては、償金を支払う義務を負います。支払いは、通路開設時の損害は一括して支払わなければなりませんが、その他の損害は1年ごとに支払います。

 

2)公道に至るための他の土地の通行権~その2~

  分割・一部譲渡によって袋地となった場合には、囲繞地通行権の例外規定が設けられています。通行権者は他の分割者または譲受人の所有地のみを通行することができます。これは、囲繞地通行権は、囲繞地所有者から見れば土地所有に付随する負担を強いられることになるので、袋地になることを承知の上で袋地が作り出された場合には迷惑を我慢する必要はないという理論です。

  この場合の償金は、分割時に処理されていると見なされ、袋地所有者は、改めて償金を支払う必要はありません。

 

3)隣地の竹木

  隣接地の竹木の枝が境界線を越えるときは、所有者に切ってもらうことができます。また、竹木の根が境界線を越えて伸びてきたときは、自分で切ることができます。

 

4)建物を建てる場合

  民法では、建物を築造するときには、境界線より50㎝以上離して建てなくてはならないとされています。しかし、建築基準法では一定の建築物を境界線に隣接して建てることを認めています。この2つの規定の矛盾は、どう考えればいいのでしょうか?

  このことについて、判例では、建築基準法は民法の特則であり、建築基準法の要件が満たされる建築物に関しては、民法の規定が排除されるとしています。これは、都市部の合理的な土地利用を重視したものと思われます。

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