第57回 条件付の法律行為と期限付の法律行為

  法律行為上の約束=契約には、条件と期限を付けることができます。サッカーで言えば、「健康診断しない選手は、試合に出られない」「試合開始までに、ウオーミングアップを終了する」の「健康診断しない」が条件で「試合開始までに」が期間です。

  今回は、法律行為上の条件や期限にはどういうものがあるか、条件と期限の差は何か――などを考え、次に、不動産の賃貸借契約などに記載されている期間の計算の仕方について、説明したいと思います。

民法57-1

 

Ⅰ.条件と期限の違い

  上記のサッカーの例で言えば、「健康診断しない」は、するかしないかは一人ひとりの選手次第、不確実な事柄です。一方「試合開始までに」は、時間が経過すれば確実に到来する事柄です。つまり、条件と期限の違いは、その事柄が起きることが確実かどうかという点です。

 

Ⅱ.条件

1)種類

  条件には、

①停止条件

②解除条件――の2種類があります。

停止条件とは、法律行為の効力の発生に関わる条件のことを言い、解除条件とは、法律行為の効力の消滅に関わる条件のことを言います。ここで、「入社試験に合格したら、プレゼントをあげる」と「入社試験に合格したら、今まで送っていた生活費を送金しない」を比べてみましょう。

同じ「合格したら」という条件ですが、前者を停止条件と言い、停止条件が成就した時に契約(約束)の効力が発生します。一方、後者を解除条件と言い、解除条件が成就した時に契約の効力が消滅します。同じ言葉が条件でも、停止条件と解除条件では結果はずいぶん違いますね!

  また、停止条件を付けて契約を行ったのに、実は、その条件がすでに成就されていた場合を既成条件と言い、無条件だったものとして扱われます。また、「○○さんを殺したら、報酬を与える」のように条件が不法だった場合は、法律行為全体が無効となります。

  そして、もし、条件が成就不可能なことが確定的な不能条件は、条件不成就が確定している既成条件と考え、同様の扱いをします。

  さらに、「私が気に入れば買う」などのように単に債務者のみの意思に係る停止条件は無効とされます。

 

2)効力

  条件付法律行為では、条件の成否が決まるまでは、条件付の権利・義務の処分は可能ですし、条件付権利の目的物が棄損されれば、損害賠償請求もできます。

  また、条件成就による不利益を避けるために、故意に条件成就が妨害された場合には、相手方の保護のため、条件が成就したとみなすことができます。

 

Ⅱ.期限

1)種類

  前述したように期限とは将来に発生することが確実な事柄と言いましたが、発生時点まで確定しているか否かで

①確定期限

②不確定期限――の2つに分類できます。

  「5月30日までに代金を支払う」という場合は、5月30日が確定期限ということになりますし、「私が死んだら遺産をあげる」という場合は、私の死亡が不確定期限ということになります。

  また、

①始期付期限

②終期付期限――に分けることもできます。

  「来月の1日に代金を支払う」約束で品物を購入した場合は、翌月の1日には、代金を支払うという義務、つまり、契約効力が発生する始期付期限と言えます。

一方、「来月の1日までに代金を用意してくるので、品物を取り置いてもらう」約束をした場合、翌月の1日に代金を用意できなければ契約自体がなかったことになる終期付期限と言えます。

同じ来月1日の支払予定の買い物でも、品物を持ち帰るか、取り置いてもらうか、で異なるのです。

  期限付法律行為の期限が未到来の場合は、条件付法律行為の条件が未到来の場合と同様に、期限の到来までは、期限付の権利・義務の処分は可能ですし、期限付権利の目的物が棄損されれば、損害賠償請求もできます。

 

2)期限の利益

  期限が到来しないことによって、その間に当事者が受ける利益を期限の利益と言います。例えば代金を支払う債務を負う場合、支払日が来るまで、支払いをしなくていいことが、期限の利益に当たります。債務者が期限前に支払いたいと考えた場合は、期限の利益を放棄して支払うことは可能です。

また、割賦払いの契約で、債務者が支払いの義務を怠ったときも期限の利益を失います。もっとも、通常、割賦払い契約では、滞納があった場合には即座に債務者は全額を支払わなければならなくなるという期限の利益喪失約款などを設けてトラブルを防いでいます。

 

Ⅲ.期間とその計算法

  私たちの生活の中では、期間が重要になる場面がたくさん出てきます。例えば、不動産の賃貸借契約で、部屋を「2年間借りる」とか、買った品物の支払いを「3カ月以内にする」とか、挙げたらきりがありません。

 

1)初日不算入の原則

  では、平成23年5月15日に建物を2年間賃借する賃貸借契約を結んだ場合、借主は何年何月何日まで、その建物を借りられるのでしょう? 契約の内容が平成25年5月15日までと決まっていれば問題ありませんが、平成23年5月15日から2年間となっていた場合は、どうなるのでしょう?

  実は、民法はこのようなときのために、初日不算入の原則を規定しています。上記の場合、平成23年5月15日は、計算に含めず、平成23年5月16日の午前0時から2年間のカウントが開始します。つまり、期間の満了は、平成25年5月15日の24時(真夜中)です。会社などで、日曜などの休日には取引をしない慣習のある当事者間では、その翌日が満了日になります。

  この初日不算入の原則は、年を単位にした場合のほか、~週間、~日を単位にしても適用されます。

 

2)初日不算入の例外

  初日不算入の原則は、民法以外でも期間の計算方法が問題となる場面では適用される一般的な原則ですが、特別法などで初日不算入の原則が排除されている場合が見受けられます。

  例えば、年齢計算を定める「年齢計算ニ関スル法律」というマニアックな法律があるのですが、年齢計算は時刻を問わず出生日を算入して計算するもの、と規定しています。このほか、刑法における刑期の計算、公職選挙法における議員の任期の計算――なども初日を算入する規定が設けられています。

  あまり、こういう契約はないと思うのですが、~時間、~分を単位とした、1日に満たない単位の場合は、その瞬間からカウント開始されます。

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