第59回 物権と物権変動

  民法の総則が終わり、今回から物権編です。まずは、物権編の共通の決まりである総則を解説します。

民法59-1

 

Ⅰ.物権の性質

  民法は個人と個人の関係を権利・義務の関係と考えています。民法で扱っている権利の中で重要で代表的なものが物権と債権です。物権とは、物を直接支配する権利で、債権がその対象を債務者の行為(給付)とするのに対して、物権は物そのものを対象とする権利です。

また、物の直接支配を内容とする物権は、物の上にいったん物権としての支配が確立すると、同様の内容の他の物権は成立できません。物権のこの性質を物権の排他性と呼びます。

これからその物の権利を取得しようとする人にとっては、排他性のある物権がすでについているか否かは、とても重要です。

そこで、民法では、こうした第三者を保護するために、物についての権利の状況を第三者が知り得るような、登記や占有などの法的な公示の手段を規定しています。

民法59-2

 

1)一物一権主義

  1つの物権の客体(対象物)は1つの物という原則を一物一権主義と言い、民法の考えの原則です。
一物一権主義には次の2つの意味があります。

①1つの物には同内容の物権は成立しないという物件の排他性を示す場合

②1つの物権の目的は独立した1つの物であり、1つの物の一部や複数の物に渡って1つの物権が成立しないという独立性や単一性を示す場合

  ①は、物の支配という物権の本質からの直接の要求なのに対して、②は物の一部や複数の物の上に物権を認めると公示が難しくなり、紛争の元となることを防ぐ趣旨です。

 

2)物権法定主義

  物権のもう一つの重要な性質に、民法をはじめとする法律で規定されたもの以外の権利を、当事者が自由に創設することを認めないという物権法定主義があります。その理由は、当事者の自由な物権の創設は公示が不可能だからです。つまり、ここでも当事者間の紛争を避けようと考えています。

  物権を物の直接的支配する権利として保護する以上、その支配が何らかの理由によって侵害された場合には救済措置が必要であることは、皆さんにも理解できると思います。

  物権の支配状態が妨害されたり、妨害されると予想される場合に、元の状態の回復または予防を求める権利を物権的請求権と言います。
そしてこの物権的請求権は、

①返還請求権

②妨害排除請求権

③妨害予防請求権――の3種類に分類されます。

  ①の返還請求権とは、所有するものを盗られた場合のように物権の目的物の占有が侵奪された場合に返還を求める権利です。

そして、②の妨害排除請求権とは、所有する土地に不法占拠者が存在するときのように、物権が権限なく妨害されている場合に、その排除を求める権利です。

また、③の妨害予防請求権は、将来、物権妨害の生じる可能性がある場合に、妨害の停止を請求する権利です。

 

Ⅱ.物権変動

民法59-3

  私たちは社会生活の上で、さまざまな原因で物権を取得したり、物権を失ったりしています。こうした物権の発生、変更、消滅のことを物権変動と言います。

  先ほども述べましたが、物権は排他性を持つ強力な権利です。ある物にある人の所有権が成立すると、同時に他の人の所有権は成立しません。例えば、Xさんの土地がYさんへの贈与で、所有権がYさんに移転すると、その後、知らずにXさんからその土地を買受けたZさんは、代金を支払ったのに所有権を取得できません。そこで、こうしたトラブルを避けるためには、物権変動があった場合には、その変動を公に知らせる必要が出てきます。

  そこで、民法では、不動産の物権変動は登記動産の物権変動は引渡しという制度を設けました。

  また、日本では、物権変動については当事者の意思表示のみで完成し、登記や引渡しの公示方法は、第三者への対抗要件となっています。つまり、物権変動自体は当事者間の意思表示のみで完成するものの、この物権変動に基づく権利関係をある一定の地位にある第三者に主張するためには、登記等の対抗要件が必要だということです。

  このことを対抗要件主義と言いますが、見方を変えれば、Xさんからその所有権を譲受けようとするZさんは、たとえその者がYさんに所有権移転していても、それに伴う登記等の公示方法がとられていなければ、XさんからYさんへの所有権移転を無視して、所有権を取得できるということを意味しています。

  つまり、対抗要件主義は、公示と実質が異なっていた場合に、表示に表われていない実質は無視できるということから、第三者を保護することができると言えます。

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